原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

迷走を続ける“子ども手当”

2010年12月18日 | 時事論評
 対象家庭に支給された“子ども手当”の約4割が「貯蓄」に回されているという調査結果が、先日メディアにて報道された。

 我家も現在高2の娘を抱えており、“高校無償化”の対象世帯となっている。
 我家の場合、中高6年間分の授業料概算総額を私立中高入学当初に授業料引き落とし口座に入金済みである。 そのため本年度より対象となっている“高校無償化”の授業料からの減額分は、結果として預金口座の残額として残る形となる。(ゆくゆくは娘の大学の授業料の“ごく一部”に充填されることとなろうが。)


 先だっての朝日新聞「声」欄に、やはり2人の子供に支給されている“子ども手当”の全額が貯蓄に回っているらしき、40代の父親による興味深い投書があった。
 以下に要約して紹介しよう。
 妻から「銀行口座に10万4千円が振り込まれた」と報告があった。それは我が子2人分の“子ども手当”であるが、(国家)財源がなく半額支給となったもののその額の大きさに驚きを隠せない。 社会全体で子育てを支援しようと提唱する民主党の理念にもろ手を挙げて賛同するが、その具体策がぼやけそれを受け入れる社会基盤もままならない現状で、どう使えば子どものためになるのか困惑するのが事実だ。 一律支給では児童手当より減額世帯が出るため、3歳未満は増額等さらなる財政出動をもくろむ民主党だが、どこまで思いを巡らせているのか不思議だ。 借金まみれの財政状況を考えると将来子どもが払う税金の足しにしようかとも考える。 “子ども手当”とは国からの「預かり金」の気がしてならない。

 ここで一旦私論であるが、元々“子ども手当”に頼らずとも健全な子育てが可能なレベルの経済力がある家庭にとっては、まさに新政権の“財源無きばら撒き政策”の一つである“子ども手当”とは、我が子のための「預かり金」の意味合い以外の何物でもないことであろう。


 話が変わって、去る12月9日に民主党の“表向き看板大臣”である蓮舫氏が東京杉並区立和田中学校にゲストとして招かれ、生徒の視点に立って「事業仕分け」を行ったらしい。 (この区立和田中学校に関してはご記憶の方も多いことと察するが、民間企業であるリクルート出身の藤原何タラとの校長が“夜スペ”と名付けて一部の優秀な生徒対象に民間塾講師を学校に招いて安価で受験指導をするという公立義務教育学校にあるまじき差別施策を施し、一時世の物議を醸した“お騒がせ学校”である。 どうも、体質的に今尚目立つ行動を好む公立中学校のようだ。)
 この時の議論のテーマが“子ども手当は必要か”であったらしく、生徒からは“必要ではない”との反対意見が多数派を占めたとのことである。 それに応えてゲストの蓮舫氏は「お金の使われ方に感心を持って。それが政治を変える力になる」と熱弁を振るったとの新聞報道である。

 この蓮舫氏の区立和田中学での発言を、そのまま民主党政権にお返ししたい思いの原左都子である。
 昨年夏の衆院選の看板公約だった“子ども手当”であるが、マニフェスト遵守を優先するあまり“財源無きカネのバラ撒き”を決行し、未だにその財源確保がままならないまま各方面との軋轢を産み議論が混沌とするばかりである。 そんな渦中に政権大臣の立場にある蓮舫氏が国民に対して「お金の使われ方に感心を持って」などと無責任に発言できる資格など何一つないであろうに、よくもまあ相手が年端もいかない中学生であることをいい事に、いけしゃーしゃーとこの期に及んで政権のマニフェストの正当化を計ったものである。

 「お金の使われ方」に感心を持つべきは政権側であろう。
 現在支給している“子ども手当”の4割が貯蓄に回される実態を重々想定内で、国民一律にバラ撒いているのであろうか? そして富裕層には子どもが育った暁に増税収入として課し、それを回収して将来の国家財源確保の手段とすることを策略しているのであろうか?

 しかも“子ども手当”の財源確保が一向にままならない民主党政権は何を焦り狂ったのか、地方自治体の増収分を当てにして国家の財源として吸収しようとしているのだ。 当然ながら地方自治体はこれに大いに反発している。
 そもそも民主党政権は「地方主権改革」を目玉政策としてマニフェストの一つに掲げたはずである。 国と地方の上下関係を築いてきた補助金を廃止して、交付金を自治体がもっと自由に使えるようにする趣旨の公約であったはずだ。 ところが自分の懐具合が乏しいとなると、地方に泣きつくこのお寒い実態はどうしたことか? “溺れる者、藁をも摑む”とはまさにこの事であろう。


 原左都子は、昨年9月に民主党が政権を取る以前から“子ども手当”等のカネのバラ巻き政策に対して反対の立場を貫き通している。 それはもしかしたら、もらった“手当”を貯蓄に回す4割の国民の例外でない故なのかもしれない。

 民主党にとって看板の選挙対策でしかなかった“子ども手当”であるが、財源確保がどうしても出来ない今、思い切った見直しをせずしてこの制度が今後堂々と立ち行くはずもないのだ。
 日本の経済力の急激な衰退下において雇用も落ち込んだままの厳しい社会情勢の中今後生き抜きつつ大人になる我が子に、将来税収入の強化や年金の減額等で今以上に過酷な負担をかけることのみは断じて避けて欲しい思いが親として切実である。

 民主党政権さん、どうか我が身息災この上ない短絡的な“票取りマニフェスト”に基づくカネのバラ撒き政策を、今後大人になる子ども達の将来のためにこそ早急に見直して欲しい思いである。
                  
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