政府は昨年12月21日、原子力関係閣僚会議を開き、日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の廃炉を正式に決めた。もんじゅには約1兆円の予算が投じられたが、運転ミスや点検漏れ等トラブルが相次、重大事故としては冷却剤の金属ナトリウム漏れや火災発生などで再稼働を断念した。
2010年に運転再稼働の動きもあったが、当時2月11日のブログで「高速増殖炉は使う燃料がそれ以上の量の燃料を生み出しながら発電をするというまさに夢の原子炉で、SFの世界では宇宙の惑星で人間が死滅しても高速増殖炉は動いて発電をしているという話があった。しかし、もんじゅは14年前の事故でもあったように極めて危険で難しい原子炉だ。もちろん世界で実験炉でも動いている実績はない。全くの未知への道へ乗り出そうとしている。原子炉技術の先進国フランスでは高速増殖炉に国運をかけ、フェニック炉、スーパーフェニックス炉を開発したがもんじゅと同じ冷却用金属ナトリウム漏れがおき火災事故が発生した。リヨンからスイス国境に近い同サイトを運転停止中に訪問したが冷却水に替わる金属ナトリウムの扱いにくさと危険性に強い印象を持った。その後フランス政府は検討した結果、フェニックスの巨大な施設と計画を放棄せざるを得なかった」と運転再開に疑問を呈した。
事故の関係者が二人も自殺しており、今回の政府の決定は当然で遅かったくらいだ。民間の企業だったらやめる決断をもっと早くしていただろう。運転操作員の未熟という問題もあったが現代の技術ではシステムそのものが維持できないし高速増殖炉というのはSFの世界だ。政府はエネルギー資源を有効活用する「核燃料サイクル」政策を維持するため、もんじゅよりも実用化段階に近くなる「実証炉」の開発に踏み出す方向性を打ち出しているが、原型炉も失敗したのに実証炉とは??これは悪あがきだ。
1970年、超音速旅客機コンコルドというのが開発され、実用化し、私もヒースロー空港で見たときはその姿の美しさに見とれた。しかし、騒音と運賃の高さで評判をおとし、最期は墜落事故を起こし、人間の技術の限界を知ることになった。今では歴史上の遺物になっている。技術発展は人類に夢を与えるが、危険で加害性が判ったら諦める勇気が必要だ。