カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

作品その15・多分ケットシー

2018-08-17 10:00:59 | 見習い錬金術師の作品
たかあきは『鋼玉』と『飛魚の翼』を材料に『きみを思う猫灯』を錬成しました。用途は観賞用です。

 同じ注文が続いた疲労のせいか、あるいは触媒に問題があったのか、僕が何度目かに錬成した猫灯は海のように青い毛並みを持ち、更に羽根付きという珍妙な姿をしていた。師匠は大笑いしながらそれを売りに行き、依頼主に対して希少品だと言い張りつつ結構な金額を吹っかけ、無事に商談を成立させたそうだ。
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作品その14・誘う猫

2018-08-16 13:43:35 | 見習い錬金術師の作品
たかあきは『煉瓦』と『絞りたて金山羊ミルク』を材料に『可愛い猫灯』を錬成しました。用途は体力回復です。

 遺跡から出土した煉瓦片を主な材料に錬成した猫は、ミルクを燃料に淡く輝き、可愛らしい鳴き声を上げながら主人の足元を照らしてくれる人気商品だ。この猫と共に散歩を続けていると沈みがちだった気分が晴れやかになって体力も付いたと皆口を揃えて言うが、それは単に散歩の成果ではないかと僕などは思うのだった。
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作品その13・分裂する用途

2018-08-15 19:07:31 | 見習い錬金術師の作品
たかあきは『月長石』と『虹孔雀の舌』を材料に『限りなき幽霊の素』を錬成しました。用途は戦闘用です。

 月光の結晶と虹色に輝く羽を持つ鳥の舌を錬成した薬を使うと、しばらくの間は使用者の輪郭が周囲からブレて見えたり、場合によってはまるで分身したように見えたりする。手品にしか使えませんねと僕が笑うと、師匠も笑ってどこかに売りに行く。
 ただ、その笑顔が、いつもの師匠よりも暗い気がするのは何故だろう。
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作品その12・奏でる傘

2018-08-14 12:44:05 | 見習い錬金術師の作品
たかあきは『碧玉』と『飛魚の翼』を材料に『雨粒の自動演奏楽器』を錬成しました。用途は謎です。

 師匠はたまに、若気の至りだったと笑いながら自分が錬成した作品を見せてくれることがある。透き通るように広がる碧い皮膜をごく細い骨が放射状に枝分かれしながら支えている不思議なデザインの傘は雨よけではなく楽器で、天から降る雨粒を受けると、二度とは聴けない妙なる音階を紡ぎ出すのだそうだ。
 ただ、音楽に聞き惚れて長時間雨の中を立ち尽くしたせいで風邪をこじらせて以来は使っていないと、師匠は笑う。
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作品その11・大地の力

2018-08-13 22:07:10 | 見習い錬金術師の作品
たかあきは『石榴石』と『三つ首獣の牙』を材料に『大地の結晶精霊』を錬成しました。用途は滋養強壮です。

 鮮血を思わせる赤い石と、かつて地上に君臨していたという三つ首獣の牙は、どちらも強力な大地の属性を有するので、錬成材料に使うと、うまくすれば小精霊レベルの強力な結晶体が出来上がる。生命力を根本から活性化させるこの結晶は、とある富豪が体の弱い妻の寝室に設置するため錬成を依頼してきたのだと師匠は言った。
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作品その10・恋人たちの甘い時間

2018-08-10 15:56:27 | 見習い錬金術師の作品
たかあきは『蛍石』と『雑草』を材料に『恋人の為の妖怪時計』を錬成しました。用途は飲用です。

 師匠は時に、他人から見れば非常に些細でくだらない依頼を受ける時がある。例えば、恋愛したての若い二人が語り合う時間があまりに短いという場合、極めて安価な錬成物質で体感時間を普通よりも遅くできる薬を渡したりする。礼を言って帰った客の姿が見えなくなると、決まって、どうせ楽しいのは今だけだと揶揄する師匠の口調は、そんな時とても苦い。
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作品その9・紛い賢者の石

2018-08-09 19:01:01 | 見習い錬金術師の作品
たかあきは『偽賢者の石』と『純度の高い夢結晶』を材料に『氷結の妖精球』を錬成しました。用途は滋養強壮です。

 賢者の石は錬金術師が錬成しうる究極の物質だが、師匠が言うには、そもそも真の賢者の石がどういうものなのかは誰も知らないのだそうだ。ただ、紛い物でも錬成媒体としては極めて優秀な効果を発揮するので、購入するとかなり高価だが、どこで用意するのか師匠は気軽に偽賢者の石を僕の錬成に使わせる。
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作品その8・師匠の作る焼き菓子

2018-08-08 22:25:47 | 見習い錬金術師の作品
たかあきは『石英』と『石砂糖』を材料に『恋人の為の炭焼き菓子』を錬成しました。用途は食用です。

 今日は珍しく師匠自らが錬成作業を行った。水晶のような結晶砂糖をいくつか使い、一つの手順も失敗が許されない工程を素早くこなして透き通る薄いピンク色の焼き菓子が完成するのを見ていると、僕は未だ技術も知識も、ついでに度胸もこの人に遠く及ばないと思い知らされる。そして、この菓子を焼いた師匠は何故か必ず寂しげな表情で菓子を箱に詰め、包みを抱えたまま家を留守にするのだ。
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作品その7・生体錬成について

2018-08-07 18:38:34 | 見習い錬金術師の作品
たかあきは『鋼玉』と『左人差し指から流れ出た血』を材料に『玉のような羽根馬』を錬成しました。用途は体力回復です。

 生物の一部を使って錬成を行うのは、なるべくなら止めた方がいいと師匠は苦い顔で言った。成分の不確定要素が多すぎて失敗するか、仮に成功しても錬成した擬似生命体は基本的に長く生きられないのだそうだ。
 だからまあ、食えそうなモノが出来たら成功だなと師匠は笑ったが、一体誰がそんなものを食べるのだろう。
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作品その6・謎の薬

2018-08-06 22:57:45 | 見習い錬金術師の作品
たかあきは『真珠』と『一角獣の角』を材料に『天空の影分身』を錬成しました。用途は戦闘用です。

 師匠が言うには、錬成の極意とは属性変化の見極めだが、いまだ人間はその変化の大元に当たる公式を見出していないのだそうだ。だからたまに、何でこんなものを材料に使ってこんなものが錬成されるのかと不思議になることがあるが、師匠は嬉しそうに、極めてうさん臭い相手にそんな商品を売りつけているので、本当に大丈夫なんだろうかと色々な意味で心配だ。
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