カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

骨董品に関する物語・銅板手彩色の植物図版

2025-02-13 20:04:23 | 突発お題

 帰らない船を待ちながら涙を流し続けた娘の青い瞳は、やがて同じ色の花となったと話してくれた叔母は、青い花は悲しみの象徴であり、それ故に薔薇たちは様々な色彩を纏う際に決して青だけは選ばなかったのだと続けた。なら青い薔薇に焦がれ追い求めてきた人々が最後に手にするのも悲しみとなるのだろうか。
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骨董品に関する物語・エングレーヴィングが施されたデキャンタ

2025-02-13 20:01:04 | 突発お題

 容器に納めた物質、例えば瓶の中身を変容させるのは錬金術の基本だ。具体的には厳選した素材で製錬された容器を用途から導き出される術式を刻んで完成させるのだが、残念ながら未だに水をワインに変容させる術式は発見されておらず、せいぜい葡萄の搾り汁を酒に変えるのが精一杯だ。
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骨董品に関する物語・"LE REPAS DE SATAN"「サタンの食事」という玩具

2025-02-13 19:58:20 | 突発お題

 地獄の魔王も人間に掛かれば道化のような姿を晒しながら子供に弄ばれる存在だと古い玩具を示す僕に対して、奴は、本当の意味で平和な世界とは民が為政者の悪口を言っても罰せられない世界を言うが、現在に至るまでの歴史で、そんな期間がどれだけ続いたやらと言って意味深に笑う。 
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骨董品に関する物語・銀の拡大鏡

2025-02-13 19:54:48 | 突発お題
 歳を取ると細かい字が読み辛くなるとぼやいた私に、店主は柄に精緻な細工が入った拡大鏡を幾つか取り出して来て、正直者と嘘つきのどちらが良いかと尋ねてくる。正直者は正確だが冷酷に、嘘つきは優しい虚偽を浮かび上がらせ伝えてくる、もちろん真実はお客さん次第だと。私は普通の拡大鏡を選んだ。
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骨董品に関する物語・19世紀フランスで作られた古いカードゲーム"piquet"「ピケ」用のセット

2024-08-11 22:12:04 | 突発お題

 昔の日本には士農工商という概念があって支配階級の侍、米を作る農民、物を作る職人、売る商人の順に偉いとされていた。対する欧州ではトランプに戦う騎士、祈る聖職者、儲ける商人、耕す農民が描かれていたが、貨幣経済の発達によって結局は東西どちらの文化圏でも商人が最大の権力を有するに至った。
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骨董品に関する物語・ルルドの巡礼記念のブックマーク兼ペーパーナイフ

2024-06-27 20:38:01 | 突発お題
 
 巡礼地で購入した鍔のない剣を思わせる形をした栞は実際にペーパーナイフとして使う事が出来た。そして結果的に刃の付いていない刀身で相手を刻むような物言いをしてくる彼女との縁を断ち切る手助けをしてくれた。彼女は今でも己の鍔のない剣を鞘に納められぬままでいるのだろうか。
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骨董品に関する物語・オダマキのブックマーク兼ペーパーナイフ

2024-06-27 20:35:00 | 突発お題

 奇跡の泉の巡礼から戻った彼からの土産は可憐な花の意匠をあしらったペーパーナイフだった。実は栞にもなるのだと自慢気に教えてくれた彼とはその年に別れる事になったが、彼との縁が切れた今でもそのペーパーナイフは栞として本から私の記憶が消えてしまわないように扶けてくれる。
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骨董品に関する物語・ヴォルカナイトのモーニングペンダント

2024-06-27 20:32:46 | 突発お題

 もう二度と目覚めない彼女の寝姿を写したペンダントヘッドを掌の上に乗せ、わたしは彼女が病床で遺した言葉を独りで噛みしめる。貴方は最期まで私を見てくれなかったと呟いてから瞼を閉じた彼女は、これからも生前と全く同じように、わたしから目を背けたまま存在していくのだろう。
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骨董品に関する物語・アメジスト付きのメカニカルペンシル

2024-04-23 19:44:42 | 突発お題

 究極の書味を求めて際限なく筆記具の蒐集を続ける友人が、今度はとうとう骨董品にまで手を出した。もはや行き着く処まで逝ってしまった感に意見を差し挟む気にもなれないでいると、今度は一切の蒐集を止め今までのコレクションも手放してしまった。何でも彼女が嫉妬するのだとか。
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骨董品に関する物語・イギリス製の擬似餌

2024-04-23 19:43:08 | 突発お題

 龍が潜むと言われる淵で疑似餌釣りをしていたら大きめの蜥蜴を引っ掛けた。回収してみると実は龍の幼体で文句を言われたが、そもそも何で龍が疑似餌に引っ掛かったのかと問うと、この辺では見ない珍しい虫だったからと言い訳される。とにかく親龍が来る前に疑似餌を渡して退散した。
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