『エリザベートTAKARAZUKA20周年スペシャル・ガラ・コンサート』より-高嶺ふぶきさん
(公演プログラムより)
「-いつか黄泉の世界に行く時までついてくる作品であり、役柄-
『エリザベート』は、舞台を観て耳に聞こえてきた音と、譜面を見た時とのあまりの違いにまずはびっくりして。これだけ難しい音楽が、実際に音になってああ聞こえてくるんだと、楽曲のすごさに驚きがありました。今向き合っていても難しいんですが、きちんとできた時の喜びが自分に還ってくるので、この作品で譜読みの面白さに目覚めましたね。トートについては、青い血が流れる死神、黄泉の帝王でありながら、初めて人間を好きになった時の衝撃、そうして心臓が動き出す瞬間、それからずっとエリザベートを追い続けてラストの昇天に至るまでの感情を、繋がりをもって演じることを心がけました。例えば音にしても、世界には、葉っぱのそよぐ音、車の音、さまざまな音があって、まったくの”無”を感じる瞬間を生きることは難しい。集中している時、トートに扮している時、無の中で演じたいと思っているんです。公演の二時間半は、自分があちらの世界にワープしている時間。そんな私のトートが”無”に見えるんだとしたら、嬉しいですね。
トートみたいなお向えが来てほしいとは思わないんですね。それは自分の意思だから。例えば、ふうっと吸い寄せられそうだから今高いところに行かないようにしようとか、そういう思いというのはある。そうして吸い寄せられる目に見えないものを、エリザベートはトートとして見ているのかなあ・・・。そういう意味では、人間という生き物すべてにある感覚なんじゃないかなと思いますね。昇天の場面では、スモークが流れ、現実世界にはないような真っ白な光景が見えるんです。それは客席からは見えない、こちら側からしか見えない光景なんですが、いざ自分が昇天する時もこういう景色が見えるのかなと・・・。その意味で、いつか黄泉の世界に行く時までついてくる作品であり、役柄だと思います。」