カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

骨董品に関する物語・オパールセントガラスの大皿・その2

2020-07-17 23:41:15 | 突発お題

 瑞々しい果実が載せられた薔薇模様の硝子器を前に、これは嫁入り道具の一つだと母は言った。元は五枚組だったものが一枚だけになったのは、まあ色々あったからだと。そして現在の生活を繋ぎ止めているこの器が様々に表情を変えている間は、何とか世界がそういうものだと納得できるそうだ。
 それなら、この最後に残った硝子器が砕け散った時に母がどうするのかについては、出来るだけ考えないことに決めた。
コメント

骨董品に関する物語・オパールセントガラスの大皿・その1

2020-07-17 23:32:43 | 突発お題

 角度によって様々な色と光が浮き上がるこの器には、別の世界が封じ込められているのだと母は言った。
 こんな風に、こちらからは様子を窺う事しか出来ず、触れ合うことも出来ない空間を大事にしなさい、もしも砕けたら誰かの世界が終わってしまうのだからと。
 あの時母が言ったのは、本当に硝子の器の事だったのだろうか。

コメント