カケラノコトバ

たかあきによる創作文置き場です

骨董品に関する物語・ミュンヘンカレンダー

2020-07-15 22:43:38 | 突発お題

「昔は読めない字が格好良く思えてな、必死でドイツ語を履修した」
「そこで英語を勉強しないのが実にお前らしい」
「ドイツ語は文法、特に活用形の変化が地獄なんだが、それでも何とか簡単な読み書き位は出来るようになった。
だがな、昔読めなかった字を読んでも普通の事しか書いていないと知ってしまって絶望したよ」
「当たり前だ」
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竜飼いその52・水の都の竜王子

2020-07-15 22:12:37 | 幻想世界の竜飼い
たかあきの竜は玉虫色の流水ドラゴンという品種名です。気性は強情で、用途は仕事の相棒です。

 運送業で水竜が仕事の相棒だと大概は珍しがられる。確かに水場でないと殆ど使いものにならないのは確かだが、逆に水場での仕事は極めて難易度の高い仕事を殆ど完璧にやり遂げてくれる。問題はそうそう水場を使った仕事が舞い込んで来ないことで、故に俺たち二人は日常的に貧乏暮らしを強いられている。だからこそ少しばかり胡散臭い仕事でも引き受けざるを得なくて、結果として、いつだってロクでもない騒動に巻き込まれるのだ。
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竜飼いその51・効果なき漆黒の共鳴

2020-07-12 14:38:41 | 幻想世界の竜飼い
たかあきの竜は漆黒の共鳴ドラゴンという品種名です。気性は引っ込み思案で、用途は家事手伝いです。

 お手伝い竜は個体にもよるが概ね縄張り意識が強く、押しが強い性格だと攻撃的に、弱いと安全圏に引っ込む傾向がある。うちの竜は臆病なくせに自己主張が激しいせいか来客があると物陰に引っ込み、お世辞にも威嚇になるとは思えない情け無げな唸り声を断続的に上げているので大抵の客に不審がられる。
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竜飼いその50・泥色の誇り

2020-07-09 19:34:06 | 幻想世界の竜飼い
たかあきの竜はどどめ色の水晶竜という品種名です。気性はお利口で、用途は仕事の相棒です。

 スパイは目立ってはいけない、そして当然スパイの相棒も目立ってはいけない。その点、竜種でも一二を争う優美な外見をしている水晶竜は本来なら俺の仕事の相棒には相応しくない筈なのだが、奴の体色は奇妙に濁った泥色をしているので少し迷彩を施せば殆ど完璧に偽装が完了する。だから奴は、もう二度と己の体色を卑下したりはしない。
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竜飼いその40・囁く声

2020-07-06 20:12:50 | 幻想世界の竜飼い
たかあきの竜は紅葉の薫風オールドドラゴンという品種名です。気性は臆病で、用途は朗読役です。

 うちの父の朗読竜は聞き取れない程ではないが声が小さい。そのせいで元の飼い主に嫌がられたのだが父としては別に可哀そうだから貰ってきたわけではなく、その囁くような朗読が入眠を誘うのではないかと試したら大当たりで、不眠気味の身としては既に決して手放せない存在となっているのだそうだ。
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夏の創作怪談・世界が終わった後の世界で

2020-07-05 23:02:54 | 突発お題

 世界で最後の生き残りとなった男が机に向かって遺書を書いていると、部屋のドアをノックする音が響いてきたという怪奇短編があるが、先日の事故で家族全員を失った僕が家の玄関を開けると、誰もいない部屋から普段と変わらぬ子供たちの賑わいと共に妻の「お帰りなさい」という声が響いてきた。
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竜飼いその49・馬鹿な竜ほど可愛い

2020-07-05 14:41:17 | 幻想世界の竜飼い
たかあきの竜は真紅色の虚空竜という品種名です。気性はお馬鹿で、用途はペットです。

 うちの紅竜は、飼い主の俺が言うのも何だが非常にスタイリッシュで凛々しい外見をしている。ただし中身は非常に覚束ないものが詰まっているらしく、よく壁にぶち当たったり何も無い所でコケたりしている。医者に診せても個性の範囲内だと言うから戦竜や飛竜に産まれなくて良かったなと思うことにした。
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竜飼いその48・噛んじゃ駄目

2020-07-04 18:10:30 | 幻想世界の竜飼い
たかあきの竜は新緑の鉱石ムカシトカゲという品種名です。気性は乱暴もので、用途は愛玩用です。

 竜の噛み癖は重大な事故を引き起こしかねないので飼い主やその家族が一丸となり訓練して躾ける必要があると言って、父は山ほど竜用の噛んでも良い玩具を買ってきた。何でも家にあるものを使うとそれを噛んでも良いと誤学習するのだそうだ。その甲斐あって竜が成長して玩具が全て残骸になる頃には噛み癖も治った。
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竜飼いその47・錆びた鋼鉄

2020-07-03 18:20:03 | 幻想世界の竜飼い
たかあきの竜は焦茶色の鋼鉄ムカシトカゲという品種名です。気性は穏やかで、用途は戦闘用です。

 うちのお爺ちゃんと飛竜は昔の戦争で戦った時、その戦闘力の高さから死神の一対と呼ばれて敵軍に恐れられていたという。けれど、若い頃は鋼色だったという体がすっかり錆色に変わった現在の飛竜に対して、呑気に寝てばかりで往年の面影は何処にも無いと呟くお爺ちゃんは何故か全く残念そうに見えない。
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