カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

乱れ染めにし

2016-04-18 00:12:33 | 依頼です、物書きさん。
 天才少年と呼ばれる彼は、それ故に幼い身でありながら余人の理解出来ない苦悩を薬で抑えなければいけなかった。だから私は薬を処方する傍ら彼がなるべくストレスを感じない環境で暮らせるように、具体的にはリアルタイムの情報からほぼ遮断してみた。やがて彼は世界と上手くやっていく方法を見付けたと言って退院していったが、今は元気に暮らしているらしい。
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ある午後の出来事

2016-04-17 23:37:30 | 依頼です、物書きさん。
 どうでもいいような理由で死のうと決心して、公園でフリーフォールの練習をしていたバスケ少年の連続シュート回数で死に方を決めようとしたのに全く入る気配がない。頭に来たので少年からボールを奪ってシュートを決めたら尊敬のまなざしと共に指導を乞われ、仕方なく教えているうちに本来の目的を忘れた気がするけどまあいいか。
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再会

2016-04-17 23:35:46 | 依頼です、物書きさん。
 子供の頃に轢き逃げされ、捕まった犯人の家庭が崩壊したトラウマからどうしても免許を取れず、結局移動手段は公共の電車やバスが主となった僕も、社会人になると必要に迫られてタクシーを使う事が増えた。そんなある日、貴方が私の運転するタクシーに乗るのをずっと待っていましたと笑顔で振り向いたのは、あの日の轢き逃げ犯人だった。
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栄光なき勲章

2016-04-17 23:32:24 | 依頼です、物書きさん。
 ご主人は僕と散歩する時によく大きな駅伝で走りたいと言っていた。でも、今は選手に選ばれる程の実力が無いから地道なトレーニングを重ねるのだと。やがて大学を卒業するまでマラソン選手としての芽が出なかったご主人は、大学生最最後の春休みに僕を連れて、誰にも気付かれないまま降りしきる桜吹雪の中を駆け抜け、駅伝のコースを完走した。
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道化師の時間

2016-04-12 21:13:08 | 依頼です、物書きさん。
 いつものように公園でジャグリングの練習をしていたら、いつの間にか訳の分からない空間に移動していて、そこにいた女の子がさも当然のようにボクに芸を要求してきた。取りあえずジャグリングをやって見せると散々な駄目出しを食らい、悔しいので駄目出しされた部分を丁寧に潰していったら、やがてマシになったと言われ、気がつくと元の場所に戻っていて既に日が暮れていた。あの子が何者なのかは判らないが、きっと淋しかったのだろう。
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テディベア・シンドロ-ム

2016-04-12 21:07:05 | 依頼です、物書きさん。
器物破損常習者の研究者と金髪碧眼の幼子、彼らの「初恋」の物語

 普段は非常に優秀だが、苛々すると周囲のモノに当たり散らすという悪癖を持つ研究員の度重なる破壊活動に疲れはてたスタッフが、思いあまって熊のぬいぐるみを身代わりに渡すと、意外に気に入ったのかそれから常に持ち歩いてストレス解消用アイテムにするようになった。そんなある日、いつものように投げ飛ばしたぬいぐるみが研究員の家族、まだ八歳になったばかりの可愛らしい女の子の前に飛んで行き、結果として碌でもない年の差ロマンスが生まれた。
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甘い蜜の虜囚

2016-04-12 21:05:26 | 依頼です、物書きさん。
自分に自信のない悪女と迷子の女性との優しい嘘の物語

 地味でつまらない私からすれば貴女は憧れなのよと、彼女はいつだって笑顔で言った。だからいつまでも貴女のままでいて欲しいと言う言葉を信じて奔放に生きて来たら、私の側にはいつの間にか彼女以外の姿が消えていた。それでも彼女は笑顔のままで、だから私はそれがさんざん私に傷付けられた彼女の復讐なのだと気付かなかった。
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ガールフレンド

2016-04-12 21:03:29 | 依頼です、物書きさん。
対人恐怖症の演出家と遠慮がちにその人を慕う少年が、不可能を可能にねじ曲げようとする話

 演出家の先輩が企画した姉の結婚式は、軽妙な司会トークと流れるような進行で演目が進み、参加者の全員が満足する最高の仕上がりとなったが、それ以降は誰にどれだけ頼まれても結婚式を企画する事はなかった。恐らくは先輩が僕の姉を友人とは違う意味で慕っていたと知る僕だけが、その本当の理由を知っている。
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真実の託宣

2016-04-12 21:01:57 | 依頼です、物書きさん。
嘘吐きな占い師と方向性を間違ったアーティストとの扉越しの物語

 売れないミュージシャンが街角の占い師に貴方は成功しますと断言され、気を良くした状態でオーディションに臨んだら仕事を貰えて売れっ子になれた。やがて飽きられ、引退後に帰郷して普通の家庭に収まった今、結局の所、確かに自分は成功したのだと思えるようになった時、占い師は既に彼に掛けた言葉を忘れていた。
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廃屋の怪奇

2016-04-12 20:57:05 | 依頼です、物書きさん。
恥ずかしがり屋の子どもと独裁主義の大家さんと、出所不明の「血塗れた札束」の話

 元々から人の住んでいなかったボロ家を借りた時、汚したら弁済して貰いますからねと言われて以来苦手な大家だったが、僕はそれでも連日連夜に浮かび上がる人影と出所不明の怪音に悩んだ挙げ句、「子供の幽霊が出る」と苦情を入れる事にした。
 そんな筈はないと息巻いた大家によって隅々まで引っくり返された家の床下からは、結局血塗れの札束と誘拐されと閉じ込められ、死にかけた子供が発見されて大騒ぎになった。
 どうやらうちを廃屋と思って勝手に利用していた誘拐犯には色々と何かがあったようだが、とにかく子供は無事に家に帰った。
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