じゃ、僕の話をします。

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「鮨の魚政」の味を舌に刻みこんだ朝。

2014-03-01 | 寿司
昨日。

長年、鮨を握り続けていた一人の職人さんがご勇退されました。

札幌中央卸売市場場外にあるお鮨屋さん「鮨の魚政」のご主人です。

新鮮なネタを熟練の技で握り、その味に日本全国からお客さんが集まる。そしてお会計は市場ならではのお手頃さ。

鮨において、北海道最高峰の店。

この店を知る方で、それに異論を唱える方はいないでしょう。

ススキノの「聡咲」のマスターに案内され、最初にその味に触れたとき、それまでの鮨の概念は全て吹き飛びました。

そして、それから何度も足を運びました。

始発の電車に乗り、市場へ。早朝の冷涼で爽やかな空気に包まれたお店のカウンターに座り、店内に流れるAMラジオを耳にしつつビールを飲み、やがて徐に目の前に現れる握り。

その味も、居心地のよい空気感も、毎回この上ない至福の時間に誘ってくれました。

ご主人は、僕の食べるペースに完全にシンクロさせて鮨を出してくださいました。これもまさに「技」。そのテンポがまた心地よくさせてくれ、味をさらに幸せなものにしてくれます。

ご主人が握る姿は美しく、力強い。その所作と味は比例します。

「職人」を目の当たりにする興奮。

鮨に関わる醍醐味の全てが、この店にはありました。

そして鮨を堪能して、朝日の中、帰路につく時の充実感。

「また、この鮨を食べるために頑張ろう。」

そう思いながら、市場を後にする幸せなひととき。

他では得られません。



ご主人が引退なさると聞いたのは、実は結構前のこと。

それを聞いた際、寂しい気持ちになったのはもちろんでした。

そして先月末。

行って参りました。

自分の舌と目に、しっかり刻み込んできました。

ウニ。


イクラ。


穴子。


もちろん、他にも沢山いただきましたよ。

最初にお店に行った時は、出していただいた鮨の写真を撮ったのですが、それ以降、このお店で撮ることはなかったんです。鮨は出てすぐ口に運ぶ。写真を撮る暇も惜しい。・・・と、言う理由でした。

でも、やはり今回は思い出に三枚だけ失礼しました。

鮨をいただきつつ、ご主人の鮨を握る姿もしっかり目に。

やはり、凛々しくかっこいい。

その美しさは、まるで歌舞伎の「型」。

前掛けは、横綱の化粧回しのよう。

威風堂々とした佇まいでした。

その日も、朝から沢山のお客さんが詰めかけていました。

もう少しゆっくり過ごしたい気持ちはあったんですが、後がつかえていたので、いつもより少し早めにお会計を済ませました。

それでも、十分に楽しめましたよ。

「美味しかったです」

そう告げて、お店を出ました。いつもと変わらず、幸せな余韻に包まれながら。

今日からは新しい職人さんが暖簾を引き継ぐとのこと。

僕は、その味を比較できるほどの常連とは言えません。

でも、新しい「魚政」の味はどんなものかは楽しみです。

いつか、また足を運んでみたいと思います。



「魚政」でいただいた後は、何故かいつも晴れ。

この日も、青空が。

その色が目に染み入りました。



ごちそうさまでした。

お疲れ様でした。
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