原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

デザイナーベビーも育て方如何によっては暗雲が…

2013年10月22日 | 時事論評
 「生命の操作」医療もここまで個々の人間のエゴを認めてしまっては、ヒトが人ではなくなるだろうし、人類が絶滅するスピードが速まるばかりと末恐ろしい感覚を抱くのは原左都子のみだろうか??


 「デザイナーベビー」なる言葉をご存知だろうか。

 以下に朝日新聞10月20日一面記事より、その用語の説明箇所を要約引用しよう。
 受精卵の段階で遺伝子操作するなどして、外見や知力、体力等、親の希望を叶えた形で生まれる赤ちゃんをデザイナーベビーと呼ぶ。 体外受精が可能になった1987年に、この実現が現実味を帯びた。
 日本でも、着床前診断は既に行われている。 さらに遺伝子解析を進めれば、産まれて来る赤ちゃんを自分でデザインする事が可能となると考えられている。 ただ、生命を商品のように扱う考え方には倫理的な批判が強い。 
 例えばある親が、青い目で足が速く乳癌になるリスクが低い子どもが欲しいと望んだとする。 それに相応するDNA配列のわずかな違い(SNP)を分析し、商業的バンクに保存されている精子や卵子の提供者と、利用者の遺伝情報をかけ合わせて解析する。 それらの特徴がどの程度表出するかの確率をあらかじめはじき出した上で、利用者の希望を満たす度合いに基づき採点する。 その結果、利用者側は点数の高い提供者を知ることが可能となる。 
 デザイナーベビーとして希望できる特徴項目は、現在のところ「身長」「性格」「寿命」「酒の強さ」「運動能力」「病気発症リスク」等があるらしい。
 米国では既にこの遺伝子解析技術に関する考案が、特許として認められたとのことだ。 ただし現時点では、この特許コンセプトを実用化する意図も計画もない段階との事でもある。 現状では結果の信頼度・精度共に項目により大きなバラつきがあるが、近い将来遺伝子解析が進んで制度が高まればデザイナーベビーは現実になる、とみる科学者は少なくない。 
 今回の特許に関しては、英科学誌「ネイチャー」の関連誌は、「子どもの特徴を『買い物リスト』に入れることは、倫理面で大きな問題を孕む」との批判投稿を掲載した。
 (以上、朝日新聞10月20日一面トップ記事より一部を要約引用。)


 原左都子の私論に入ろう。
 
 「原左都子エッセイ集」医療関連バックナンバーエッセイ内で幾度となく記述してきているが、私は「遺伝子操作医療」は元より、「臓器移植」そして「再生医療」に関しても反対派を貫いている。 (参考のため、「再生医療」を行う手法としてはクローン作製、臓器培養、多能性幹細胞(iPS細胞等)の利用、自己組織誘導の研究などが存在する。)

 何故私がそれらの先進医療を受け付けられないのかと言うと、それは我が「死生観」に基づいている。
 現世に自然に生まれ持った我がDNAに基づく自らの生命体を、そのままの形で生かしそして終焉させてやりたいのだ。 もちろん、我がDNA能力範囲内で生命を長引かせる努力は今後も怠らないつもりだ。 ただ他力本願な「生命の操作」をしたり、他者の臓器を貰う等々の迷惑をかけてまで我が寿命を長引かせたいとの発想は一切ない。

 科学の一分野である医学の発展は素晴らしい半面、生命倫理観念に於いて、とてつもなく大きな過ちを犯しているとの感覚も拭い去れない。
 量子力学分野に於ける「神の数式」と医学は大幅に分野を異にする事は私も心得ているが、現在の遺伝子解析の「生命の操作」は既に「神の数式」を冒涜して、基礎医学研究者達の愚かな自己満足と世の進化に対する誤った認識に基づく期待とで、混乱を来たしている有様ではなかろうか?

 そしてもちろん、一般市民にも大いなる落ち度と責任があろう。
 例えば、国内のとある有名医学者が再生医療分野において「医学・生理学分野ノーベル賞」を受賞したなら、その研究こそが世界レベルで素晴らしいと直ぐに信用してしまうのであろうか?
 あるいは出生前診断が可能となれば、自分のお腹の中にいる子どもの明るい未来に思いが及ばず直ぐにその診断を受け、悪い結果が出たらその生命を絶とうと志すのか??


 ただ、私とて人を批判出来る立場でもない。

 私の場合高齢出産だったのだが、妊娠直後当時の我が本音を語ると、親(私と夫)双方のDNA分析に基づいた場合、「生まれ出てくるこの子はおそらく相当のDNA素質に恵まれているぞ!」と確信していた部分があるのが本音だ。
 ところが、この世とはそんなに甘くないのが常である。 我が子は出生時のトラブルにより若干の事情を持ってこの世に生まれ出てきた。
 それでも、私は頑張った。 この子の生まれ持ったDNAを最大限に開花させるべく育てようと!

 我が娘は来月“二十歳”を迎える。 (親馬鹿ながらも)この子なりに持って生まれたDNAを十分に開花させつつ素晴らしいまでの発展を遂げているのだ。


 最後に、原左都子の私論でまとめよう。

 「デザイナーベビー」と言うが、これは他者の優れたDNAと利用者側の片親のDNAを掛け合わせたベビー誕生となるとの理解でよいのだろうか? 要するに、この新技術の恩恵に被るのは「不妊治療」中の夫婦に限られるとの条件であるのか? 
 いずれにせよ、そもそも大いなる歪みを承知の上で開発され特許化された医療技術であることには間違いなさそうだ。
 不妊治療中のご夫婦がこの種の遺伝子解析結果を信じて子どもを設けたいとの意向があり、それに同意した場合将来的にその夢が叶うとの事なのだろう。

 ところが原左都子自身の我が子育児・教育指導経験によれば、子どもの成長とは生後の「家庭内環境」と「育て方」こそが一番の指標である事に間違いない。

 えっ? そうではなくて、「青い目」に「身長」? それから「酒の強さ」?? 
 確かにそれらの項目に関しては、子どもが持って生まれたDNA力に大きく支配されることであろう。
 片や、「学力」「運動能力」「将来かかる病気」 はたまた「寿命」??? (参考のため、「将来かかる病気」に関しては一部の疾患に於いてある程度DNA分析が進んでいるのが事実であり、論評を控えるべきと心得ている。)

 私に言わせてもらえば、「学力」や「運動能力」ひいては「DNA依存によらない病気」に関しては親の教育采配力で管理可能と心得る。 それに伴い「寿命」に関しても、子どもが成人に達するまでは親の責任範疇で管理可能ならば、ある程度の将来的展望が持てるものと推測する。

 最悪の場合、もしも近い将来「デザイナーベビー」を産む事を欲した親達が、他者のDNA力にのみ依存して子どもの教育等日常的バックアップにおいて手抜きをするならば、せっかく巨額投資をして設けたベイビーの将来は悲惨な結果となる事もあり得るかと警告しておきたい。