たんぽぽの心の旅のアルバム

旅日記・観劇日記・美術館めぐり・日々の想いなどを綴るブログでしたが、最近の投稿は長引くコロナ騒動からの気づきが中心です。

ミュージカル『スクルージ』千秋楽(写真追加しました)

2015年12月15日 23時05分01秒 | ミュージカル・舞台・映画
『やりたいことを全てやり、言いたいことを全て言う時間など、あったためしがない。だからこそ限られた時間の中で人生を精一杯生きるーこれがコツなのだ』

今井清隆さん演じるクリスマスの第二の精霊の台詞。

赤坂ACTシアターで12月4日から15日まで上演。

15日千秋楽、13時30分〰を観劇しました。1階後方席。迷いましたが観劇してよかったです。久しぶりにあったかい涙が流れていました。こういう作品、経団連のじいさんたちにこそ観てほしい。心の底からそう思います。

市村正親さんの、強欲なのに憎めないクソジジィぶりが絶妙でした。なんというかスクルージそのもの。歌がうまいのはいうまもでもありませんが、若かりし頃の田代万里生さん演じるスクルージや今井清隆さんのクリスマスの第二の精霊との歌のかけあい、間の取りかた、パジャマ姿での宙づりシーン、クリスマスの第三の精霊に未来の、自分のお墓に書かれている言葉と武田真治さん演じる事務所の秘書ボブ・クラチットが末っ子ティム坊やのお墓に声をかける場面をみせられて生まれ変わっていく場面、最後はサンタクロースの衣装で「サンキューベリーマッチ」の合唱。市村さんにしか出せない舞台の空気感でした。

タータン(香寿たつきさん)が二役を演じ分けていてどちらも素敵でした。クリスマスの第一の精霊はスクルージの亡くなった妹ジェニーの生まれ変わり(田代さん演じるスクルージの甥っ子のお母さん)、儚げで美しい歌声でした。白いレースをまとう姿が妖精のようで素敵すぎました。ボブ・クラチットの奥さんで5人のお母さん役は貧しいながらもあったかい家族を守って必死に守っていこうとするたくましい母さんぶりでした。こちらもすごく似合っていました。ぼろい家の中でつましいクリスマスの食卓を囲んで、武田さんのボブ父さん、タータンの母さん、兄妹四人(ティム坊やは踊れないので見守っています)で歌って踊るシーン。家族がひとつになっている雰囲気がよく出ていました。病気で松葉づえをつき片足をひきずっているティム坊やを抱き上げて贈り物をくれたスクルージに軽く頭を下げたあと去っていくシーンが印象的でした。
安定感のある歌と演技とダンスに儚い美しさとたくましさ。すっかり魅せられました。

田代万里生さんのスクルージの甥っ子と、若き日のスクルージとの演じ分けもよかったと思います。幼い頃貧しさから苦労したスクルージは若い頃金貸し業の仕事に打ち込むあまり、笹本怜奈さん演じる恋人イザベルの心が離れていってしまったことに気づかず、ある日突然別れを告げられます。あなたにはお金という恋人がいると遠くへ去っていくイザベルを追いかけることができない若き日のスクルージ。その様子をみせられる老いたスクルージは「追いかけろよ!」「なぜ追いかけないんだ!」と苛立ちますが若き日のスクルージは追いかけることができません。老いたスクルージは他の人と結婚して孫もいるイザベルを今でも好きだとクリスマスの精霊に告げます。せつなさの残る場面でした。
若き日のスクルージとスクルージの甥っ子の二役を演じる田代さん、のびやかな歌声と立ち姿が美しすぎました。スクルージの恋人イザベルとスクルージの甥っ子の恋人の二役を演じる笹本さん。田代さんとの並びが舞台映えして美しすぎました。

加藤兼史郎君演じるティム坊やの儚げな歌声。病気で長く生きられないとわかっているので涙が流れて仕方ありませんでした。見守っている父さんと母さんのあったかさが伝わってくる場面でもあったのでなおさら涙が流れました。クリスマスの精霊にボブの家に連れていかれてこっそい盗み見ている憎めないスクルージは、あの子は助からないのか、と今井さんのクリスマスの精霊に思わず叫びます。武田真治さんのボブが亡くなったティム坊やのお墓に語りかけるシーンも涙、涙でした。

今井清隆さんのクリスマスの第二の精霊。圧倒的な貫録と声量でぜいたくすぎる感じでした。

ロンドンの下層階級の貧しい子どもたちを演じる子役ちゃんたちがみんな元気いっぱい。

帝国劇場の半分ぐらいの劇場であったかい空間でした。
『SUPER GIFT』から3カ月が過ぎていました。こういう時間もないと頭がどうにかなりそうでした。きついことの連続だった今年を洗い流すことができたでしょうか。
まだやり直すことはできる、おそくはない、そんな心のエネルギーをもらいました。

23年前の今頃、妹との突然のお別れから4カ月余り、同じ作品を池袋で観劇しました。市村さんのスクルージでした。以前このブログにその頃の日記やらプログラムからの引用やら書きまいした。自分でも振り返ってみたいと思います。

まだまだ書き切れてはいない感じもありますが、駆け足で記してみました。

写真は終演後の集合写真。公式ツィッターからの転用です。