カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

とある蒐集家の棚より・予言の書

2018-01-16 23:27:46 | とある蒐集家の棚
たかあきは『読めない本』と『テレホンカード』に関する物語を創作してください。

 何の気なしに古本屋で買った本は、何故かカバーと本の内容が違っていて、恋愛小説と思ったら平凡な学生が非日常に引きずり込まれていくサスペンスものだった。結構面白かったが、そのうちに僕の現実と本の内容が妙にリンクするようになって来たので、最初から入っていた呪言のような文句が書かれた栞代わりのテレホンカードを挟んだまま、別の古本屋に売り払った。
コメント

とある蒐集家の棚より・海のファンタジーと現実

2018-01-15 21:38:16 | とある蒐集家の棚
たかあきは『方位磁針』と『白い貝殻』に関する物語を創作してください。

 航海士だった曾祖父から貰った古いコンパスは、壊れているのかまともな方角も指さずに針がゆらゆら揺れる。が、たまにぐいぐいと一方向を指し示す時があるので道程を辿ると町外れの砂浜に導かれ、綺麗な貝殻の前でぴたりと止まった。なかなかの審美眼だと思うが、磁石の誇りに賭けて、今度は是非貴金属を探り当てて欲しい。
コメント

とある蒐集家の棚より・彼方の物語

2018-01-13 11:36:45 | とある蒐集家の棚
たかあきは『星の砂』と『あの日の写真』に関する物語を創作してください。

 子供の頃、数人の友達と一緒に海遊館に遊びに行ったことがある。皆でお揃いだと言って買った星の砂が入ったガラス瓶を手に一緒に並んだ笑顔の写真に私の姿がないのは、ちょうどガラス瓶が一人分足りなかったのと、私だけがずっと皆の写真を撮っていたからだ。あの頃は私を含めて誰一人として、それが不自然なことだなんと思いもしなかった。
コメント

とある蒐集家の棚より・喰わせろ

2018-01-11 20:48:59 | とある蒐集家の棚
たかあきは『猫の置物』と『魚の化石』に関する物語を創作してください。

 猫の置物と魚の化石を並べておいたら明らかに魚の化石が目減りしてきたので、面白がって隣にキャットフードを置いてみたら魚の目減りが止まった。そりゃ、確かに石になった魚よりはキャットフードのほうが猫も嬉しいのだろうが、今度は食べやすいキャットフードの消費量が深刻なことになってしまった。
コメント

とある蒐集家の棚より・警告音

2018-01-10 22:14:26 | とある蒐集家の棚
たかあきは『月琴』と『お守り』に関する物語を創作してください。

 友達が意地悪で遊んでくれなくなったと泣いていた私に、いとこのお兄さんは自分の部屋にあった月琴を弾いて、私に悪い心を持った相手が近付いたらこの曲が聞こえるようになったよと言った。それは本当で、以来、私は人に会うとたまに耳の奥で月琴の音色が響くようになったが、残念ながら警告に従わないまま相手を好きになり、酷い目に遭う毎日だ。
コメント

とある蒐集家の棚より・星の界

2018-01-09 22:26:48 | とある蒐集家の棚
たかあきは『金属製のハンドベル』と『星座盤』に関する物語を創作してください。

 叔父さんは自分の持つ古びた星座盤を楽譜だと言う。星座盤を見ながら金属製のハンドベルを鳴らして、これは春の星空、これは秋の星座の曲だと断言する。音階も何もない出鱈目なリズムは、それでも何故か満天の星空を連想させる音色を響かせるのだが、星座盤の音階を読めない僕にはどうしても同じ音色を鳴らせないのだ。
コメント

とある蒐集家の棚より・誰か故郷を想はざる

2018-01-06 17:22:48 | とある蒐集家の棚
たかあきは『観葉植物』と『方位磁針』に関する物語を創作してください。

貿易商の叔父さんが南の島から帰って来た時のお土産は、見たことも無い綺麗な植物だった。喜んで育てたが、温室に置いたその植物はどんな置き方をしても必ず南の方角に枝葉を向け、やがて咲かせた一輪だけの花が結実するとすぐ枯れてしまった。だから、僕はその種をいつか故郷の島に持ち帰り、植えてやりたいと思っている。
コメント

とある蒐集家の棚より・枯れない花と枯れた庭

2018-01-05 21:24:00 | とある蒐集家の棚
たかあきは『旧式ゲーム機』と『観葉植物』に関する物語を創作してください。

 大掃除中、ずっと昔に遊んでいた植物を育てて庭を造るゲームを見付けたので、掃除が終わってから久し振りにデータを開いてみた。エンディング直前の庭は色とりどりの花やハーブ、果樹で埋め尽くされた楽園が当時のまま保存されていて、忙しさにかまけて現実の庭を枯らしてしまったまま放置している私の胸を締め付けた。
コメント

とある蒐集家の棚より・猫座流星群

2018-01-04 17:38:02 | とある蒐集家の棚
たかあきは『星座盤』と『猫の置物』に関する物語を創作してください。

 僕が持っている古い星座盤には、何故か猫座が記されている。一体どんな物好きがこんな星座盤を作ったのかと思ったら、ジュローム・ラランドととか言う有名な天文学者の提唱で、一時期だが本当に猫座は存在していたらしい。恐らくはその記念に作られたらしい立派な星座盤を眺めながら、僕は天空に浮かぶ巨大な猫が流星を追って遊び回る姿を思う。
コメント

とある蒐集家の棚より・初夢アンモナイト

2018-01-03 17:49:29 | とある蒐集家の棚
たかあきは『お香』と『アンモナイトの標本』に関する物語を創作してください。

 アンモナイトの標本を細かく砕いて塩と混ぜ合わせ、秘密の薬草と一緒に焚くと原始の海が体感できるというので試してみたが、使った塩がヒマラヤの岩塩だったせいか、海底だった場所が山脈へと変化する過程の凄まじい地殻変動を伴った一大スペクタクル巨編を幻視してしまって、新年早々非常に疲れた。
コメント