バグダッドに住む人々の生活ぶりを伝えるものに8月に出た『バグダッド・バーニング2 いま、イラクを生きる』(アートン刊)がある。著者はイラク女性だが、実名ではなく、「リバーベンド」というインターネット上のブログ名で出ている。今回出たのは第2集で、2004年6月から今年6月までのブログを集めている。
今年2月11日のブログでは、「襲撃」と題して、いとこの誕生パーティーでおばの家に招かれた時に、夜、治安部隊の家宅捜索を受けた経験を次のように書いている。
「突然、2人の男が居間に入ってきた。私たちは全員おばのそばのソファに座っていた。いとこのBは目覚めていて、恐怖に目を見開いていた。男たちは大きな軍用懐中電灯を持っていた。一人が私たちにカラシニコフ銃を向け、『お前らのほかに誰かここにいるのか?』と、おばに吠えた。『いいえ、私たちのほかには外であなたたちと一緒にいる夫だけです、家を調べてみればいいわ』。T(別のいとこ)が、どぎつく輝く軍用懐中電灯の光を遮ろうと手を挙げた。が、男の一人が怒鳴りつけたので、その手は弱々しく膝の上に落ちた。私はまぶしい光に目を細めたが、目が慣れてくると、彼らが覆面をして目と口だけを出していることが分かった。いとこたちをちらりと見て、Tがほとんど息をしていないのに気づいた」
この時の治安部隊の作戦で、おばの地区だけからでも、19歳から40歳までの男たちが、少なくとも12人連行されたという。ほとんどはスンニ派住民だった。別の場所で治安部隊に連れ去られた住民の家族は「彼らが死体で発見されることを予測して、日に何度も死体保管所を訪れている」という。リバーベンドは別のところで、家族を求めて、死体保管所に集まる人々の表情を書いている。
ブッシュ大統領は米同時多発テロから5年の今年9月11日のテレビ演説で、「サダム・フセインが権力の座からいなくなって、世界はより安全になった」と述べたが、イラクにとっては全く逆だ。米国を襲った暴力は、米国の戦争によってイラクに移植され、さらに地域の矛盾を吸収し、人々の憎しみを食う怪物のように増殖している。ブッシュ大統領がいくら戦争を正当化しようとも、さらに安倍首相が「武力行使を支持したのは正しかった」と国会答弁しようとも、世界がとんでもない暴力を抱え込んでしまったことは否定できない。
asahicom 川上泰徳記者
今年2月11日のブログでは、「襲撃」と題して、いとこの誕生パーティーでおばの家に招かれた時に、夜、治安部隊の家宅捜索を受けた経験を次のように書いている。
「突然、2人の男が居間に入ってきた。私たちは全員おばのそばのソファに座っていた。いとこのBは目覚めていて、恐怖に目を見開いていた。男たちは大きな軍用懐中電灯を持っていた。一人が私たちにカラシニコフ銃を向け、『お前らのほかに誰かここにいるのか?』と、おばに吠えた。『いいえ、私たちのほかには外であなたたちと一緒にいる夫だけです、家を調べてみればいいわ』。T(別のいとこ)が、どぎつく輝く軍用懐中電灯の光を遮ろうと手を挙げた。が、男の一人が怒鳴りつけたので、その手は弱々しく膝の上に落ちた。私はまぶしい光に目を細めたが、目が慣れてくると、彼らが覆面をして目と口だけを出していることが分かった。いとこたちをちらりと見て、Tがほとんど息をしていないのに気づいた」
この時の治安部隊の作戦で、おばの地区だけからでも、19歳から40歳までの男たちが、少なくとも12人連行されたという。ほとんどはスンニ派住民だった。別の場所で治安部隊に連れ去られた住民の家族は「彼らが死体で発見されることを予測して、日に何度も死体保管所を訪れている」という。リバーベンドは別のところで、家族を求めて、死体保管所に集まる人々の表情を書いている。
ブッシュ大統領は米同時多発テロから5年の今年9月11日のテレビ演説で、「サダム・フセインが権力の座からいなくなって、世界はより安全になった」と述べたが、イラクにとっては全く逆だ。米国を襲った暴力は、米国の戦争によってイラクに移植され、さらに地域の矛盾を吸収し、人々の憎しみを食う怪物のように増殖している。ブッシュ大統領がいくら戦争を正当化しようとも、さらに安倍首相が「武力行使を支持したのは正しかった」と国会答弁しようとも、世界がとんでもない暴力を抱え込んでしまったことは否定できない。
asahicom 川上泰徳記者