東電の事故調査報告書が出されたが、マスコミからは責任回避に終始すると厳しい批判を受けている。特に想定外の高さ15mの津波が今回の事故の根本原因とし、保安院の津波対策への特別な指示がなかったとしている点では責任回避といわれても仕方ない。
同報告書ではチリ津波などから5mぐらいの津波を想定し、対策は充分と当時考え、貞観津波については報告を受け福島県南の地質調査をしたが痕跡がなかったので想定しなかったとしている。ただ、東北電力女川原発の津波想定が13mと記述しているだけで、福島原発の5mとの大きな違いについては触れていない。
この報告書の核心は現場での対応で、吉田所長をはじめ、作業員の苦闘が記されている。地震で外部電源を喪失し、非常用ジーゼル発電機の起動により安全が確保されたかに見えたが、50分後に襲った津波で頼みのジーゼル発電機まで冠水し、全ての電源を喪失した。電気も消え、メーター類も作動せず、通信もままならないなかで、原子炉の状態を把握することは未知の世界だ。水素爆発の恐怖に襲われながらパニックに陥らず、懸命に制御しようとした現場の方々の努力には頭が下がる。
電源がなければ作業も出来ず、重要な弁も開かない。電源探しに車のバッテリーを1411個もつなげたというサバイバル技術はまさに想定外だが、臨機応変に対応した技術者に喝采を捧げたい。
この事故の推移はおよそ判ったが、何故水素爆発を防げなかったのか、各炉の状態はどうなのか、これからの解明に期待したい。我ら日本人だけでなく、全世界の原発関係者が最も知りたい部分だ。
マスコミも批判するだけでなく、もっと丁寧に報告書の核心を報道してほしい。詳しくは東電ホームページから報告書の概要や本文がダウンロードできる。