厚生労働省が6日発表した2016年の毎月勤労統計調査(速報値)によると、物価変動の影響を除いた16年通年の実質賃金は前年から0.7%増えた。ほんの僅かだが、長い低迷からぬけて5年ぶりのプラスとなる。名目賃金にあたる現金給与総額が0.5%増と3年連続で増え、原油安や円高で物価が下がった要因も寄与した。
消費者物価指数が15年に比べ0.2%下落し、実質賃金の伸びが名目賃金を上回るデフレ局面に特徴的な「名実逆転」が11年以来、5年ぶりでおきて、デフレ脱却とまでは言えない。ただ、時間外手当に相当する所定外給与は-1.6%と減少した中で現金給与総額は0.5%伸びており、今後更に時間外労働が減少すると予想されるので、基本給を示す所定内給与の伸びが期待される。
現在、時間外労働に対応する所定外給与は所定内給与の約10%(全産業平均)ぐらいで、時間外労働が減少すれば名目賃金に大きく影響する。政労使で構成されてる労働改革会議で提案されてる時間外規制を掛けるとなると、今春闘では生産性を上げて時間外労働を減少させ、その減少分をベアにまわすという議論が必要だろう。今年は石油の値段が不透明で物価の見通しが難しいが、1%ぐらいの上昇を前提に3%程度のベアが望ましい。
それが実現できれば、長年の課題だった最低賃金1000円への道も開けてこよう。肝心の消費は消費税導入以来の低迷からぬけていないが、家計調査で見れば、勤労者所帯では昨年12月、名目で2.6%、実質で2.2%増えており、ようやく明るい兆しが見えてきた。但し政府の政策が邪魔をしないことが条件だ。