カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

松高の、三羽烏が往く道は・序章の語り

2016-04-24 23:54:50 | 松高の、三羽烏が往く道は
 さてお立ち会い、これより始まる今は昔の物語。

 昔と言っても、チョンマゲを結って腰に大小を手挟んだお侍が通りを闊歩していたほど昔ではございません。御維新が終わり、明治の御代に始まった文明開化が爛熟期を迎え、日本がロマンとデモクラシーに満ちあふれた大正時代の話でございますから、平成も早三十年を迎えようとしている現在からは百年ほど昔の事でございましょうか。
 そして処は信州、戦国時代から残る名城である松本城下の街、つまりは松本市でございます。六万石には過ぎたる名城なんて揶揄されることもあるようですが、黒い堅固な五重天守と小天守、更に二つの櫓を有する風格ある姿は今も昔も松本で暮らす人々の誇りと言えましょう。
 さてこの松本城から駅に通じる大通りに出て暫し東に真っ直ぐ進むと見えてくるのが県(あがた)の森、現在は疎林の中に図書館や記念館、それに水の流れる小さな公園を有する市民の憩いの場と化しておりますが、実は此処こそ、この物語の主なる舞台となる旧制高等学校、当時は松本高等学校と呼ばれていた学舎が存在していた場所なのでございます。
 これで舞台は整いました。後は役者の登場によって物語の幕開けと相成ります。
 
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