昨日(4月7日)のNHK7時のニュース題材の一つは、「終末期の延命処置、臨床救急医学会が提言」だった。
冒頭から私事に入ろう。
我が家は数年前より、義母と実母両人の高齢者施設保証人を担当している。
そして両人共に、現時点では「延命措置を希望しない」旨を保証人である我々に告げてくれている。
本エッセイ集2月のバックナンバーにても記載したが、義母に関しては施設のケアマネジャー氏と我々保証人とで、“終末期の看取り”に関して最初の話合いの機会が持たれた。
義母の場合、既に認知症状が悪化の一途を辿っているとの理由もあり、早いうちに保証人の意向を聞きたいとのケアマネ氏のご提案だった。
昨日のNHKニュースを視聴していて疑問に感じたのが、その点だ。
ニュースは特に高齢者終末期の救急搬送に際し、高齢者本人の延命措置希望の意思確認をした上で、高齢者自身の意思に沿って延命措置実施・不実施を決定するとの内容だった。
例えば、重い心臓病で救急車を呼んだような事態に際しその患者が高齢者であった場合、本人が延命措置を希望しないのならば心臓マッサージ等の措置をしない、との事のようだ。
一言で“高齢者”と言えども、その年齢にかかわりなく健康面で抱える問題は人それぞれ多様性があろう。
そんな中、我が義母のように認知症状が日毎悪化している高齢者の場合、救急搬送事態に直面した時に自身が「延命措置をするか否か」の咄嗟の判断が可能とは到底思えない。
その場合は家族が判断する事になるのだろうか?
昨日のNHKニュースに於いては、その辺の高齢者が個別に抱える事情に関するレポートが何一つなかったように記憶しているのだが。
そこで今一度ネット情報より “本人が望まなければ救命措置せず” と題する、昨日のNHKニュース「終末期の延命措置」に関連する記述を以下に紹介しよう。
病気などで終末期にある人が、積極的な治療を望まないのに救命措置などを受けるケースが少なくないとして、日本臨床救急医学会は心肺停止の状態の患者について救急隊員がかかりつけ医などを通じて意思を確認できた場合は、救命措置を取りやめることができるなどとする提言をまとめた。
終末期の人の中には回復が見込めず、積極的な治療を望まない人もいるが、容体が急変した際に医療機関に搬送され、救命や延命の措置が取られるケースも少なくない。 このため日本臨床救急医学会は、末期癌や高齢などで終末期にある人が心肺停止の状態になった場合の救急搬送に関する提言をまとめ、7日に公表した。
提言では、救急隊員が駆けつけた際には心肺蘇生などの救命措置を取ることを原則としたうえで、かかりつけ医などに連絡して救命措置を望まないという患者の意思を確認できた場合は、搬送や救命の措置を取りやめることができるなどとしている。 さらに、その場合に備えて救命措置などを望まないという意思を救急隊員が確認できるよう、事前にかかりつけ医のほか、本人または家族の署名入りの書面を作成しておくよう求めている。
日本臨床救急医学会の坂本哲也代表理事は「提言は強制的なものではなく、今後の議論のきっかけにしてもらうためにまとめた。人生の最終段階をどう迎えるか一人一人が向き合う時期に来ている」と話している。
厚生労働省は、積極的な治療を望まない終末期の患者を救急搬送する際のルールを作るため、今年度、新たな事業を始めます。
この事業は全国10から15の自治体が対象で、在宅医療に携わる医師や、自治体、医師会、それに救急隊員などの協議の場を設け、終末期の患者を救急搬送する際に患者本人の意向をどのように確認するかや、情報共有のしかたについてルールを作ることにしている。 厚生労働省はこのほか、人生の終末期に積極的な治療を受けるかどうか考える際の参考にしてもらおうと、人工呼吸器や、栄養をチューブで送る「胃ろう」などの措置について生活にどのような影響があるかを解説する資料を作成し、自治体を通じて配布することにしている。
終末期の救急搬送や治療をめぐっては、心肺停止になった場合にかぎらず、高齢者の意思を確認する取り組みを始めているところもある。 東京・八王子市の消防や自治体、病院などの関係団体が6年前に設立した「八王子市高齢者救急医療体制広域連絡会」では、病歴や服用している薬、かかりつけ医などの情報をあらかじめ共有できるよう、「救急医療情報」と呼ばれるチェックシートを独自に作成した。 チェックシートには救急搬送された場合、医療機関に伝えたい希望として、「できるだけ救命や延命をしてほしい」、「苦痛を和らげる処置なら希望する」、「なるべく自然な状態で見守ってほしい」などの項目にチェックを入れて意思を伝えることができるようになっている。
これらの動向に対し、日本集中治療医学会は心肺蘇生措置の取りやめについて去年、全国の救急医などを対象に、医療現場でどのように判断が行われるのかアンケート調査を行った。
アンケートでは、重い心臓病の患者のケースで、本人の希望によって心肺蘇生措置を行わないと主治医から指示が出ている場合、仮に病気の進行によってではなく検査の合併症で出血が起き、心停止したら、蘇生措置を行うかどうか質問した。 通常は措置によって回復するため心肺蘇生を行うべきケースで、8割の医師は実際に行うと答えたが、2割近い医師は行わないと答えた。 理由としては挙げたのは、患者が高齢であることや、運動機能が低下していることなど。 また医師の中には、心停止した場合に、電気ショックなどの心肺蘇生措置を行わないでほしいという意思表示をしているのに、心停止を起こしていない段階で心肺蘇生措置以外の酸素投与や栄養の点滴などを差し控えると答えた医師もいました。
アンケート調査を行った学会の委員会委員長は、「心肺蘇生を希望しないという意思表示は、医療現場で誤用されたり不適切に拡大解釈されるおそれのあることが調査からわかった」と話している。 そのうえで、「助かる命を助けないという事態につながらないよう慎重に対応すべきで、国民全体がこうした意思表示について関心を持ち、考えることが大切だ」と話している。
(以上、ネット情報より引用したもの。)
最後に、原左都子の私論でまとめよう。
上記ネット情報によれば、現在の医療界にても高齢者の終末期延命措置に関してある程度真摯に向き合っている姿勢を感じ取ることが可能だ。
一方で、実際に親族に(認知症者を含めた)高齢者を複数抱える我が家の現状と、医療界が目指している「高齢者延命措置」感にギャップ感が否めない感覚も抱かされる。
医療過誤による責任問題にびくびくする医療界の現状も理解可能だが、そんな事よりも優先して、実際に高齢者を抱える市民の現状もご理解頂けないだろうか、と私など言いたくもなる。
上記日本集中治療医学界による、「仮に病気の進行によってではなく検査の合併症で出血が起き、心停止したらどうするか」なる文言は、要するに医療過誤が起こった場合の事例を挙げている訳だが…
元々、医療界は患者が高齢者であるか否かを問わず、「医療過誤」に関しては責任を負うのが鉄則だろう。 それは患者が高齢者であろうが誰であろうが変わりはないはずだ。
結論としては、医療界は今後の課題として患者及びその家族ともっとコミュニケーションを持つ事に精進しては如何か、ということではかなろうか。
高齢者やその家族が延命措置を望んだ場合、患者が高齢者であるが故に「医療過誤」が発生し易い実態を誠実に伝え、その判断を患者及び家族に一任すれば医療現場の責任の程が軽減されるのではあるまいか?
それにしても何らの医学知識の無い義母など、今尚 “お医者さま” 好きである事には変わりない。
「私は延命措置などしないのよ!」と亭主と私に豪語しつつ、医学経験がある私が何をアドバイスしようが「私はお医者さまに看てもらうの!」の繰り返しで、私は義母の病院付添を(無駄に?!)実行させられ続ける日々だ。
これ程に現在の「医療」を信じて疑わない可愛らしい義母を、どうか“お医者さま”達、守ってやって下さいませ。
冒頭から私事に入ろう。
我が家は数年前より、義母と実母両人の高齢者施設保証人を担当している。
そして両人共に、現時点では「延命措置を希望しない」旨を保証人である我々に告げてくれている。
本エッセイ集2月のバックナンバーにても記載したが、義母に関しては施設のケアマネジャー氏と我々保証人とで、“終末期の看取り”に関して最初の話合いの機会が持たれた。
義母の場合、既に認知症状が悪化の一途を辿っているとの理由もあり、早いうちに保証人の意向を聞きたいとのケアマネ氏のご提案だった。
昨日のNHKニュースを視聴していて疑問に感じたのが、その点だ。
ニュースは特に高齢者終末期の救急搬送に際し、高齢者本人の延命措置希望の意思確認をした上で、高齢者自身の意思に沿って延命措置実施・不実施を決定するとの内容だった。
例えば、重い心臓病で救急車を呼んだような事態に際しその患者が高齢者であった場合、本人が延命措置を希望しないのならば心臓マッサージ等の措置をしない、との事のようだ。
一言で“高齢者”と言えども、その年齢にかかわりなく健康面で抱える問題は人それぞれ多様性があろう。
そんな中、我が義母のように認知症状が日毎悪化している高齢者の場合、救急搬送事態に直面した時に自身が「延命措置をするか否か」の咄嗟の判断が可能とは到底思えない。
その場合は家族が判断する事になるのだろうか?
昨日のNHKニュースに於いては、その辺の高齢者が個別に抱える事情に関するレポートが何一つなかったように記憶しているのだが。
そこで今一度ネット情報より “本人が望まなければ救命措置せず” と題する、昨日のNHKニュース「終末期の延命措置」に関連する記述を以下に紹介しよう。
病気などで終末期にある人が、積極的な治療を望まないのに救命措置などを受けるケースが少なくないとして、日本臨床救急医学会は心肺停止の状態の患者について救急隊員がかかりつけ医などを通じて意思を確認できた場合は、救命措置を取りやめることができるなどとする提言をまとめた。
終末期の人の中には回復が見込めず、積極的な治療を望まない人もいるが、容体が急変した際に医療機関に搬送され、救命や延命の措置が取られるケースも少なくない。 このため日本臨床救急医学会は、末期癌や高齢などで終末期にある人が心肺停止の状態になった場合の救急搬送に関する提言をまとめ、7日に公表した。
提言では、救急隊員が駆けつけた際には心肺蘇生などの救命措置を取ることを原則としたうえで、かかりつけ医などに連絡して救命措置を望まないという患者の意思を確認できた場合は、搬送や救命の措置を取りやめることができるなどとしている。 さらに、その場合に備えて救命措置などを望まないという意思を救急隊員が確認できるよう、事前にかかりつけ医のほか、本人または家族の署名入りの書面を作成しておくよう求めている。
日本臨床救急医学会の坂本哲也代表理事は「提言は強制的なものではなく、今後の議論のきっかけにしてもらうためにまとめた。人生の最終段階をどう迎えるか一人一人が向き合う時期に来ている」と話している。
厚生労働省は、積極的な治療を望まない終末期の患者を救急搬送する際のルールを作るため、今年度、新たな事業を始めます。
この事業は全国10から15の自治体が対象で、在宅医療に携わる医師や、自治体、医師会、それに救急隊員などの協議の場を設け、終末期の患者を救急搬送する際に患者本人の意向をどのように確認するかや、情報共有のしかたについてルールを作ることにしている。 厚生労働省はこのほか、人生の終末期に積極的な治療を受けるかどうか考える際の参考にしてもらおうと、人工呼吸器や、栄養をチューブで送る「胃ろう」などの措置について生活にどのような影響があるかを解説する資料を作成し、自治体を通じて配布することにしている。
終末期の救急搬送や治療をめぐっては、心肺停止になった場合にかぎらず、高齢者の意思を確認する取り組みを始めているところもある。 東京・八王子市の消防や自治体、病院などの関係団体が6年前に設立した「八王子市高齢者救急医療体制広域連絡会」では、病歴や服用している薬、かかりつけ医などの情報をあらかじめ共有できるよう、「救急医療情報」と呼ばれるチェックシートを独自に作成した。 チェックシートには救急搬送された場合、医療機関に伝えたい希望として、「できるだけ救命や延命をしてほしい」、「苦痛を和らげる処置なら希望する」、「なるべく自然な状態で見守ってほしい」などの項目にチェックを入れて意思を伝えることができるようになっている。
これらの動向に対し、日本集中治療医学会は心肺蘇生措置の取りやめについて去年、全国の救急医などを対象に、医療現場でどのように判断が行われるのかアンケート調査を行った。
アンケートでは、重い心臓病の患者のケースで、本人の希望によって心肺蘇生措置を行わないと主治医から指示が出ている場合、仮に病気の進行によってではなく検査の合併症で出血が起き、心停止したら、蘇生措置を行うかどうか質問した。 通常は措置によって回復するため心肺蘇生を行うべきケースで、8割の医師は実際に行うと答えたが、2割近い医師は行わないと答えた。 理由としては挙げたのは、患者が高齢であることや、運動機能が低下していることなど。 また医師の中には、心停止した場合に、電気ショックなどの心肺蘇生措置を行わないでほしいという意思表示をしているのに、心停止を起こしていない段階で心肺蘇生措置以外の酸素投与や栄養の点滴などを差し控えると答えた医師もいました。
アンケート調査を行った学会の委員会委員長は、「心肺蘇生を希望しないという意思表示は、医療現場で誤用されたり不適切に拡大解釈されるおそれのあることが調査からわかった」と話している。 そのうえで、「助かる命を助けないという事態につながらないよう慎重に対応すべきで、国民全体がこうした意思表示について関心を持ち、考えることが大切だ」と話している。
(以上、ネット情報より引用したもの。)
最後に、原左都子の私論でまとめよう。
上記ネット情報によれば、現在の医療界にても高齢者の終末期延命措置に関してある程度真摯に向き合っている姿勢を感じ取ることが可能だ。
一方で、実際に親族に(認知症者を含めた)高齢者を複数抱える我が家の現状と、医療界が目指している「高齢者延命措置」感にギャップ感が否めない感覚も抱かされる。
医療過誤による責任問題にびくびくする医療界の現状も理解可能だが、そんな事よりも優先して、実際に高齢者を抱える市民の現状もご理解頂けないだろうか、と私など言いたくもなる。
上記日本集中治療医学界による、「仮に病気の進行によってではなく検査の合併症で出血が起き、心停止したらどうするか」なる文言は、要するに医療過誤が起こった場合の事例を挙げている訳だが…
元々、医療界は患者が高齢者であるか否かを問わず、「医療過誤」に関しては責任を負うのが鉄則だろう。 それは患者が高齢者であろうが誰であろうが変わりはないはずだ。
結論としては、医療界は今後の課題として患者及びその家族ともっとコミュニケーションを持つ事に精進しては如何か、ということではかなろうか。
高齢者やその家族が延命措置を望んだ場合、患者が高齢者であるが故に「医療過誤」が発生し易い実態を誠実に伝え、その判断を患者及び家族に一任すれば医療現場の責任の程が軽減されるのではあるまいか?
それにしても何らの医学知識の無い義母など、今尚 “お医者さま” 好きである事には変わりない。
「私は延命措置などしないのよ!」と亭主と私に豪語しつつ、医学経験がある私が何をアドバイスしようが「私はお医者さまに看てもらうの!」の繰り返しで、私は義母の病院付添を(無駄に?!)実行させられ続ける日々だ。
これ程に現在の「医療」を信じて疑わない可愛らしい義母を、どうか“お医者さま”達、守ってやって下さいませ。