原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

老夫婦間で生活観が食い違った場合の対処法

2015年11月17日 | 人間関係
 先週末、義母が暮らす高齢者有料介護施設が年に2回開催する身元保証人懇談会出席のため、当該施設へ出かけた。

 この懇談会に出席している人物とは、大抵が入居者の子息達である。 
 保証人が入居者の娘さんである場合、その娘さんが一人で出席している様子だ。 片や保証人が息子さんの場合(我が家もそれに該当するが)、息子さん夫婦で出席している場合が多いようである。
 その理由について、実質的に日々義母の保証人を務めている私としては重々理解可能だ。 要するに何処の家庭も血縁関係の有無に関わらず、実際面で要介護者の世話をするのが(実娘、嫁を問わず)“女性”であるとの事なのだろう。


 そんな中、先週末出かけた懇談会にて珍しいバージョンを見かけた。
 入居者(イコール要介護者)が妻、そして身元保証人がその夫、とのカップルである。
 ところがこのご夫婦を傍目で観察する分には、どう贔屓目に見ても要介護者である奥方の方がしっかりしていて、保証人であられるご主人の方がずっと老化が進んでいるがごとく私の目には映るのだ。 
 例えば、奥方がご主人に「ちゃんと筆記用具を持参して来たの?」などと確認している。 それに対しご主人の方は、室内にてコートを脱ぐでもなく、私が挨拶してもボーッとした表情でただ突っ立っておられるのだ。 後の懇談会にての発言で表明したのは、当該ご主人が現役時代には企業役員等社会的地位のある人物であられ、それを今尚ご自身のプライドとされている様子である事だ。
 
 それにしても老齢に至っていくらプライドを保っていると言えども、傍目から客観的に観察してご主人の“老化”の程は一目瞭然であるのは否めない。
 後は私の憶測に過ぎないが、このカップルの場合、おそらく経済面では恵まれておられるのであろう。 そんな環境下に於いて、奥方の方が日々“プライド高い”ご亭主の世話をする事に辟易として、ご自身こそが高齢者施設に入居するとの手段でご亭主から“逃げる”との行動を採ったのではあるまいか?!?

 いやはや、何の役にも立たないのに下手に自尊心だけ保ち続ける身内高齢者を家庭内に抱え込む事態程厄介な事はないだろう。 もしも我が身がそうであれば許し難い事実、との私見に基づく憶測に過ぎない話だが…。


 さて、大幅に話題を変えよう。

 朝日新聞10月24日 別刷「be」“悩みのるつぼ”の相談は、74歳男性による 「妻が都会への移住を言い出した」 である。  以下に要約して紹介しよう。
 北海道在住だが、道外出身の74歳の妻が突然関西の大都市へ移住したいと言い出した。  妻曰く、「4年前から考えていた。高齢にして冬の寒さがきつい。 残りの人生をコンサートや映画・演劇を楽しめる温暖なところで過ごしたい。今年移りたい。」  詳細に調べて作った計画書を見せられ、今住んでいる家を売ればマンションを買っても余裕が出ると言う。 もっと前から言ってくれたらお互いに話し合うことも出来ただろうに、何故唐突にと、不信感がこみ上げてくる。 この街にも映画館が2館、年に1,2度オーケストラや劇団が来る市民会館やホールがあるのに、「それでは満足出来ない」と妻は言う。 結婚以来長年この地に住んで来た妻が言うところの寒さが耐えられないとの言葉は理解不能だ。 別居して互いに行き来出来ればよいが、経済的に不能だ。 妻を諦めさせる方法を教えて欲しい。
 (以上、朝日新聞“悩みのるつぼ”より要約引用したもの。)


 ここで、原左都子の私論に入ろう。

 とっとと離婚手続きを取って、妻の望む地に一人で行かせてあげればいいじゃん。 とりあえずはそれしか言えないよねえ。
 
 ところがそれを実行不能なご亭主が置かれている立場も理解出来る程に、私も年齢を重ねてしまったようだ。
 おそらく、厳寒地である北海道の片田舎に県外から奥方を迎え入れて以降、長年その奥方のお世話になり切っているとのご夫婦関係であろう。 
 で、今更妻が都会に出て新しい生活を堪能したいだと?

 その辺にご亭主として、今一度着目しては如何なのか?
 何故奥方が都会に出たいと考え始めたのかに関して、夫たるもの、もう少し観察力を持つべきだ。 本当に映画やコンサートを楽しみたいがため“だけ”の目的でそれを実行しようとしているとは、私には到底考えられない。
 奥方はネットをたしなんでおられるのだろうか? それが一つのキーポイントとなろう。 70代程の年代層とは普通にネットを楽しむ世代ではなかろうかと、私自身のネット経験より考察する。(と言うのも、「原左都子エッセイ集」は開設直後よりその年齢層男性ファンを中心に支えられ成り立っているとも考察可能なのだ。) もしかしたら、相談者の奥方はネット上で自分のハートをくすぐる関西地方に住む男性に出会った可能性が大きいのではなかろうか? それこそが奥方の都会(関西の大都市)移住希望の一番のきっかけではないのか、と私は想像したりもするのだ。
 さらに付け加えると、私自身が今後老後をエンジョイする一手段として、当該「原左都子エッセイ集」(及びそれをリンク展開しているSNSサイト)をもその拠点とするべく位置付けている。(あくまでも一手段だが。)


 最後に私論でまとめよう。

 朝日新聞相談者男性に限らず、世の男性どもとは、日頃一番お世話になっている奥方の存在を邪険にし過ぎている事実こそが、このような奥方の“信義違反”発想の発端となっていると結論付けてよいように思うのだ。

 片や、奥方女性もよく考えて欲しい。
 貴方達夫婦が結婚直後より「独立採算性」にてずっと家計を打ち立てているのならば、奥方が今に至ってその行為に出ても致し方ないであろう。 が、もしも亭主の給料でずっと養われている身分であるなら、奥方の立場として少しは恥を知ろうよ。
 奥方は都会のマンションを購入すると言うが、その維持管理のために月々発生する管理費・修繕積立金、加えて駐車場代金が如何程かかるか分かっているのか?  そもそも田舎過疎地の土地付き不動産物件がいくらで売却可能と考えているのだろう? 私の場合も地方過疎地に実母が住む実家があるためよく理解出来ているが、母亡き後は家屋の解体費用がかかるのみだ。 残った土地を売却したところで、その資産価値の低さなど目が当てられない程悲惨、という事実を既に把握出来ている。
 
 老いて尚、自分自身が培ってきた経済力により老後の楽しみを独力で紡げるならば、夫を一人厳寒地に残して奥方が一人身勝手に旅立っても許されるであろう。 冒頭に挙げた事例のごとく、奥方一人で有料介護施設へ“逃げる”との手立ても採れよう。(参考のため、義母の事例を参照して有料介護施設入居の場合の概算総額を披露するならば、交友享楽費等も含め年間数百万円程の費用が発生している。 それをこの奥方は自分で支払える経済力があって新生活を望んでいるのだろうか?)

 そうではないとすれば、よくぞまあ身の程知らずにそんな大胆な発想を夫に対してホザけたものと呆れるばかりだ…。
 夢とは幾つになっても自らの総合力で叶えらる基盤があってこそ、真に叶うものだよ。
 
 ましてや、老齢に至って長年連れ添ったご亭主と生活感や目指す方向が食い違った暁に、奥方が自分の希望をどうしても叶えたい場面に於いては、ご亭主との「格闘」を覚悟しない事には叶わない事実、と私は認識しているよ。