義兄は私の母に毒を盛られていた時期があると言う。確かに幼い頃に体が弱かった義兄は毎晩薬を飲んでいた筈だが、実はその薬をこっそり、母に取り上げられた祖母の形見の器に酒と一緒に混ぜておいたのだそうだ。やがて義兄は健康になり母は亡くなったが、今度は私の番なのだろうか。
義兄は私の母に毒を盛られていた時期があると言う。確かに幼い頃に体が弱かった義兄は毎晩薬を飲んでいた筈だが、実はその薬をこっそり、母に取り上げられた祖母の形見の器に酒と一緒に混ぜておいたのだそうだ。やがて義兄は健康になり母は亡くなったが、今度は私の番なのだろうか。
母は豪華な装丁の箱入り祈祷書をとても大事にしていて、年に数度決まった日に箱から取り出して丁寧に頁をめくっていた。それは祈祷書の寿命を使い切ってしまわない為だと言っていたが、それ故に私は形見として残された祈祷書の寿命を私が使い切る事を恐れて手放すことを決めた。