先日の勤労統計によると、15年通年の実質賃金は0.9%減で、4年連続の減少となった。年間でもCPIの上昇が名目賃金の伸びを上回った。ボーナス月であり家計で最も重要な12月を見ても実質賃金は、現金給与総額から物価変動の影響を除いた実質賃金指数は前年同月比0.1%減となり、2カ月連続で減少した。名目賃金の上昇分0.1%を消費者物価指数(CPI)の伸びが上回ったことが響いた。企業業績が良いという状態でも賞与などの特別給与の減少(0.4%減)で名目賃金が伸びなかった。
これでは景気が悪くなるのが当たり前で、1月の街角景気調査でも2か月ぶりに悪化した。確かに非正規労働者が4割ぐらい占めるようになり、賃金引き上げがかつてのように行き渡らないという構造的なものもあり、安倍首相の言い訳もそこをついている。しかし、そんなことはアベノミクスが始まる前から判りきったことで、最近では同一労働同一賃金を言いだした。
しかし、背景には労働組合の構造的弱さと努力不足もある。12月に発表された労働組合の組織率は17.4%で前年より0.1%ダウンしている。パート労働者の組織率は7%、この構造的弱さをはねのける強い労働運動が今や必要だ。今春闘の要求を見ても、最も好調な業績の自動車各社労組の要求はベア3000円と前年の半分で、日本経済を考える視点が欠けている。少なくとも昨年よりベアが落ちる理由はなく、好調産業が自粛すればどうなるのか、これでは今春闘も期待できない。企業別組合という弱点を克服し、非正規社員の賃金引き上げをになうという意気込みが求められている。