礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

薪炭自動車の取扱いで注意すべき事項

2020-06-26 00:13:01 | コラムと名言

◎薪炭自動車の取扱いで注意すべき事項

 国防科学知識普及会発行『自動車時代』第九巻第八号(一九四一年八月)から、「代燃車の試験課題と解答整理の二つ」という記事(山口安治執筆)という記事を紹介している。本日は、その四回目(最後)。
「薪炭自動車」という言葉が出てくるが、読みは「しんたんじどうしゃ」。薪(まき)および木炭を燃やしてガスを発生させ、そのガスを用いて内燃機を動かす自動車のことである。

 次の問題は
問 薪炭自動車の取扱ひ及び其の運転に際して注意すべき事項を問ふ……と云ふのである。これも実地運転と直接関係する問題で、実地試験の要求する点を学科試験官が採用した処のその反映であると見てよいのである。
 この問題には取扱ひと運転の時の注意と云ふ具合に一つの問題で二つの解答を要求してゐるので、解答も取扱ひの場合と運転の場合とに区別して答へる様にした方が解答を整理する場合は都合がよく且つ書き易いのである。
答、取扱ひに就いては左【さ】の如き注意が必要である。即ち
イ、発生炉内にまだ残火【ざんくわ】がある場合に掃除せねばならぬ時は、その残火を灰と一処に書き出しても、これをその侭【まゝ】不用意に危険な場所に捨てゝはならない。(火災の虞れ〈オソレ〉があるから)又残火を始末する時に車庫内で行ふ場合は充分注意し火を処分すること。また発生炉に埋つた灰やクリンカーは炉の温つてゐる内に掃除を行ふと綺麗に除去出来る。 
ロ、エンヂンの調整及び発生炉、冷却器、清浄器の掃除又は手入れは入念に行ふこと。この際余り手荒に行はず静かにやること。
ハ、発生炉内に炭や薪〈マキ〉を補給する時はよく注意して濫りに〈ミダリニ〉額や手を詰込口【つめこみくち】に差出さぬこと。また発生炉を余り過熱させぬこと
ニ、斯の他取扱ひ上火災防止の為めには、積荷の位置を発生炉に接近して積載せぬこと。或は薪、木炭を着火の虞れある場所に置かぬ事とか運転中焚口【たきくち】から炭火が落下せぬ様に前以て注意して完全ならしめて置くこと。 
 次に、運転に際して注意すべき事項を挙げると。
イ、始動の時は発生ガスが充分なりや否やを確めてから行ふべきである。若【も】し不充分なガスを用ひて始動する時はエンヂンは僅かの間回転してもまた停止して仕舞ひ且つ充分な動力が発生しないから避けること。 
また停止したエンヂンを再始動する時には再び始動送風機を廻さなければならないから時間を倍加すると同時にバツテリーの電流を余分に消費するか〔ら〕極力が避ける必要がある。
ロ、運転中は発生炉内の燃料消費に付き常に念頭に置いて注意すること。
 以上の如き解答が得られる。この外の問題としては
 ガス発生炉装置自動車を取扱ふ場合に火災予防の為めどんな注意をせねばならぬか。
 薪炭自動車の始動に際し加速器並【ならび】に空気弁の操作は如何に調整せば可【か】なりや。
 薪炭自動車運転中俄【にわか】に力の減ずることあり其の原因如何【いかん】。
 などと主として代燃車を運転する運転者が是非とも知らねばならない身近な問題を獲へて〈トラエテ〉、代燃車への知識吸収の刺戟となる様な課題が多い。
 この外にも代燃車として許されてゐる種類はどんなものがあるかとか、薪炭車にはどんた薪炭を選んだらよいかとかの常識問題も出てゐるが要するに代燃車への課題は前記の試験官の説明にもある如く、実地試験に即応した運転者の知らねばならない身近な処から獲へた課題が多いのであるから、この考へをよく承知の上で、常に実地試験を受ける心構へを同時に学科試験へも移し直して、従来課題されたものを参考として研究して置けば、代燃車の問題に関する限り先づ鬼に金棒で、学科試験の合格は疑ひないであらう。

 文中、「薪炭自動車」、「ガス発生炉装置自動車」、「代燃車」などの語が出てくるが、基本的に、すべて同義と考えてよい。
 明日は、話題を変える。

*このブログの人気記事 2020・6・26(2位になぜか那須補足意見)

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