礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

喫茶アネモネ、第二回読書会

2023-10-15 01:37:19 | コラムと名言

◎喫茶アネモネ、第二回読書会

 原秀男『二・二六事件軍法会議』の紹介の途中だが、いったん、話題を変える。
 13日の東京新聞『喫茶アネモネ』(278)は傑作だった。喫茶アネモネを会場に、第二回の読書会が開かれる。課題図書は、太宰治の『走れメロス』。喫茶アネモネの常連メンバーが机を囲むが、本を読んできた人は、ほとんどいない。にもかかわらず、読書会は盛り上がる。「いやー太宰だよね」、「メロスが走るのよねー」、「そりゃ走るさメロスは」など、意味不明の発言が続く。司会役の「青年」が、「課題図書ちゃんと読んできました……?」と問うと、中年の男性が「年をとると集中力がなくて本が読めなくなるんだよ!」と開き直る。――思わず笑ってしまった。
 このマンガを読んで、十数年前に参加した、ある読書会のことを思い出した。
 知人のK氏が、多年にわたる近現代史の研究を踏まえて、一冊の本を自費出版した。K氏から、その本の贈呈を受けた友人たちが集まり、読書会を開くことになったという。私は、K氏とは、それほど親しいわけではなく、本の贈呈も受けていなかったが、読書会があるという話を聞いて、参加することにした。本を贈呈されていたH氏から本を借りて、数日で読了。その上で、水道橋駅近くの会場に赴いた。
 会場には、十数人が集まっていた。著者のK氏も正面に坐っている。
 まず、集まったメンバーによる相互の自己紹介。ここで、驚くべき事実が判明した。参加者の大半が、当該の本を読了していなかったのである。
「まだ、半分ほどしか読んでいないが、……」、「実は、まだ読んでいないのだが、……」といった声が相次いだ。
 にもかかわらず、読書会は異様に盛り上がった。いくつかの争点をめぐって、甲論乙駁。議論は、いつ果てるとも知れないという感じだった。議論の内容については、すでに記憶が薄れているが、争点のひとつは、私が提示したものだった。当該書中の記述に対する私の意見に対して、「まだ読んでいない」といっていた某氏が、堂々と反論してくるのには、文字通り、閉口した覚えがある。

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