あるBOX(改)

ボクシング、70年代ロック、ヲタ系、日々の出来事などをウダウダと・・・

思い出の名勝負「フランシスコ・キロスvsビクトル・シェーラ」

2011年02月10日 | ボクシング
パナマシティ パナマ・ヌエボ体育館
1984年8月19日
【WBA世界Jフライ級タイトルマッチ】
フランシスコ・キロスvsビクトル・シェーラ 

勝率5割の新王者の初防衛の相手は、新星ビクトル・シェーラ。
17歳でパナマ・ラテンのダブル王者となった10勝6KO1敗3分の
俊英の狙いは、W・ベニテスの持つ最年少世界奪取記録更新。

ここで勝てば10日若いチャンピオン誕生となる。
パナマの関係者の目論見は明らかだ。
負け数の多いキロスを二流・三流王者と見なし、新記録樹立への格好の
標的と考えたのだろう。

しかし、マデラをKOしたキロスの強打を侮った事が、大きな間違いで
ある事を、シェーラ陣営は10分足らずで思い知る事になった。

オーランド・カニザレスに似た体型のシェーラ、軽快にキロスの周りを
旋回する。王者キロスは、R・オロノやI・コントレラスと戦っただけに
体格が大きい。長い手足を、これも軽快に動かしてボクシングする。

脇を絞ったフォームからジャブを伸ばす王者。
ボディワークで躱し、リターンジャブを返す挑戦者。
センスは良さそうだが、時々攻めるシェーラのパンチは気負いからミス。

1ラウンド終了間際、挑戦者の右に合わせたキロスの右アッパーがヒット。
グリーンボーイのように後退する挑戦者、ロープを背に無造作に打ち合う。

右アッパーから右フックを叩き付けられ、シェーラダウン。

何気に立ち上がり、ゴングに救われる挑戦者。

第2ラウンドはシェーラが反撃に出る。
右フックの相打ちから左右を連打、打ち返す王者と激しい打ち合い。
観客は立ち上がって拍手喝采だが、焦った大振りで的中率は低い。
やはり若さか、相手を見ずに打ち急いでいる。

右を振って身体が流れ、クリンチに来る挑戦者にアッパーを立て続けに
突き上げるキロス。

脇を絞った構えのせいで、密着した距離からのアッパーも上手い。
このラウンド終盤、再びジャブの距離からシェーラが右を振って踏み込むと、
またしてもキロスの右アッパー!崩れかける所にもう一発右アッパーを打ち
上げると、挑戦者は仰向けにダウン。

そこで「どうだー」のポーズ。

挑戦者はそれでもやっと立ち上がったが、身体を支えきれずに宇宙遊泳。
レフェリー、セコンドの手助けもならず再びキャンバスへ大の字になった
シェーラ。

王者を見くびった代償は大きく、払った授業料は高すぎた。
キロスはこれで10勝7KO9敗1引き分け。
シェーラは10勝6KO2敗3引分け。

マデラ戦ではスラッガー、今回はカウンターパンチャー。
彼の束の間の頂点を見届けた自分は、中南米ボクサーの奥深さを教わった
思いがしたものだ。