カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

とある蒐集家の棚より・鳴らない筈の鳴る電話

2017-11-16 21:17:37 | とある蒐集家の棚
たかあきは『メトロノーム』と『黒電話』に関する物語を創作してください。

 用もないのに鳴り続ける黒電話にやかましいと怒鳴ったら、反省したのか嫌がらせかは微妙だがベル音をメトロノームのリズムに替えやがった。振り子の錘が182の速度で六拍子を刻む鬱陶しさにぶち切れ、コードを引っこ抜いてやろうと思ったら完全固定型だったので、構わずペンチでぶち切ってやったら今度こそ黙った。この電話は俺が家を借りたときのは既にここにあって、回線契約もしていないのに時々繋がっていたで、もっと早くこうすれば良かった。
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とある蒐集家の棚より・幸運の六文銭

2017-11-15 21:47:24 | とある蒐集家の棚
たかあきは『皿の上のコイン』と『お守り』に関する物語を創作してください。

 幼馴染みは、結婚式のおまじないで何か古いもの、新しいもの、借りたもの、青いものを身に付け、花嫁の左の靴にコインを入れると豊かで幸せな結婚生活を送れるんだよと言って私の靴にコインを入れたが、それは英国の六ペンス硬貨ではなく紐に通した六文銭だった。
 本気で悪気がなく、純粋な好意でやっているだけ対応に困る。
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とある蒐集家の棚より・呑兵衛カラジウム

2017-11-14 20:59:40 | とある蒐集家の棚
たかあきは『観葉植物』と『ワインボトル』に関する物語を創作してください。

 秘蔵ワインの栓が開けられ、中身が半分以下に減っていたので妻の仕業かと問い詰めたら、開栓したのは確かに自分だが呑んだのは鉢植えだと言い張るばかりだった。貴様の仕業かとカラジウムに問い掛けるとワイン色に染まったハート型の葉っぱを振り、さらにお代わりまで要求してきたので、いっそ枯らしてくれようとせっせと安ワインを与えていたら、何だか逆に色艶がよくなった気がする。
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とある蒐集家の棚より・刻まれた旋律

2017-11-13 20:41:41 | とある蒐集家の棚
たかあきは『メトロノーム』と『読めない本』に関する物語を創作してください。

 その本に並ぶ今まで見たことが無いような奇妙な文字の行列には一定のリズムがあって、それを読み解ければ内容も理解で来ると言われたので、傍らにメトロノームを置いて一生懸命リズムを取ってみたのだが結局は一行たりとて読めなかった上、ひょっとしてお前は馬鹿なのかと本の持ち主に言われた。絶望的なまでに音感が無いのはともかく、馬鹿呼ばわりは心外極まりない。
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とある蒐集家の棚より・弾いて咲く花

2017-11-10 21:32:12 | とある蒐集家の棚
たかあきは『押し花』と『月琴』に関する物語を創作してください。

 この月琴で曲を弾くと、こっちの押し花が咲くんだと友人に言われ、とにかく弾いて見せろと促すと、確かに弦が弾かれる度にピンピンと弾けるように押し花が瑞々しい姿に変わっていった。やがて曲が終わると瑞々しかった花は瞬く間に元の押し花に戻ってしまったが、一体どういう原理なのかは友人にも分からないそうだ。
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とある蒐集家の棚より・「ロビーのいる宇宙船」というゲーム

2017-11-09 20:12:45 | とある蒐集家の棚
たかあきは『月の石』と『旧式ゲーム機』に関する物語を創作してください。

 昔プレイしたゲームに出て来た月は、昼になると凍っていた酸素が溶けて呼吸可能の上、食用になる植物が存在する空間で、何より印象的だったのは隕石衝突由来のダイヤが地表にたくさん転がっていると言う設定だった。なお、酸素が凍る夜までに、この月からダイヤを持って脱出するのがプレイヤーの目的となる。
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とある蒐集家の棚より・紅子さんに珈琲を

2017-11-08 19:45:07 | とある蒐集家の棚
たかあきは『空のコーヒーカップ』と『マグロのぬいぐるみ』に関する物語を創作してください。

 うちの紅子さんはマグロのぬいぐるみだが珈琲が好きらしい。何故そんなことが分かるかというと、ある日、紅子さんの脇に珈琲を淹れたカップを置いて側を離れたら、戻った時には空になっていたのだ。面白がって紅茶やミルク、ココアなどを紅子さんの脇に置いてみたが無くなるのは珈琲ばかりで何故だろうと友人に尋ねたら、好物なんだろうと言われた。

「マグロのぬいぐるみなのに?」
「ひょっとしたら、マグロのぬいぐるみの形をした『何か』かもしれんぞ」
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とある蒐集家の棚より・押し入れの黒猫

2017-11-07 20:38:18 | とある蒐集家の棚
たかあきは『猫の置物』と『旧式ゲーム機』に関する物語を創作してください。

 押し入れの中を整理していたら、旧型ゲーム機と一緒に黒猫のフィギュアが出て来た。当時嵌まっていたゲームに登場する爺臭い化け猫を友人に頼んで作ってもらったものだが、いつの間にやら勝手に香箱を組んだポーズに変わっていた。そういえば渡された時、何かあったら済まんと意味不明の謝罪を受けたが、つまりそういう事か。
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とある蒐集家の棚より・蝉の警告

2017-11-06 20:22:29 | とある蒐集家の棚
たかあきは『お守り』と『蝉の標本』に関する物語を創作してください。

 夏の終わりに拾った蝉の骸を可哀想だと言った私に、叔父さんはお前の優しい気持ちを蝉が喜んだからと標本にしてくれた。その時、もしもこの蝉が鳴いたら側にいる人間は悪い奴だから近付いてはいけないと言われ、実際に鳴き声の警告は今まで一度も外れたことがない。
 ところで今、標本を作ってくれた当の叔父さんの側にある蝉が激しく鳴いているのは何故なのだろう。
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とある蒐集家の棚より・夏の香り

2017-11-05 09:49:26 | とある蒐集家の棚
たかあきは『お香』と『蝉の標本』に関する物語を創作してください。

 ガキの頃を思い出せるぜと友人がくれたお香は、確かに爽やかでどこか懐かしい香りがした。
 焚く度にジイジイと部屋から異音が聞こえてくるのが少しばかり不気味だったが、ある日、異音の出所が棚に飾った蝉の標本からだと気付いた俺は、それ以来、夜更けに香を焚きながら一人ウイスキーグラスを傾け、二度と還らない夏を偲ぶ。
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