カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

物語その51・円環の殲滅戦

2020-01-24 23:29:07 | 不等号の関係性
たかあきは、大魔王と使用人に関する愛憎の物語を創作してください。

 彼は幼い頃に親兄弟を含めた一族を皆殺しにされ、本来の力を封じられたまま敵である大魔王の配下とされた。やがて己の本来の力を解放した彼は嘗ての自分がされたように大魔王とその一族を殲滅して玉座に着いた。だが、それが魔族の血を活性化させる一種の儀式であるのなら、いずれは彼も誰かに斃されるのだろう。
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物語その50・哀しき女帝の伝説

2020-01-20 21:41:16 | 不等号の関係性
たかあきは、白銀の女帝と使用人に関する誘拐の物語を創作してください。

 その貧しい村には昔から子供を連れ去る白の女帝の伝説がある。氷の狼と共に夜の闇を駆ける女帝は気に入った子供を氷の館に誘い、不死と引き換えに今までの記憶を奪い去ってから着飾らせ、小姓として側に置き愛でるのだと言う。だから村の者は誰一人として子供が消えた家の責任を追求しない事になっていた。
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物語その49・奥庭の剣と野に咲く花は

2020-01-19 21:10:24 | 不等号の関係性
たかあきは、剣の姫と呼ばれた王女と使用人に関する忠節の物語を創作してください。

 その気性の烈しさから剣の姫、或いは鬼姫と呼ばれたその国の第五王女には幼い頃から常に片瞳を隠した側仕えが控えていて、姫も彼女にだけは年相応の貌を見せた。縁談の当てもない貴族の姫は修道院で生涯を終えるのが常識だった時代なので、戦さえ始まらなければ二人もまた静かに朽ち果てた筈だった。
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骨董品に関する物語・蜘蛛のフィンガーボウル

2020-01-18 22:21:48 | 突発お題
 蛇や蜥蜴を嫌がる私に、叔母は穏やかな表情で宝石箱を開け、指輪やネックレスなどの見事な細工となった姿を見せてくれながら、彼らが醜いものなら誰も魅力を感じて細工物にしたりしないでしょうと言った。長じて私もその美しさに惹かれてリアルで繊細な蜘蛛模様の入ったアンティークのフィンガーボウルを入手したが、パン屋の友人に異物混入と間違われた。
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物語その49・お前はお前の道を往け

2020-01-18 21:07:36 | 不等号の関係性
たかあきは、会社社長と貧乏画家に関する栄光の物語を創作してください。

 仕事の出張先で実家を出奔した兄に偶然出会った。街角で似顔絵描きをやっていた兄は昔と面差しが変わった俺が誰であるか気付いていない様子だったが、親の会社を継ぐ為に勉強させられていた時より遥かに幸せそうに見えたので敢えて名乗らず似顔絵を頼み、規定より多めの金額と名刺を渡した。夢を貫いた兄と地上の栄光を掴んだ俺、お互いの心残りは多分それで消えたと思いたい。
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物語その48・翼持たぬモノ

2020-01-16 22:55:35 | 不等号の関係性
たかあきは、神学生と人造人間に関する非日常の物語を創作してください。

 かつて教会には神への奉仕を目的とした「天使」と呼ばれる人造生命体が飼われていたと言う。天の使いの名に相応しく美しい姿をした生き物は奴隷同然の扱いを受けながら暮らしていたが、ある日神学生だったその国の皇子が一人の天使を伴って自国を出奔して以来、残らず処分されたと当時の記録にはある。
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骨董品に関する物語・こっくりした葡萄色のベルベットが美しい祈祷書

2020-01-16 20:31:34 | 突発お題

 祖母の葬儀から数日後、いきなり訪ねてきた男は祖母と結ばれなかった嘗ての恋人だと言い張り、最愛の連れ合いだった祖母に先立たれて悲しみに沈んでいた祖父とあわや殺し合いになった。事態を収める為にも、ここは一つ当人に聞こうと遺品の祈祷書を媒体に祖母の霊魂を呼び出したら二人共に「どちら様?」と訊ね返されて死ぬほど落ち込む事になった。
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骨董品に関する物語・十九世紀フランスの阿片芥子の刺繍

2020-01-13 13:50:56 | 突発お題

 特定の植物園で金網越しなら日本でも見られるのだと、彼は私に阿片芥子を見せてくれた。豪華に花弁が重なり合った深紅の丸い花は、きっと嘗ては阿片を得る為ではなく純粋に美しさを愛でる為にも植えられたであろう罪の無さのまま、その裡に潜む毒で人間を地獄に誘い続けてきたのだ。
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骨董品に関する物語・アンモライト入り宝石箱

2020-01-13 13:49:23 | 突発お題

 嘗て海の中で生き物だった筈の貝は、ある日大量の泥中に沈み、貝としての生涯を終えた後にも姿を変えぬまま、やがてその身に虹色の光を纏うようになった。泥から掘り起こされて地上に連れて来られた嘗ての貝は身に纏った虹色の光と引き換えに、二度と温かく懐かしい海には戻れない。
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骨董品に関する物語・チェーン付き指ロザリオ

2020-01-13 13:44:36 | 突発お題

『薔薇の冠を編むように』回すからロザリオだと由来を聞いた彼女はロマンティックだわと呟いた。けれど僕が思い浮かべたのは指を容赦なく傷つけてくる、キリストの茨を思わせる冠だった。そんな彼女から僕が教わったのは棘のある花の美しさだったのか、その棘で傷付かない強かさだったのか。
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