礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

既に事の起こりたる以上は仕方なし(真崎大将)

2023-10-21 02:48:24 | コラムと名言

◎既に事の起こりたる以上は仕方なし(真崎大将)

 原秀男『二・二六事件軍法会議』(文藝春秋、1995)の「六 裁かれる陸軍大将」の章から、「無罪となった真崎大将」を紹介している。本日は、その二回目。
 昨日、紹介した部分のあと、一行アキがあって、次のように続く。

 磯村〔年〕裁判長は、被告人に氏名、年齢、官等級を尋ねる。これを人定尋問という。続いて、竹沢〔卯一〕検察官に、「公訴事実の陳述を……」とうながし、公訴状が朗読された。
 公訴状の中身は次のような内容であった。
【一行アキ】
〈かねて被告人(真崎大将)から直接に訓育指導を受けたり、話を聞いたり風格を聞いて、深く被告人を敬慕崇拝していた一部青年将校の間に、現下時弊の原因は元老、重臣、政党、財閥など所謂支配階級の堕落横暴にあると考える者を生じた。……
 更に昭和十年〔1935〕七月被告人が教育総監から軍事参議官に専補された、いわゆる教育総監更迭問題に関し村中孝次〈ムラナカ・タカジ〉、磯部浅一〈イソベ・アサイチ〉等が陸軍当局の執りたる手続きに統帥権干犯の事実ありと為し頻りに当局非難の気勢を挙ぐるや、被告人は此等情努を察知しながら右更迭の経違に適正を欠くものある旨を洩し暗に之を慫慂するの態度を持し、以て之が気勢を強化すると共に革新気運を助長するに至らしめ……
 香田清貞〈コウダ・キヨサダ〉、磯部浅一らが真崎邸を訪れた時に国家革新を企図する今次反乱被告人等の気勢を察知しながら暗に之を助長し……
 磯部浅一より蹶起の趣旨及行動の概要を聞知し、且蹶起趣旨の貫徹方を懇請さらるるや「判って居る」と答え…… 
 反乱幹部との会見席上に於て、蹶起将校等の行為其のものは悪しきも社会にも一層の責任あり、既に事の起こりたる以上は仕方なし、大に働かざるべからず。又非常時に方り〈アタリ〉ては断固たる処置を要する旨を述べ…… 〉
【一行アキ】
 公訴状の朗読の後、裁判長は、
「これより裁判官たる法務官をして、被告人の尋問、証拠調、及び弁論の指揮に関する事項を行わせる」
 と宣言した。【以下、次回】

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