内閣府は25日の経済財政諮問会議で、中長期の財政試算を示した。黒字化をめざす2020年度の国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)は8.3兆円の赤字を見込んだ。16年度の税収が円高などで落ち込んだことで想定が狂い、赤字は昨年7月の前回試算より2.8兆円膨らんだ。高い成長を想定し、19年10月の消費増税を織り込んでも財政健全化目標の実現は難しさを増している。赤字解消へ追加策が必要になる。との報道。
この試算はあくまでも成長戦略が奏功し、GDPが実質で2%以上、名目で3%以上になると想定し、かつGDPの推計方法を変え、底上げして名目GDPを20年度に600兆円、24年度に700兆円に拡大するとしものだ。そして安倍首相は財政再建よりも経済成長に重きを置き、施政方針演説では20年度の黒字化に触れなかった。「基礎的財政収支の黒字化が重要なのではなく、債務残高がGDP比で一定の範囲内に収まってさえいればよい」として追求をかわしている。
収支改善が遅れる主因は税収減で、16年度の税収見通しは円高で法人税収が落ち込み、当初57.6兆円と見積もったが55.9兆円に下振れした。また将来の年金不安などを背景に、消費を控える動きに改善が見られず、所得税や消費税が伸び悩むと想定している。16年の物価が0.1%減、賃金が1.1%減となったため、早速17年度の年金受取額は0.1%減と発表した。月々227円しか減らないのだが、年金生活者の消費心理を冷やしている。当初から2%インフレを狙ったアベノミクスの結果はデフレ傾向に拍車を賭けることになる。今や消費の頼みの綱はインバウンド消費になってしまった。安倍首相は春闘に期待を又掛けるわけだが16年の結果を見ても判るように、4割近く非正規社員が増加し、全体の賃金を底上げするのは容易ではない。消費者も65歳以上の割合が増え、個人消費に大きな影響を与える。昨日の会合でも口々に年金が減るネェと挨拶替わりだ。