カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

骨董品に関する物語・19世紀フランスで作られた古いカードゲーム"piquet"「ピケ」用のセット

2024-08-11 22:12:04 | 突発お題

 昔の日本には士農工商という概念があって支配階級の侍、米を作る農民、物を作る職人、売る商人の順に偉いとされていた。対する欧州ではトランプに戦う騎士、祈る聖職者、儲ける商人、耕す農民が描かれていたが、貨幣経済の発達によって結局は東西どちらの文化圏でも商人が最大の権力を有するに至った。
コメント

骨董品に関する物語・ルルドの巡礼記念のブックマーク兼ペーパーナイフ

2024-06-27 20:38:01 | 突発お題
 
 巡礼地で購入した鍔のない剣を思わせる形をした栞は実際にペーパーナイフとして使う事が出来た。そして結果的に刃の付いていない刀身で相手を刻むような物言いをしてくる彼女との縁を断ち切る手助けをしてくれた。彼女は今でも己の鍔のない剣を鞘に納められぬままでいるのだろうか。
コメント

骨董品に関する物語・オダマキのブックマーク兼ペーパーナイフ

2024-06-27 20:35:00 | 突発お題

 奇跡の泉の巡礼から戻った彼からの土産は可憐な花の意匠をあしらったペーパーナイフだった。実は栞にもなるのだと自慢気に教えてくれた彼とはその年に別れる事になったが、彼との縁が切れた今でもそのペーパーナイフは栞として本から私の記憶が消えてしまわないように扶けてくれる。
コメント

骨董品に関する物語・ヴォルカナイトのモーニングペンダント

2024-06-27 20:32:46 | 突発お題

 もう二度と目覚めない彼女の寝姿を写したペンダントヘッドを掌の上に乗せ、わたしは彼女が病床で遺した言葉を独りで噛みしめる。貴方は最期まで私を見てくれなかったと呟いてから瞼を閉じた彼女は、これからも生前と全く同じように、わたしから目を背けたまま存在していくのだろう。
コメント

骨董品に関する物語・アメジスト付きのメカニカルペンシル

2024-04-23 19:44:42 | 突発お題

 究極の書味を求めて際限なく筆記具の蒐集を続ける友人が、今度はとうとう骨董品にまで手を出した。もはや行き着く処まで逝ってしまった感に意見を差し挟む気にもなれないでいると、今度は一切の蒐集を止め今までのコレクションも手放してしまった。何でも彼女が嫉妬するのだとか。
コメント

骨董品に関する物語・イギリス製の擬似餌

2024-04-23 19:43:08 | 突発お題

 龍が潜むと言われる淵で疑似餌釣りをしていたら大きめの蜥蜴を引っ掛けた。回収してみると実は龍の幼体で文句を言われたが、そもそも何で龍が疑似餌に引っ掛かったのかと問うと、この辺では見ない珍しい虫だったからと言い訳される。とにかく親龍が来る前に疑似餌を渡して退散した。
コメント

骨董品に関する物語・ボヘミアンガラスのボンボニエール

2024-04-23 19:41:49 | 突発お題

 この黄金の森は嘗て本当に存在していたのだと祖父は僕に語って聞かせた。鹿の王が支配する奥深い森は森に生きるものと訪れるものに恵みと死をもたらす優しく無慈悲な存在であり、この器は森の欠片を基に作り出されたのだと。だからこの器に収められた菓子には森の香りが宿るのだと。
コメント

骨董品に関する物語・本物の貝殻を使った小物入れ

2024-04-23 19:40:22 | 突発お題

 蛤のような二枚貝の殻は、どれほど同じような大きさや型をしていようと決して対になるもの以外とぴったり重なり合うことはないと、彼は丁寧な動作で眼前の二枚貝で出来た小物入れの蓋を開いた。そして微笑みながら、之からもずっと離れる事なく一緒にいるねと呟いてから蓋を閉じる。
コメント

骨董品に関する物語・聖人像、メダイ、フィギュア、フェーブ、クロモスカードなど

2024-04-23 19:38:55 | 突発お題

 人間は往々にして規定額に収まる品物の等価交換より、リスクを含んだ想定外の品物売買に魅力を感じるものだ。それを天使の導きと取るか悪魔の誘惑と取るかは人と場合によるが、生涯で一度も天使の導きも悪魔の囁きも体感したことのない人生は、恐らく不幸であると言わざるを得ない。
コメント

骨董品に関する物語・デスカードと写真のセット

2024-04-23 19:37:16 | 突発お題

 遺されたものは人生を終えた愛する人が確かに存在していた証として墓標を建て、記憶を残そうと絵姿を保存する。やがて絵姿を遺したものがこの世を去り、僅かな記述以外は語られることなく失われた物語を隠した絵姿だけがこの世に遺され、やがて全く異なる物語を生み出していくのだ。
コメント