いつものように公園でジャグリングの練習をしていたら、いつの間にか訳の分からない空間に移動していて、そこにいた女の子がさも当然のようにボクに芸を要求してきた。取りあえずジャグリングをやって見せると散々な駄目出しを食らい、悔しいので駄目出しされた部分を丁寧に潰していったら、やがてマシになったと言われ、気がつくと元の場所に戻っていて既に日が暮れていた。あの子が何者なのかは判らないが、きっと淋しかったのだろう。
器物破損常習者の研究者と金髪碧眼の幼子、彼らの「初恋」の物語
普段は非常に優秀だが、苛々すると周囲のモノに当たり散らすという悪癖を持つ研究員の度重なる破壊活動に疲れはてたスタッフが、思いあまって熊のぬいぐるみを身代わりに渡すと、意外に気に入ったのかそれから常に持ち歩いてストレス解消用アイテムにするようになった。そんなある日、いつものように投げ飛ばしたぬいぐるみが研究員の家族、まだ八歳になったばかりの可愛らしい女の子の前に飛んで行き、結果として碌でもない年の差ロマンスが生まれた。
普段は非常に優秀だが、苛々すると周囲のモノに当たり散らすという悪癖を持つ研究員の度重なる破壊活動に疲れはてたスタッフが、思いあまって熊のぬいぐるみを身代わりに渡すと、意外に気に入ったのかそれから常に持ち歩いてストレス解消用アイテムにするようになった。そんなある日、いつものように投げ飛ばしたぬいぐるみが研究員の家族、まだ八歳になったばかりの可愛らしい女の子の前に飛んで行き、結果として碌でもない年の差ロマンスが生まれた。
自分に自信のない悪女と迷子の女性との優しい嘘の物語
地味でつまらない私からすれば貴女は憧れなのよと、彼女はいつだって笑顔で言った。だからいつまでも貴女のままでいて欲しいと言う言葉を信じて奔放に生きて来たら、私の側にはいつの間にか彼女以外の姿が消えていた。それでも彼女は笑顔のままで、だから私はそれがさんざん私に傷付けられた彼女の復讐なのだと気付かなかった。
地味でつまらない私からすれば貴女は憧れなのよと、彼女はいつだって笑顔で言った。だからいつまでも貴女のままでいて欲しいと言う言葉を信じて奔放に生きて来たら、私の側にはいつの間にか彼女以外の姿が消えていた。それでも彼女は笑顔のままで、だから私はそれがさんざん私に傷付けられた彼女の復讐なのだと気付かなかった。
対人恐怖症の演出家と遠慮がちにその人を慕う少年が、不可能を可能にねじ曲げようとする話
演出家の先輩が企画した姉の結婚式は、軽妙な司会トークと流れるような進行で演目が進み、参加者の全員が満足する最高の仕上がりとなったが、それ以降は誰にどれだけ頼まれても結婚式を企画する事はなかった。恐らくは先輩が僕の姉を友人とは違う意味で慕っていたと知る僕だけが、その本当の理由を知っている。
演出家の先輩が企画した姉の結婚式は、軽妙な司会トークと流れるような進行で演目が進み、参加者の全員が満足する最高の仕上がりとなったが、それ以降は誰にどれだけ頼まれても結婚式を企画する事はなかった。恐らくは先輩が僕の姉を友人とは違う意味で慕っていたと知る僕だけが、その本当の理由を知っている。
嘘吐きな占い師と方向性を間違ったアーティストとの扉越しの物語
売れないミュージシャンが街角の占い師に貴方は成功しますと断言され、気を良くした状態でオーディションに臨んだら仕事を貰えて売れっ子になれた。やがて飽きられ、引退後に帰郷して普通の家庭に収まった今、結局の所、確かに自分は成功したのだと思えるようになった時、占い師は既に彼に掛けた言葉を忘れていた。
売れないミュージシャンが街角の占い師に貴方は成功しますと断言され、気を良くした状態でオーディションに臨んだら仕事を貰えて売れっ子になれた。やがて飽きられ、引退後に帰郷して普通の家庭に収まった今、結局の所、確かに自分は成功したのだと思えるようになった時、占い師は既に彼に掛けた言葉を忘れていた。
恥ずかしがり屋の子どもと独裁主義の大家さんと、出所不明の「血塗れた札束」の話
元々から人の住んでいなかったボロ家を借りた時、汚したら弁済して貰いますからねと言われて以来苦手な大家だったが、僕はそれでも連日連夜に浮かび上がる人影と出所不明の怪音に悩んだ挙げ句、「子供の幽霊が出る」と苦情を入れる事にした。
そんな筈はないと息巻いた大家によって隅々まで引っくり返された家の床下からは、結局血塗れの札束と誘拐されと閉じ込められ、死にかけた子供が発見されて大騒ぎになった。
どうやらうちを廃屋と思って勝手に利用していた誘拐犯には色々と何かがあったようだが、とにかく子供は無事に家に帰った。
元々から人の住んでいなかったボロ家を借りた時、汚したら弁済して貰いますからねと言われて以来苦手な大家だったが、僕はそれでも連日連夜に浮かび上がる人影と出所不明の怪音に悩んだ挙げ句、「子供の幽霊が出る」と苦情を入れる事にした。
そんな筈はないと息巻いた大家によって隅々まで引っくり返された家の床下からは、結局血塗れの札束と誘拐されと閉じ込められ、死にかけた子供が発見されて大騒ぎになった。
どうやらうちを廃屋と思って勝手に利用していた誘拐犯には色々と何かがあったようだが、とにかく子供は無事に家に帰った。
数年後の未来から来た電波少女と華やかすぎる外見をした漫画家との7日間の話
「美しすぎる」が枕詞と言われる程の美貌を持つ漫画家の元に、ある日ファンだと名乗る少女がやって来て貴女を守りますと宣言した。確かに彼女は最近、不審者に付きまとわれていたが、他人を巻き込む訳にはいかないと断っても少女は聞かなかった。やがて不審者は自分のものにならない彼女に刃物を向けたが、結局、刺されたのは兄の凶行を止めに来た少女だった。
「美しすぎる」が枕詞と言われる程の美貌を持つ漫画家の元に、ある日ファンだと名乗る少女がやって来て貴女を守りますと宣言した。確かに彼女は最近、不審者に付きまとわれていたが、他人を巻き込む訳にはいかないと断っても少女は聞かなかった。やがて不審者は自分のものにならない彼女に刃物を向けたが、結局、刺されたのは兄の凶行を止めに来た少女だった。
前世を覚えているベビーシッターと血の繋がりのない弟のどちらかが、誰かのヒーローになるまでの話
僕の義兄さんは子供好きが高じて職業にベビーシッターを選択した人ようなだが、端から見ていても子供のあしらいが尋常でない程に上手い。特にぐずる赤ん坊に何かを囁きかけると、ほぼ確実に機嫌が良くなるのが不思議で、ある日思い切って一体どうやっているのかと尋ねると、赤ん坊の前世を少し色を付けて話して聞かせていると答えが返って来た。
僕の義兄さんは子供好きが高じて職業にベビーシッターを選択した人ようなだが、端から見ていても子供のあしらいが尋常でない程に上手い。特にぐずる赤ん坊に何かを囁きかけると、ほぼ確実に機嫌が良くなるのが不思議で、ある日思い切って一体どうやっているのかと尋ねると、赤ん坊の前世を少し色を付けて話して聞かせていると答えが返って来た。