GEがかの著名なウェルチ会長からイメルト新会長に代わり、経営方針を大きく変えることになった。前ウェルチ会長はメーカーであるGEで金融部門を拡大し、GEの企業価値を高めたことは有名で、GEは金融機関になるのではとさえ思えた。ところが儲け頭の金融部門は不動産投資、保険への投資がリーマンショックで大打撃、GEはデフォルト宣言をするのではとの噂も流れた。金融部門はその後の政府の支援などで立ち直ったが、イメルト会長はGEの本来のものつくりへ戻ることを決断した。発電部門では世界一の競争力を持ち、飛行機のエンジンなど高技術のものつくりで発展の道筋をつけたいと言うことだ。
昨年私が8年間事務局長を勤めた金属労協は結成50周年を迎え、世界の金属労組の代表者も記念パーティに駆けつけてくれた。世界の金属労組だけでなく繊維、鉱山などの労組を束ねる国際組織インダストリオールの会長ベルトフェルト・フーバー氏も来られ、お目に掛かることができた。彼はドイツ金属の会長も兼務されているが、彼の持論はドイツはものつくり立国で、GDPの20%以上は製造業が占めなくてはいけない。特に自動車や機械産業はドイツ経済の基本だと説く。日本の製造業のGDP比率は18%だからもっと頑張れという忠告でもあった。
最近のニュースで報道されているフォルクスワーゲン社のお家騒動だが、ピエヒ会長が永年一緒にやって来た社長とうまくなくなり、大株主であるが会長を辞したという話だ。ドイツの企業組織は独特で取締役会の上に監査役会があり、最高意思決定機関となっている。監査役会は労組・従業員代表や経営側代表、社外の中立委員などからなり、ピエヒ氏はその会長であった。監査役会では社長を支持する役員が多数を占め、会長は経営側代表として送り込んだ妻もろとも辞任した。そして会長空席を埋める人事が今後なされるが、その間副会長である前記のベルトフェルト・フーバー氏が図らずも最高責任者となってフォルクスワーゲン社の舵取りをすることになった。ドイツ金属の会長は辞しているが、国際労組組織インダストリオールの会長が世界一の生産台数を誇る自動車会社のトップとなるとは皮肉なものだ。持論のものつくり重視をフォルクスワーゲン社をとおして貫くことは間違いない。