(2014年10‐11月帝国劇場公演プログラムより)
「モーツァルトゆかりの地を訪ねて~井上芳雄 in ザルツブルク&ウィーン~
♬ザルツブルク~モーツァルト生誕の地へ
2002年の日本初演からヴォルフガング役を演じ続け、今回、最後となる同役に挑む井上芳雄。この夏、モーツァルトの足跡を改めて辿るため、井上はオーストリアに飛んだ。約半日のフライトを経て最初に着いたのは、モーツァルト生誕の地ザルツブルク。彼ゆかりの建物や音楽が街中に溢れている。空港から市街地に向かう車の中でそんな街並みを眺めていると、ザルツブルクに来た実感がジワジワとこみ上げてくる。井上とモーツァルトを繋ぐ、素敵な出会いの数々が待っているはずだ。
カフェや雑貨店などアンティークな店が立ち並ぶゲトライデガッセの一角に、モーツァルトの生家がある。1756年1月27日にモーツァルトが生まれたこの建物には、彼が使用していた楽器類や一家の肖像画などが展示されており、ガブリエレ・ラムザウアー博士による案内のもと、展示品を興味深げに見る井上。7歳のモーツァルトの肖像画の前で足を止め、マリア・テレジアから下賜された大礼服を着て無邪気にほほ笑む姿を見て、「天真爛漫な愛される子だったんですね」と感想を漏らす。対照的なのが、亡くなる2年前のモーツァルト“未完の肖像画”。実はこの絵は彼の妻コンスタンツェの、姉アロイジアの夫ランゲが書いたものだ。「年を取って見えるけど、どこか子供っぽさも残ってる・・・」と井上はつぶやいた。
♬生まれながらにして神の子だった?!
続いて向かったのは、ザルツブルク市街を流れるザルツァッハ川を挟んだ対岸にある、モーツァルトの住居。緑に囲まれた中庭のカフェでは、ランチを取る人や観光の休憩にお茶をする人の姿もチラホラ。ここを案内してくれたのはホハンナ・セニグル博士。一般公開されているエリアの他に、地下に保管されている普段は見ることのできないモーツァルトの直筆楽譜や演奏旅行中に家族とやりとりしていた書簡などを特別に見せていただく。
貴重な資料と対面した井上は、「とても綺麗な楽譜。音符が踊っているみたいですね。劇中で譜面を書くシーンがあるけれど、本物をみたことで、また違った気持ちで書けそう」と思いを馳せていた。そしてモーツァルトから父レオポルトへ送った手紙の中には、なんと劇中の歌詞に通じる文面が。「『僕こそ音楽ミュージック』と同じ内容が書かれてる!クンツェさんはここからインスパイアされたのかな?」と思わぬ発見に興奮気味の井上だ。
そして、さらに貴重な資料との出会いがあった。モーツァルトが洗礼を受け、そして何百回とオルガン演奏をしたザルツブルク大聖堂の近くにある資料館に、彼の洗礼名簿が残されていた。そこに記されていた洗礼名は、“ヨアネス・クリソストムス・ヴォルフガングス・テオフィルス・モーツァルト”。ギリシア語で“テオフィルス”は“神に愛されし者”という意味だ。この名のラテン語読みである“アマデウス”を気に入って使うようになったそうである。劇中のナンバー「モーツァルト!モーツァルト!」には“神の子モーツァルト!”という歌詞もあるが、彼の才能は生まれながらにして約束されていたのだ。
実はザルツブルクを巡ったこの日は、偶然にも世界的に有名なザルツブルク音楽祭の初日。各国から音楽家や音楽愛好家が集結して華やかな賑わいを見せており、大聖堂前の広場では重い思いに音楽を奏でる人があちらこちらにいる。井上も思わず足を止めて聞き入る場面も。井上とモーツァルト、そして“音楽”との浅からぬ運命を感じたこの地を後にし、緑豊かな夏のオーストリアの山々を抜けて、一路ウィーンへ向かう。」
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2018年の『モーツァルト』で古川雄太さんがビジュアル撮影の時身につけたお衣装、芳雄さんが着用していたものとのこと。
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「モーツァルトゆかりの地を訪ねて~井上芳雄 in ザルツブルク&ウィーン~
♬ザルツブルク~モーツァルト生誕の地へ
2002年の日本初演からヴォルフガング役を演じ続け、今回、最後となる同役に挑む井上芳雄。この夏、モーツァルトの足跡を改めて辿るため、井上はオーストリアに飛んだ。約半日のフライトを経て最初に着いたのは、モーツァルト生誕の地ザルツブルク。彼ゆかりの建物や音楽が街中に溢れている。空港から市街地に向かう車の中でそんな街並みを眺めていると、ザルツブルクに来た実感がジワジワとこみ上げてくる。井上とモーツァルトを繋ぐ、素敵な出会いの数々が待っているはずだ。
カフェや雑貨店などアンティークな店が立ち並ぶゲトライデガッセの一角に、モーツァルトの生家がある。1756年1月27日にモーツァルトが生まれたこの建物には、彼が使用していた楽器類や一家の肖像画などが展示されており、ガブリエレ・ラムザウアー博士による案内のもと、展示品を興味深げに見る井上。7歳のモーツァルトの肖像画の前で足を止め、マリア・テレジアから下賜された大礼服を着て無邪気にほほ笑む姿を見て、「天真爛漫な愛される子だったんですね」と感想を漏らす。対照的なのが、亡くなる2年前のモーツァルト“未完の肖像画”。実はこの絵は彼の妻コンスタンツェの、姉アロイジアの夫ランゲが書いたものだ。「年を取って見えるけど、どこか子供っぽさも残ってる・・・」と井上はつぶやいた。
♬生まれながらにして神の子だった?!
続いて向かったのは、ザルツブルク市街を流れるザルツァッハ川を挟んだ対岸にある、モーツァルトの住居。緑に囲まれた中庭のカフェでは、ランチを取る人や観光の休憩にお茶をする人の姿もチラホラ。ここを案内してくれたのはホハンナ・セニグル博士。一般公開されているエリアの他に、地下に保管されている普段は見ることのできないモーツァルトの直筆楽譜や演奏旅行中に家族とやりとりしていた書簡などを特別に見せていただく。
貴重な資料と対面した井上は、「とても綺麗な楽譜。音符が踊っているみたいですね。劇中で譜面を書くシーンがあるけれど、本物をみたことで、また違った気持ちで書けそう」と思いを馳せていた。そしてモーツァルトから父レオポルトへ送った手紙の中には、なんと劇中の歌詞に通じる文面が。「『僕こそ音楽ミュージック』と同じ内容が書かれてる!クンツェさんはここからインスパイアされたのかな?」と思わぬ発見に興奮気味の井上だ。
そして、さらに貴重な資料との出会いがあった。モーツァルトが洗礼を受け、そして何百回とオルガン演奏をしたザルツブルク大聖堂の近くにある資料館に、彼の洗礼名簿が残されていた。そこに記されていた洗礼名は、“ヨアネス・クリソストムス・ヴォルフガングス・テオフィルス・モーツァルト”。ギリシア語で“テオフィルス”は“神に愛されし者”という意味だ。この名のラテン語読みである“アマデウス”を気に入って使うようになったそうである。劇中のナンバー「モーツァルト!モーツァルト!」には“神の子モーツァルト!”という歌詞もあるが、彼の才能は生まれながらにして約束されていたのだ。
実はザルツブルクを巡ったこの日は、偶然にも世界的に有名なザルツブルク音楽祭の初日。各国から音楽家や音楽愛好家が集結して華やかな賑わいを見せており、大聖堂前の広場では重い思いに音楽を奏でる人があちらこちらにいる。井上も思わず足を止めて聞き入る場面も。井上とモーツァルト、そして“音楽”との浅からぬ運命を感じたこの地を後にし、緑豊かな夏のオーストリアの山々を抜けて、一路ウィーンへ向かう。」
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2018年の『モーツァルト』で古川雄太さんがビジュアル撮影の時身につけたお衣装、芳雄さんが着用していたものとのこと。
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