名探偵の解答その53・幼き音色の行方

暇潰しの日曜探偵であるたかあきに、母親から『可愛い楽器』事件解決の依頼が入りました。今回の事件は意外に深刻のようです。

　あなたは覚えているかしらと母さんが尋ねてきたのは、僕が子どもの頃に良く吹いていた小さなハーモニカについてだった。実はそのハーモニカは名のある職人が作った限定品で現在はとんでもない値段が付いているのだという。どこに仕舞ったのかしらねと呟く母さんに、そのハーモニカがどうなったのかはとても言えない。

名探偵の解答その52・気分はもう戦場

食うや食わずの貧乏探偵であるたかあきに、隣人から『彼方の虐殺』事件解決の依頼が入りました。今回の事件は意外に難解のようです。

　飢餓状態の獣は見境を無くすものだがそれは人間も同じで、先の見えない貧乏からの脱出を目論んだ俺は成り行きで受けた人探しの依頼から彼方の国の戦場に赴くことになった。生き伸びる為に逃げ出した筈の故郷へ、今度は喰う為に再び舞い戻ることになるとは、どうにも皮肉な状況であるとしか言えない。

名探偵の解答その51・事件はいつだってデッドオアアライブ

事務所を開設したばかりの新米探偵であるたかあきに、王様から『動かぬ幻想』事件解決の依頼が入りました。今回の事件は意外に深刻のようです。

　殆ど強制的に連行された王宮で、どす黒い顔色の王様から夜になると寝室の隅に幻の獣が現れるから正体を探るようにと言われた。新米探偵に何を言ってるんだと思ったが、どうやらめぼしい探偵は殆ど全員依頼を強制され玉砕したらしい。道理で立派な事務所物件が格安で借りられた訳だと気付いたが、もう遅い。

名探偵の解答その50・犬も食わない餌にもならない

暇潰しの日曜探偵であるたかあきに、友人から『汚れた強奪』事件解決の依頼が入りました。今回の事件は意外に笑い話のようです。

　どうも彼女に浮気をされている形跡があるとぼやいた友人は、それでも何か誤解があるかもしれないからと俺に彼女の事を調査して欲しいと頼んできた。彼女の友人に対する熱愛ぶりからどうせ何かの勘違いだろうと確認したら予想通りで、でも成り行きが興味深かったので真相を教えないまま放っておいた。

名探偵の解答その49・そっちの水は甘いか

男性に大人気の探偵であるたかあきに、隣のおばさんから『棘の多い悔恨』事件解決の依頼が入りました。今回の事件は意外に残酷のようです。

　とある男性に対して真の愛とか運命の相手などと、正気とは思えない単語を並べ立てて調査を依頼してきた既婚中年女性に、相手が信頼出来る存在ではないという幾多の調査報告を提出した翌日、依頼人は家族を捨てて運命の男と駆け落ちした。彼女が「救ってあげるべき存在」と決めた男は彼女を幸せにしたのだろうか。

名探偵の解答その48・宝物は何処ですか

全く無名の探偵であるたかあきに、強欲な婆さんから『漆黒たる幻想』事件解決の依頼が入りました。今回の事件は意外に笑い話のようです。

　うらぶれた探偵に儲け話を持ってきてやったと豪語する婆さんの依頼は、先祖代々が密かに隠し続けた宝を見付けて欲しいというものだった。何でも一族が絶えるまで守る義務があったらしいが家族はもう誰もいないので最後にイイ目を見たいと言う事らしい。何となく予想が付いたので断りたかったが婆さんはマジだった。

名探偵の解答その47・消えたアレを追え！

有名な素人探偵であるたかあきに、隣人から『永遠の盗難』事件解決の依頼が入りました。今回の事件は意外に難解のようです。

　ちょっとした謎や揉め事を鮮やかな手並みで解決する素人探偵。そんな風にご近所から認識されているらしい僕の元にお隣さんが相談を持ち込んできた。ただ、留守中に何か盗まれた気がするが何が盗まれたか分からないという雲を掴むような案件は、流石にせめて盗まれた物の見当をつけてから来て欲しかった。

骨董品に関する物語・悪魔の食事に手を伸ばす修道士のステレオグラム

　俺の飯を食うのは構わんが、異教の神話で語られる冥王に連れ去られた娘が冥界の果実を口にした結果どうなったかをお前は知っているのかと奴は嗤い、私はそれでも彼のボウルに手を伸ばした。それは勿論ただ空腹を満たす為だけではなく、未だ知る事のない罪の味を知る為の行為だった。

骨董品に関する物語・病める悪魔のステレオグラム

　悪魔は概ね顧客に欠陥のある商品を売りつけるセールスマンのようなもので、その為の手練手管が不得意な悪魔は決して人間の魂を得ることが出来ず、人間界より更に過酷な魔界のノルマに対応しきれないまま磨り潰されていくのだが、最近の人間は悪魔を魔界から呼び出す方法も知らない。

名探偵の解答その46・美しき想い出は永遠に

事務所を開設したばかりの新米探偵であるたかあきに、幼馴染から『奇麗な小夜曲』事件解決の依頼が入りました。今回の事件は意外に悲恋のようです。

　仕事を選べる立場ではない新米の僕でも、なるべくならやりたくない仕事というものがある。幼馴染から依頼された、夫と離婚して以来女手一つで自分を育て、現在は重い病の床に伏している母親の、若い頃に一度だけダンスホールで踊った初恋の相手を見付けて欲しいなどというのは、予想される結末から言ってその最たるものの一つだと言えた。