おはようございます。四万十は、晴れ。
白い雲が、のったりながれゆく透きとおった青空。
雨粒をまとい、朝日にキラキラかがやく青葉の山。
つるりとした水面に、青と緑をうつしてゆったり流れる川。
昨夜の雨が、美しい水無月の朝をつくりました。うーん、ビューティホー。
家にもどる途中。
ガリッ!岸辺の野生化したスモモのまだ青い実をかじれば、
わかい夏のあまずっぱさが、口いっぱいに広がっていきました。
*今年は、スモモ、ヤマモモ、ウメの果実が、まったくといっていいほど生ってません。なんでだろう。
今日の最低気温は、16、3度。
最高気温28、5度。午後も晴れ。
ザワザワと青葉風が吹きぬける6月の庭で、
サツキの花といれかわるように、ネムノキの花が咲きはじめています。
そんな、淡いピンク色のネムノキの花を見ると、
僕は、若き日の夏、はじめてのバイク1人旅でのデキゴトを思い出すのでした。
7月の朝、テントのなかで目をさまし外をのぞくと、あたりいちめんミルク色の深い霧に包まれていた。
目のまえに止めた愛車が見えないほどの。
そこは、九州のとある地方の丘陵地帯を走る国道、ドライブイン脇の小さな公園。
テントをでて、トイレをすませ、顔をあらった僕は、
ドライブインのベンチに座り、温かい缶コーヒを飲み、タバコを吸っていた。
今日はどこまでいこうか?と考えつつ。
ドルル。深い霧のなかから、排気音が聞えてきた。すると目の前に、中型のオートバイが現われた。
オートバイを降りたライダーがヘルメットを脱いだ。女性ライダーだ。
視線があった。
「おはようございます」とアイサツを交わした僕は、おどろき笑顔がこわばってしまった。
中背で細身、背中までの長い黒髪、小顔に薄い唇、涼し気な目元。
その女性ライダーは、僕がうまれてはじめて憧れた年上の美しいひとによく似ていたのだ。
どんな旅をしてるのか?などと短く話をしたあと、写真を撮らせてもらった。
霧が晴れてきた公園の木には、淡いピンク色の花が、フワフワたくさん咲いていた。
「じゃあ、このキレイな木の花をバックに」と僕が言うと、
「ネムノキの花ね。ネムノキは、夜になると葉を閉じて、
まるで眠っているように見えるから、 ネムノキという名前なのよ。知っとう?」と彼女が言った。
「ほぇ~そうなんだ・・・」。僕は、出来の悪い弟のようなマヌケな返事をした。
そういえば、あの時の写真。押し入れのプラ箱(写真箱)のなかのどこかにあるはずだ。
ナツカシイ、探してみようか?すると、もうひとりの自分がささやいた。
野暮はおよしよ。(思い出補正ずみの)記憶のなかのステキなデキゴトに、と。
ココロの地図には、あの夏のネムノキの花を背景に、彼女の美しい笑顔の花が咲いている。