礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

特に猶太人は公民たるを得ざるものとしてゐる

2020-06-28 04:55:05 | コラムと名言

◎特に猶太人は公民たるを得ざるものとしてゐる

 電報通信社発行の『独逸大観』(一九三六)を紹介している。本日は、その二回目。同書の第二篇「新国家の誕生」の「三、独逸国の再建(有機的形成)」から、「D 独逸公民法」の全文を紹介したい。

   D 独 逸 公 民 法
 前諸章に於いて述べた国民社会主義政府の立法的処置は何れも、国家自体、即その行政及行政機構に関してゞあつたが、本章に於いては、国家自体を支持してゐる個人及その国家内の地位に関して述べるこゝする。
 独逸〈ドイツ〉国が従前連邦的性質を有し、各邦が夫々伝統的地位を固執してゐた結果、凡ての独逸人は夫々の属する各邦の邦籍と同時に独逸連邦の国籍を有してゐた。従つて従来の独逸発行の旅券には国籍の項に「プロイセン人」「バイエルン人」又は「ザクセン人」等と誌されてあつた。一九一三年七月二十二日の法律は「連邦及邦国籍法」と称せられてゐる。一九三四年連邦構成各邦の国家的独立が廃棄されて茲に始めて、プロイセン或ひはバイエルン国籍と云ふものも消滅した。即ち同年一月三十日の独逸国組織更新法に基き同年二月五日独逸国籍命令が発布され、これに依り独逸連邦内の各邦国籍なるものが消滅し、唯独逸国籍のみが存在することゝなつた。
「独逸国籍所有者」の概念は、依然として上掲した一九一三年の法律にしたがつて決定されるが、国籍所有者たることの特徴は、当該者が独逸国防禦団体員であり、その為にそれに対して特別の義務を負ふと云ふ点に存してゐる。
 国籍所有者の政治的権利に関しては、一九三五年九月十五日の「独逸公民法」の中に特に意義深い諸規定が定められた。
 自由主義の見解に依れば、苟しくも国籍を有するものは、その心情、能力、人種的差別の関係なく平等に政治的権利を有するのである。ワイマル憲法は満二十歳に達した国籍所有者はみな選挙権を有する事になつてゐるが、民法では満二十一歳を以て成年としてゐる。即ち自分自身のことすら独立に仕末の出来ない国民が、国民及国家の重大事に参与決定し得ると云ふことになつてゐた。この珍妙な状態はニュルンベルクの立法によつて一掃され、その上更に真に国事を托し供に決するに足る特定の範囲の人々を一般市民から抽出した。ヒットラーはその著「我が闘争」の中に「国家はその存立及その発展の源泉であり担当者たる一群の人達即ち「国民同志【フオルクスゲノツセ】」と言はれる人々と唯利得を迫つてゐる部分として国内に存立するに過ぎない者達とを厳格に区別しなければならぬ」と云つてゐる。
 新法は此見地から独逸公民と独逸国民とはこれを区別し、国籍を有するも血統上他人種に属する者、特に猶太〈ユダヤ〉人は公民たるを得ざるものとしてゐる。のみならず血統上独逸人又はこれと類同の血統を有する国籍所有者でも、国政に参画するの特権を得るに足るのみならず且その資格あることを証明したものゝみが公民たるを得るのである。新法の重要なる個所を摘出掲載すれば次の如くである。
 第一条 独逸国籍所有者トハ独逸国防禦団体ニ属シ、且ソレガ為ソレニ対シ特別ノ義務ヲ負フ者ヲ云フ。
 国籍ハ連邦及び国籍法ノ規定ニ従ヒ之ヲ享ク(出生、認知、婚姻、帰化)。
 第二条 独逸公民タルハ、血統上独逸人又之ト類同ノ血統ヲ有スル独逸国籍所有者ニシテ、国民及国家ニ誠実ニ奉仕スル意思ヲ有シ、又其レニ適スルコトヲ行動ニ依リ実証シタモノノミニ限ル。
 独逸公民権ハ公民証書ノ交付ニ依リ発生ス。
 独逸公民ノミガ法律ノ規定ニ従ヒ与ヘラレル政治的権利ノ完全ナル享有者ナリ。
 この国籍法は一九三三年三月二十四日の立法委任法に基いて発布せられたものではなくして、一九三五年九月十五日ニュルンベルク党大会中開催されたる独逸国会に於て全会一 致を以て可決せられたものである。これは政府の提出したものと称するより議会の発案に なるもので、一九三五年九月十七日より実施せられた。更に一九三五年十一月十四日発布の独逸国公民法に関する法規に於て猶太人の法律的地位が細目に亘つて規定されてゐる(「猶太人の地位に関する処置」参照)。

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