原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

学校保護者会人事のあり方を問う

2017年04月15日 | 教育・学校
 “真実は小説よりも奇なり” とは、まさにこの事だ。

 千葉県松戸市立六実(むつみ)第二小学校3年生だったレェ・ティ・ニャット・リンさん(9)=ベトナム国籍=の遺体発見から19日が経過した昨日(4月14日)、容疑者の男が逮捕された。
 その容疑者が、なんと同校の現役保護者会会長だったというのだ。


 早速、今朝発見したこの容疑者に関するネット情報の一部を以下に引用しよう。

 リンさん(9)の遺体発見から19日。 14日に逮捕された容疑者(46)は事件発覚後、同小の保護者会「二小会」の会長として、リンさん家族がベトナムへ帰国する費用の寄付を依頼する文書を保護者らに配布していた。 「まさか会長とは……」「何を信じたらいいのか」。保護者や児童らは強い衝撃を受けた。 周辺住民らによると、容疑者は東武野田線六実駅近くにある所有マンションの4階に住み、2人の子供を毎朝同小に送っていた。 しかし、リンさんが行方不明になった3月24日朝、ほぼ毎日参加していた見守り活動には姿を見せなかった。
 「子供思いの人だったのに」。 渋谷容疑者の逮捕の一報を聞いた近隣住民は、驚きを隠さない。 自身も同小出身で、昨年度からは二小会の会長を務め、11日の入学式では保護者代表として「学校では勉強やスポーツを楽しんでください」と新入生に呼びかけたという。
 登校時間帯には、交通量の多い学校近くの丁字路の交差点で、見守りボランティアとして旗を持って児童を誘導していた。リンさんもこの交差点を通っており、複数の保護者や住民は「(容疑者は)見守り活動でリンさんのことを知っているはず」と証言する。
 小2の子供を持つ30代の母親は「会長は他にやる人がいなくて、昼間に時間がある容疑者がやることになったと聞いた」と話す。 20日には二小会の総会が予定されており、渋谷容疑者は今年度も会長に承認されるはずだった。
 保護者の男性会社経営者(33)によると、始業式があった5日、渋谷容疑者が呼びかけた募金の案内文が、児童を通じて保護者に配布された。 「ご遺族の帰国費用がかなりの金額に上るとのことで、少しでも助けになればと皆様にご協力をお願いしております」。リンさん家族がベトナムに帰国する費用の援助を保護者に依頼する内容だった。
 一方、事件後には周囲に「疑われている」とも漏らしていた。地域の防犯活動をしている男性は今月上旬、渋谷容疑者とすれちがった時に突然、「俺が疑われている」と話しかけられたという。「笑いながらだったので、冗談だと思って気にもとめなかった。今考えれば後ろめたい気持ちがあったのかもしれない」と語った。
 (以上、ネット情報より一部を引用したもの。)


 ここで、学校の保護者会(一般にはPTAと呼称されることが多いが)に関して、原左都子が認識している範囲で記述してみよう。
 子どもを持つ多くの国民が、このPTAと何らかのかかわりを持っている(持った)事であろう。 その割には、その法的位置付けを理解していない保護者が大多数と捉えるため、今一度復習しよう。
 学校とPTAとは法律上の組織が異なる。(学校要覧等で学校の組織図をご覧いただきたい。) 学校によってはPTAを学校の下位組織と位置づけ学校長を最高責任者としている例もあるが、多くの場合はPTAは学校とは別組織となっている。(「原左都子エッセイ集」バックナンバーより引用したもの。) 
 そのため、大抵は(上記ネット情報内にも記載されているがごとく)PTA会員同士で会長を“擦り合いう”事になり、「会長は他にやる人がいなくて、昼間に時間がある容疑者がやることになったと聞いた」との事態も発生するのだろう。

 私事だが、我が娘が最初に通った公立小学校では、PTA組織は「先生と父母の会」と称して例外的にその組織が学校と一体化していた。 組織の最高責任者はあくまでも学校長であり、父母会会長は学校長が最終的に任命する形となっていたように記憶している。
 そのため、もしも今回の松戸市のような事件が発生した場合は、父母会会長が犯した事件に関して学校長こそが最終責任を取る事となったのだろう。

 我が記憶によれば、娘が当該小学校在校中の「先生と父母の会」会長氏は、人格の優れた人物であられた。 と言うのも、私は当該会長氏宛に父母会の運営に関する“意見書”を提出した事があるのだが、実に誠意ある回答書を会長より返送いただいたのだ。 その結果として、我が意見が「先生と父母の会」で採用され、その運営が旧態依然とした状態から進化して、今の時代の現実に即した方式に改善された。

 とは言えどもそれは例外中の例外であり、大抵の保護者会ではリンさんが在籍していた小学校のごとく、PTA役員を擦り合い、その延長線上で“得体の知れない”会長が任命されている事例が大多数であろう。
 あるいは、地元の地権者達が売名・営利目的でPTA会長に立候補する場合もある事実も経験している。 地方自治体議会選挙で、立候補者の経歴欄に「地元小学校PTA会長」と堂々と記載している候補者がいたが、申し訳ないが「それが経歴になると思ってるの??」と私など冷めた視線で見たものだ。


 今回のエッセイ表題は、「学校保護者会人事のあり方を問う」と掲げたが、もっと根本的な議論に戻すと、私は「そもそも学校に保護者会は要らない」と考えている人種だ。
 現状の義務教育課程保護者会とは、その実、“学校の下働きボランティア団体”としてしか機能していないのが現実だろう。 この私も娘が小学校在学中には、「登校時の旗振り」「下校時の見守りパトロール」「運動会の準備作業」等々、駆り出されればそのボランティア活動にいそいそと励んだものだ。

 ただ、本来の保護者会の使命とは、学校とあくまでも対等な立場で教育のあり方に関して議論する場であるべきと考える私だ。 ところが保護者会に出席しても、まさかそんな議論に持ち込めない雰囲気であるのは娘が小学校1年生の頃より十分に理解出来ている。  やむなく、その議論は個別に「意見書提出」との手段を取って来た。


 最後に、こと今回の松戸市の小学生だったリンさん殺害事件容疑者に話を戻そう。

 保護者会会長(本年度も再任されるはずだったらしい)が、その殺害を実行した張本人!?!!
 特に未だ幼き児童が通学している小学校現場に於いて、絶対に発生してはならない事件だ。

 学校の保護者会など、今の時代背景に於いて保護者にとっては“鬱陶しく出来るならば避けて通りたい!存在でしかないのは大方の保護者の正直な思いだろう。

 ただ一旦、幼き子供達に目を移したならば…
 幼き視点からは、保護者会会長は入学式でも「皆さん、元気で勉強したり遊んだりしましょう」と言っていたし、登校時には見守ってくれるし、いつも優しいし、この人は信頼できる!、との結論に達するには時間がかからないだろう。

 だからこそ、たとえ保護者会(PTA)が法的には学校と別組織であれ、学校長とはその任命に当たり他人事では済まされない事実を今一度認識して欲しいものだ。 
 今までのように、学校側が保護者会(PTA)をあくまでも単なる “学校の僕のボランティア団体” と捉え続ける限り、この種の事件が再発しないとは限らないと私は警告する。