日本航空(JAL)が昨日(9月19日)、上場廃止より約2年8ヶ月という超ハイスピードで東京証券取引所第一部に株式を再上場した。
取引直後の初値は3810円也。 時価総額約7千億円は、全日空の時価総額約6400億円を上回る額だ。
JALが2010年1月に経営破綻し、会社更生法適法を申請して上場廃止に至った事実は皆さんの記憶にも新しいことであろう。
直後京セラ創業者 稲盛和夫氏を会長に迎え、企業再生支援機構の更生計画に基づき不採算路線の削減及び大型航空機の売却が実行され、グループ全体で1万6000人のリストラが断行された。
その結果、11年3月期の営業利益(連結)は1884億円、12年3月期には1866億円の純利益を稼ぎ過去最高益の記録を塗り替える等々、業績が急回復するに至った。
ここで原左都子の私事に入るが、私は郷里への帰省や国内外旅行等の目的である程度の頻度航空便を利用している人種である。
近年は国内外に於ける相次ぐ大手航空会社の経営破綻現象と平行して、格安航空会社による激安運賃化が急速に進んでいる。 それに伴い経営方針を変更して大幅な人件費削減に踏み切り、機内サービス等顧客対応を合理化する航空会社が激増している現状である。
(この現象に関しては、「原左都子エッセイ集」2012年6月9日バックナンバー 「『保安要員』が喧嘩腰で機内の秩序はどうなる?!」 に於いて既に記載済みであるため、そちらも重ねてご参照いただきたい。)
JALについて述べると、顧客対応や機内サービス分野に限定して言えば、数十年前より世界中の数ある航空会社の中でも高評価を得ている企業ではあるまいか? 特に国際線に於けるJALの機内サービスは、国内外顧客より確固たる定評を得ていたと私は理解している。 実際各国様々な国際線に搭乗した我が経験から言うと、確かにJALの機内サービスは突出して心地よいと感じて来た。
JAL経営破綻前後の近年に至った今、当然ながらJAL内部でも人件費大幅削減のために客室乗務員パート化は急激に進んでいるのであろうが、それにしても他社と比較して対応が良いと私は捉えている。 そのため空路旅行に際しては出来る限りJALを指定することにしている。 先だって8月の郷里帰省時にも(申し訳ないがサービスが若干劣ると判断するANAは避け)JALを指定して郷里へ旅立ったばかりだ。
ただし乗客側からはそのように感じても、企業内部に於いて経営合理化の犠牲となりリストラに遭ったり、人員削減現場で負荷労働を課せられている職員皆さんの現状とは尋常ではなく厳しいものがあろう。
ネット等各種情報源によると、上記のごとく今回のJALのV字回復の後に迎えた華々しい再上場の陰で、現場のキャビンアテンダント(CA)やパイロットからは、悲鳴にも似た訴えが聞こえて来ているとのことだ。
ある現役30代CAによれば、更生計画の大量リストラによって「勤務状況が劇的に変わった」とのことだ。 「フライト時間は、破綻する前はだいたい70時間前後で、更生計画では5時間増えるとされていた。ところが実際には80時間どころか、先月は92時間も飛ぶことになった。 ベテランからリストラされたことで仕事の効率が悪くなり、成田-ボストン間など10時間を超える長時間フライトでも休みを取る時間もなく、食事すら取れずに立ちっぱなしということもザラ…」
あるCAはフライトの前日に38℃の熱が出たが、「出勤するように」と言われた。
それでも高い給料をもらえているのであれば、ある程度は我慢せざるを得ないが……。
「とんでもない。更生計画による人件費削減で、私たちの給料は年収ベースで3、4割は減っている。 現に休みも取れず給料も減り、このままでは将来への展望を抱けないと、希望退職枠に入らない若いCAが昨年度だけで574名も退職した」
一度は破綻した企業を再生するには、大ナタを振るうのは仕方がない……と製造業や建設業などでは言えるかもしれないが、こと公共交通機関においては、現場の士気は安全に関わるため、利益を優先したリストラが必ずしもいいとはいえない。
実際、既に人員削減によって安全への不安につながる事例が少なからず報告されている。
人員削減はCAだけでなくパイロットも対象だ。 今年1月には、フライト前に転倒した機長が肋骨を折り血まみれのまま旭川-羽田間を飛び、このことは国会でも取り上げられた。 他にも機長が燃料費を節約することを考えるあまり、CAに向かって「今日は台風を迂回せず突っ切って飛行するので、揺れるから気をつけるように」という、信じ難い指示を出したこともあったそうだ。
再建の立役者である稲盛会長は「利益なくして安全なし」と掲げるが、その実態はどうか。 事故を起こしてからでは遅い。
(以上、JAL経営合理化に伴う大幅削減措置下で職員が置かれている現状をネット情報より引用)
最後に原左都子の私論に入ろう。
現在世界規模で存在する格安航空会社とは、低価格かつサービスの簡素化により航空輸送サービスを提供することを、世界人民の要請から余儀なくされるに至っている。 そのため運航コストの低減等々により経費節減を行うのはもちろんのこと、人件費削減は一番はずせない課題となろう。
片や昨日東証一部に再上場したJALとは、そもそも“親方日の丸”典型企業であり、その長き過去に於ける「放漫経営」ぶりには国民皆が今尚辟易としていることであろう。
原左都子としては、JALは何故経営破綻する以前に地道な経営努力を遂行できなかったのか!? と無念な感覚すら抱かされる思いだ…
国政の混乱及び経済危機に陥った現在、JAL経営幹部が我が社はV字回復したと“糠喜び”したところで、リストラにより失った有能な社員の心の行き所があるはずもない。 しかも、現在機内顧客に心よりのサービスを届けて下さっている臨時採用CA氏やパイロット氏に更なる試練を負荷せねばJALの運行がままならないとなると、過去における御巣鷹山墜落の惨劇さえもがJAL贔屓顧客の脳裏にカムバックして来るというものだ。
一顧客の立場でJAL過去の“放漫経営”の過ちを回想しても埒が明かないが、昨日の再上場の意味合いを今一度JAL幹部は肝に銘じて再出発して欲しいものである。
取引直後の初値は3810円也。 時価総額約7千億円は、全日空の時価総額約6400億円を上回る額だ。
JALが2010年1月に経営破綻し、会社更生法適法を申請して上場廃止に至った事実は皆さんの記憶にも新しいことであろう。
直後京セラ創業者 稲盛和夫氏を会長に迎え、企業再生支援機構の更生計画に基づき不採算路線の削減及び大型航空機の売却が実行され、グループ全体で1万6000人のリストラが断行された。
その結果、11年3月期の営業利益(連結)は1884億円、12年3月期には1866億円の純利益を稼ぎ過去最高益の記録を塗り替える等々、業績が急回復するに至った。
ここで原左都子の私事に入るが、私は郷里への帰省や国内外旅行等の目的である程度の頻度航空便を利用している人種である。
近年は国内外に於ける相次ぐ大手航空会社の経営破綻現象と平行して、格安航空会社による激安運賃化が急速に進んでいる。 それに伴い経営方針を変更して大幅な人件費削減に踏み切り、機内サービス等顧客対応を合理化する航空会社が激増している現状である。
(この現象に関しては、「原左都子エッセイ集」2012年6月9日バックナンバー 「『保安要員』が喧嘩腰で機内の秩序はどうなる?!」 に於いて既に記載済みであるため、そちらも重ねてご参照いただきたい。)
JALについて述べると、顧客対応や機内サービス分野に限定して言えば、数十年前より世界中の数ある航空会社の中でも高評価を得ている企業ではあるまいか? 特に国際線に於けるJALの機内サービスは、国内外顧客より確固たる定評を得ていたと私は理解している。 実際各国様々な国際線に搭乗した我が経験から言うと、確かにJALの機内サービスは突出して心地よいと感じて来た。
JAL経営破綻前後の近年に至った今、当然ながらJAL内部でも人件費大幅削減のために客室乗務員パート化は急激に進んでいるのであろうが、それにしても他社と比較して対応が良いと私は捉えている。 そのため空路旅行に際しては出来る限りJALを指定することにしている。 先だって8月の郷里帰省時にも(申し訳ないがサービスが若干劣ると判断するANAは避け)JALを指定して郷里へ旅立ったばかりだ。
ただし乗客側からはそのように感じても、企業内部に於いて経営合理化の犠牲となりリストラに遭ったり、人員削減現場で負荷労働を課せられている職員皆さんの現状とは尋常ではなく厳しいものがあろう。
ネット等各種情報源によると、上記のごとく今回のJALのV字回復の後に迎えた華々しい再上場の陰で、現場のキャビンアテンダント(CA)やパイロットからは、悲鳴にも似た訴えが聞こえて来ているとのことだ。
ある現役30代CAによれば、更生計画の大量リストラによって「勤務状況が劇的に変わった」とのことだ。 「フライト時間は、破綻する前はだいたい70時間前後で、更生計画では5時間増えるとされていた。ところが実際には80時間どころか、先月は92時間も飛ぶことになった。 ベテランからリストラされたことで仕事の効率が悪くなり、成田-ボストン間など10時間を超える長時間フライトでも休みを取る時間もなく、食事すら取れずに立ちっぱなしということもザラ…」
あるCAはフライトの前日に38℃の熱が出たが、「出勤するように」と言われた。
それでも高い給料をもらえているのであれば、ある程度は我慢せざるを得ないが……。
「とんでもない。更生計画による人件費削減で、私たちの給料は年収ベースで3、4割は減っている。 現に休みも取れず給料も減り、このままでは将来への展望を抱けないと、希望退職枠に入らない若いCAが昨年度だけで574名も退職した」
一度は破綻した企業を再生するには、大ナタを振るうのは仕方がない……と製造業や建設業などでは言えるかもしれないが、こと公共交通機関においては、現場の士気は安全に関わるため、利益を優先したリストラが必ずしもいいとはいえない。
実際、既に人員削減によって安全への不安につながる事例が少なからず報告されている。
人員削減はCAだけでなくパイロットも対象だ。 今年1月には、フライト前に転倒した機長が肋骨を折り血まみれのまま旭川-羽田間を飛び、このことは国会でも取り上げられた。 他にも機長が燃料費を節約することを考えるあまり、CAに向かって「今日は台風を迂回せず突っ切って飛行するので、揺れるから気をつけるように」という、信じ難い指示を出したこともあったそうだ。
再建の立役者である稲盛会長は「利益なくして安全なし」と掲げるが、その実態はどうか。 事故を起こしてからでは遅い。
(以上、JAL経営合理化に伴う大幅削減措置下で職員が置かれている現状をネット情報より引用)
最後に原左都子の私論に入ろう。
現在世界規模で存在する格安航空会社とは、低価格かつサービスの簡素化により航空輸送サービスを提供することを、世界人民の要請から余儀なくされるに至っている。 そのため運航コストの低減等々により経費節減を行うのはもちろんのこと、人件費削減は一番はずせない課題となろう。
片や昨日東証一部に再上場したJALとは、そもそも“親方日の丸”典型企業であり、その長き過去に於ける「放漫経営」ぶりには国民皆が今尚辟易としていることであろう。
原左都子としては、JALは何故経営破綻する以前に地道な経営努力を遂行できなかったのか!? と無念な感覚すら抱かされる思いだ…
国政の混乱及び経済危機に陥った現在、JAL経営幹部が我が社はV字回復したと“糠喜び”したところで、リストラにより失った有能な社員の心の行き所があるはずもない。 しかも、現在機内顧客に心よりのサービスを届けて下さっている臨時採用CA氏やパイロット氏に更なる試練を負荷せねばJALの運行がままならないとなると、過去における御巣鷹山墜落の惨劇さえもがJAL贔屓顧客の脳裏にカムバックして来るというものだ。
一顧客の立場でJAL過去の“放漫経営”の過ちを回想しても埒が明かないが、昨日の再上場の意味合いを今一度JAL幹部は肝に銘じて再出発して欲しいものである。