原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

自分の個性を表に出して勝ち取った娘の内定

2015年10月10日 | 仕事・就職
 またもや我が娘が、人生の岐路に於ける快挙を成し遂げた! 
 一昨日の10月8日、遅ればせながらも現在大学4年生 “就活落ちこぼれ”娘に「内定」が出た!


 私立中学受験合格、大学公募制推薦入試合格に引き続き、今度は就活内定ゲットだ。

 娘本人にとっては、今回の就活内定への道程が一番長く厳しい歩みだったかもしれない。
 と言うのも、中学受験及び大学受験に関しては娘のお抱え家庭教師である私との二人三脚での勝負だった。 私が敷いたレールを厳しいサリバン(私の事だが)の指導の下、素直に従順に努力すれば済んだとも言えよう。

 ところが就職ともなると、そうはいかない。 今度こそは親は決してしゃしゃり出ず、既に成人している娘に自力で頑張ってもらわねば将来がないと言ってよかろう。 一切のコネも使わず、就職に関するすべての活動を娘に任せ切った。


 まだ雪が降る寒さの3月上旬から季節が巡って一昨日の10月上旬まで、娘は一人で考え一人で選択し、一人で行動した。 就活先から落とされても、また振り落とされても弱音の一つも吐かず、電車に乗って足繁く求人先へ通い詰めた。

 猛暑が迫った7月頃、たった一度だけ娘の涙を見たことがある。
 某一部上場企業の一次筆記試験に合格し、二次の面接でも娘一人に40分もの時間をかけて面接して下さる就職先と巡り会えたのだ。 その日、自宅に帰りついた娘がすぐさま私に告げる。「今日は手応えがあった!」と。 「そう良かったね!」   そうして親子共々楽しみに結果を待ったのだが、届けられたのは不合格通知…。  一人自室で学習机の椅子に座り静かに泣いている娘の後ろ姿を見て“世の無情”を思い、台所へ去った私は娘の百倍泣きはらした。
 それでも娘はすぐさま心機一転し、翌日からまた日々元気に就活に出かけて行く。
  
 そして暑い夏が過ぎ去り10月が訪れ、大企業では早くも新卒者の「内定式」が執り行われた様子だ。 昼のテレビニュースでその映像を見た私の脳裏には、抑えても抑えても“敗北感”が込み上げて来て、そのマイナス感情が涙となって流れ出る…。 
 その日も娘は就活に出ていた。 一緒にテレビを見ていた亭主に「今日の内定式ニュースの話題は娘には隠しておこうね…。」と諭す私。   ところが娘の方が親の我々よりずっと人間が出来ていた。 帰宅した娘がシラっと言うには、「今日の街中は内定式帰りの学生でごった返していたよ。」 (娘よ、あんたはホントに偉いよ…)

 10月1日に内定式ニュースを見た翌日、私は亭主と話し合った。
 「もしもこのまま、あの子に内定が出ない状態が続いた場合、一度私が大学の進学課へ行って相談して来ようかと思う。 ちょうど12月上旬に卒論最終発表会があるから、その時就職課へ挨拶に行くよ。」 それに亭主も同意して…。

 夜就活から帰宅した娘に、早速その旨を伝えた。 そうしたところ娘曰く、「今日訪れた就活先で内定が出そうに思う。 だから(親の貴方が)大学の就職課へ行くのはそれを待ってからにして欲しい。」  (う~~ん。 そうだとよいが、7月に娘が同様の感覚を抱いた企業から不採用の通知が届いているし、これはまた娘の勘違いかもしれない…)との思いが強靭なのは、親として致し方無いだろう。
 そこで今回は、何故「内定」が出そうに思うのかを娘に単刀直入に質問した。
 
 そうしたところ、娘から返ってきた回答とは以下の通りだ。
 今回娘が訪れた就活先とは、比較的小さい規模の民間企業だ。 そのため新卒採用面接に当たり(おそらく50代位の会社役員と思しき)年配男性がその試験を担当してくれたとの事である。 新卒者の採用人員が少ない事も幸いして、その人物が個々の新卒就活生に快く声掛けをしてくれるのに加え、他の社員の皆さんも気軽に娘に声を掛けて下さったらしい。 
 そしていよいよ娘の面接の時に50代と思しき男性が娘に対して曰く、「貴方は口下手で人とのコミュニケーションが苦手なタイプですね。」 それに娘応えて 「はい」。 50代男性曰く「それならば貴方が我が社に入社したなら、まずは技術面の充実に努めましょう。」

 いやはや、少し個性が強い娘を持つ親の身としては、上記企業役員と思しき男性の力量に驚き感動するばかりだ。
 通常の就活面接に於いては、就活生の欠点部分になど決して触れる事無く、ただ単に自社が要求する新人を確保したいがために最初から切り落とす作戦に躍起になる事だろう。

 特に巨大企業に於いては、たかが新人採用の場に企業役員がわざわざ出てくるなど到底あり得ない。 私もテレビ報道等で散々接しているが、大企業とはまず新入社員と同年代の若手社員連中に集団面接をさせている映像を何度も見せられている。
 まあ要するに巨大企業組織に於いては、大学新卒者を何千人規模で採用しておいて、それを入社初期段階で振り落す魂胆であろうから、その採用実態で必要十分なのだろう。

 我が娘に視野を移した場合、何千人規模で新人が大量採用されるがごとく(武道館で入社式を執り行う程の)大企業の内定を取ったところで、入社後の実態とはマンモス大学にでも入ったと同様の“ゴミ扱い”だったのではなかろうか。
 それらの経験が一度も無い元々集団嫌いな親の私とて、大量新人入社式の風景などメディアで見せられたものなら、娘にはそんな環境には決して身を置かせたくないとの恐るべく感覚を抱かされると言うものだ。
 

 元より、所属大学(単科女子大学だが)よりの“就職推薦”も嫌い敬遠し続けていた我が娘が、自力で最終的に内定ゲットしたのは上記某最新技術系の小規模企業だ。

 既に入社試験段階で、良き(将来の)上司に出会えたものと母である私は理解し安心している。
 娘よ、来年4月からは、とにかく自力で内定を勝ち取ったその企業で頑張りなさい!