カウンセリング総論-2004年セスクカウンセリング総論①資料より
「フォロー・ミー」-2004年5月カウンセリング総論②資料より
2004年5月21日(金)カウンセリング総論②講義メモ
上嶋洋一(京都保健衛生専門学校非常勤講師)
①相手の世界にまずどっぷりとひたること、感じる/味わう/生きてみる。
②距離をおくこと。
この二つを繰り返しながら少しずつ相手に近づいていく。
①を振り返ってみる。自分が経験したことを読みといていく。人を見た目だけでは判断できない。まず相手の世界にどっぷりひたってみることがカウンセリングでは重要(看護学校の講師の経験から「フォロー・ミー」の文章)
指示的カウンセリング
①一生懸命相手の話をきく。
②どこにモンダイがあるか判断する。
③適切なアドバイスを行う。
30年以上前に先生がカウンセリングにもっていたイメージ。しかし、「非指示的」カウンセリングを体験した。
非指示的カウンセリング
(1)responseを求めている(answerのレベルを超えて)→アドバイスを求めているのではなく、いちばんきいてほしいことは実は一番いいたくないこと、一番わかってほしいことは一番知られなくないこと、というパラドックスを私たちは抱えている。この逆説をカウンセリングは読みといていく。ここからすっと言える人は少ない。遠くの話から入っていって、この人なら話しても大丈夫だとなった時核心に近づいていく。
(2)それまで勉強ばかりしてきた女子学生がはじめて男の人を好きになった自分がいた。はじめて男の人を好きになった自分を許せている自分がいた。しかい、相手の人には妻がいる。→こうした場合、きく側がアドバイスできるようなことは彼女がとっくにわかっているので言うことがなくなり、ただうなづくしかなくなる。安易な指示はもはや無意味。その時はじめて話す側と聞く側に対等な世界が生まれる。
(3)①自分の思いをそのまま受け取ってもらえないから私たちには悩みが生じる。だとしたら、その思いをそのまま受け取ってもらえるだけで私たちの悩みの大半は消えていくのかもしれない。
②相手の差し出した手をにぎり返す、抱きしめる。「他にも人がいたにもかかわらず、ぼくの所へ来てくれた」→こうした思いをこめて握りかえすことで相手に生きる意欲がわいてくるのではないか。
リレーション(国分康孝の言葉):相手との間にいい関係をきずく。自分がクライアントと向い合った時、いいリレーションの関係をたくさんほりおこす。ほりおこした経験を距離をおいて自分の言葉で語ってみる。なにがよかったのか考えてみる。
いい関係をきずく時必要な条件
国分康孝
(1)非審判的・許容的雰囲気-とんでもないことをしている人に対して「あなたほどの人がそうせざるを得ない。よっぽどのことがあったんでしょうね」と言ってもらえたら人は楽になる。こういう感覚は、非審判的・許容的雰囲気に身をおくための手だて。裁きがない、許容的。「もっとやっていいよ」ということではないことを伝える。
(2)共感性-うてはひびく関係
(3)好意:相手のことを好きになる。
①相手を好きになるためのアンテナをはっておく。例えば苦手な人のいい所 をみた場面を思いおこす。
②どうしても好きになれない時、そういう自分を受け入れる。そのかわりなぜ好きになれないかを自己分析しておく。無理に好きにはならない。
(4)無構え-リラックスした格好で相手を受け入れる姿勢をみる。くずれすぎずかたすぎずのあたりが大切。肩の力を向く。
(5)Give&Take ①愛情②物③言葉 Giveの方が大事だと教わってきたがTakeの方が大事だと考える。ささやかな物は受け取る。心の底から受け取る。二人の関係が深くなる。
愛を受け取ってもらえない時、人は相手に拒絶されたという感覚をもつ。赤ちゃんがミルクをのんだ時嬉しいのはのんでねという私の思いを受け取ってくれたからである。(精神分析では、食べ物は愛情表現)もらう/受け取る。心の底からもらうことがGive&Takeのいい関係をきずいている。
(6)コミュニケーション-(1)から(5)までの条件が相手に適切に伝わらなければならない。HowToを軽んじる風潮が日本にはあるがどうやって伝えたら相手が幸せになるかを工夫できるのは大切なこと。伝え方を工夫できる。
私たちにとって最終的に大切なことは「あの人との関係はよかった」「あの人との関係はあたたかだった」そういうものを思い起こし、なにがよかったのかを自分の言葉で語ってみる。言語化。わたしたちは自分の感覚でしか動くことができない。いろんな理論は言語化の助けになる。カウンセリングにおいて大事なのは相手との間にいい関係をつくっていくこと。最終的には自分のこういう感覚を大事にしていこうというものを言語化すること。
Ⅲ言語行動
言語行動そのものを学ぶのではなく、そのうしろにあるカウンセリングの精神を感じ取ってほしい。
(a)「なぜ」と問うことはモンダイが単純でない場合、相手を追い詰める。私たちが出会うモンダイの多くは単純ではない。
(b)~(d) 相手とズレる可能性がある。(それぞれわかってもらえたような気がする言い方はあるが)
(a)から(f)の全部の、それぞれの長所と短所をわきまえて全部仕えた方がいい。
Ⅳカウンセリングの技法
相手の世界にどっぷりつかる。理解するために(1)から(8)の技法を用いる。
本当にわかってもらいたいことがいちばん言えないこと、というパラドックスを解きほぐしていく。
相手がふれられたくないことにはふれない。(上嶋先生の場合)
その時自分にできることを精一杯の応答をして、相手の反応に全神経を集中させる。
相手の反応をみながら軌道修正していく。
とんちんかんな応答も大切。クライアントが理解していないことをわかって説明してくれる。そこで軌道修正すればいい。
いちばん言えないことにたどりつくことではなく、自分の話を一生懸命きいてくれて、何か言ってくれる人がいる、ということが大切なのではないか、問題は解決していなくても。うまく返すことができなくても、いやしになるのではないか。
(1)カウンセリングと日常会話のいちばん大きな違いは沈黙の多さ。意味のない会話にも意味がある。
①動きのある状態-クライエントがひととおり話しおえた時こういうふうにきいていますよ、と伝えかえすとある種独特の沈黙が生まれる。(カール・ロジャース)→より深いなにかが生まれる。
沈黙のなかにより豊かな実りのあるものが生まれている。この時クライエントの「対話」を邪魔しないでその沈黙によりそってみる。
②「動きのない沈黙」-カウンセラーの度量によって限界がある。限界をこえて放っておくことは、クライエントを見捨てていくことになる。耐えきれなくなった時カウンセラーの気がかりを率直に伝える。「気にかけているよ」
(2)「受容」-相手のことを受け入れるというような哲学的なことではなくて、言語行動としての「受容」。
受動的なようであるが、前を向いている。カウンセラーが自分の価値観は一時わきへおいて「裁いたりしないで聴いていますよ」ということを伝え、また「あなたのおっしゃることは、そこまではわかりましたよ」ということを伝える。声はおのずと落ち着いてくる。
なぜそういう行動をとっているかを期待することによって自然なうなづきが生まれてくる。ただうなづけばいいだけなのに、なかなかできないことがある。
①自分の価値観がジャマして、相手が本当に伝えようとしているものが伝わってこないことがある。(日常生活でよくある)
②カウンセラーの側に、なんらかの「答え」があるという逆説。相手の話をきくよりも自分の中に生れてきた答えを相手の心におしつけようとする。正解があればあるほど、相手の声がきこえなくなる。正解・回答が生まれてきた時こそ要注意。
(3)繰り返し
相手の話のポイントをつかまえて繰り返す。 どこを繰り返すかによってポイントがちがってくる。(相手のことばを使って繰り返すことはズレる可能性があるがとんちんかんな応答にも意味がある) オウム返しはしらけてくるが、きちんと繰り返すことは大切。なんのために繰り返しているかを自分に納得させておくことが必要。
①相手のことばを繰り返すうちに相手の世界になじんでくることがある。なじみがでてくると相手に近づいていこうとする心が生まれてくる。
ex.母親と幼児の会話、その人にとっての大切なことばがある。
必ずくり返さなければならないことば
(1)相手から繰り返しでてくることば。
(2)文法的にはおかしい。日本語としてはおかしい。→そういう言い方をしなければ伝えられない何かがあるから、あえてそういう言い方をする。
=大切なことば
そのまま味わい、しみこませることで、その人独自
世界に近づいていく。「いのちと生きる」「生きるために死んでいた」
②「もう一人のその人」になる。
悩んでいる時私たちはいろんな人の声でいっぱいになって本当に自分のしたいことが見えなくなる。そんな時もう一人の自分なってくれるカウンセラーがいることで他者の声がぬけていき、本当の自分の声がきこえてくる。
本当にきいてもらいたいことがいちばん言えないと、本当にわかってもらいたいことがいちばん言えないと、というバラドックスを、悩むわたしたちはかかえている。そこを解きほぐす手立てがきわめて重要である。
上嶋先生の方法-その人が伝えいことから優先する。いちばん言えないことにはまず触れないでおく。
(4)明瞭化-わたしたちのすげての会話に入っている。ex.「東京ってどっち?」
①「あっち」:この人は方角を知りたいのかなあという明瞭化のプロセスを ふんでいる。
②「あなたは家が恋しいの?
③「方角が知りたいの?」
カウンセリングのイメージとして早わかり、一をきいて十を知るということがあるが、カウンセリングでは日常会話でとばしているものを 一つ一つ確認しながら進んでいく。カウンセリングの会話はまどろっこしい。
原則-相手がういう感じかを確認してから自分がどう思ったかを伝えていく。
(5)解釈→できることならさけたい。
・意識にのぼってきては都合が悪いから、無意識の世界に追いやっている。 (フロイトの無意識の世界)
・相手の意識をコントロールしようとする解釈がある。
(6)「質問」が上手にできる人になりたい。
相手の関心の表明しての質問、質問いう形で相手への人間的な関心を 伝える。こうして自分への関心を示してくれた子供たちによって幸せを 感じた。自分の存在が誰かを幸せにできている。そのことを実感すること にまさる幸せはない。
・相手の自己洞察を促進する刺激剤。アドバイスでは提供できず質問の形だからこそ提供できるものがある。→自分の人生のモンダイを自分の力で解くことができたんだという相手の自己信頼が生まれる。質問の意味と意図を明瞭にしていく。
クライエント「先生、人はなんのために生きているの?」「生きている意味は何?」
カウンセラー「とても大事な質問のようだけど、どうしてそのことが気になるの?」
→このように問われることによってその問いを問わずにはいられない自分を語ることができたことが、クライエントにとって重要だった。「なんのために生きているか」の答えを求めているのではなかった。このような質問をすることによって相手の世界に近づくとができた気がする。
感受性とはなにか。
わかってもらいたいけど言えないことをつっこんでいくのか、それが言えない、というところを受け取っていくのか、どちらを重視するか、という感受性をみがいていく。
上嶋先生のアプローチ
その時自分にできる精一杯の応答をしながら、次の相手の反応に全神経を集中させる。それによって軌道修正していく。相手に影響されるカウンセラーが安全なカウンセラーかもしれない。カウンセラーは相手の杖。
いやされるのは解釈のことではなく、そういうことばを言ってくれる人がいる、ということが重要なのではないか。それで問題が解決するわけではないが・・・。