塙保己一が編纂した群書類従の版木を
管理・保存する目的で1909年に
渋沢栄一らによって設立された温故学会会館。
関東大震災の経験を生かし建設された会館は、
すでに95年を経ていますが、空襲にも耐え
ずっしりとした風格が保たれています。
正面からは鳳凰が両翼を広げたような形をしており、
玄関向かって右側は、1階・2階ともが版木倉庫、
2階の講堂は27畳と床の間を配置し、
和洋折衷の珍しい構造となっているようです。
江戸後期の国学者、検校の塙保己一の像。
7歳で失明、15歳で江戸に出て音曲や
鍼、按摩の修業も不器用でものにならず、
一方で物覚えが良く、学問を志したのです。
塙保己一が41年間をかけて、全国各地に散在していた
貴重な書物を集め、校訂を加え、種類ごとに分けて
編纂した文献集である『群書類従』は、
国の重要文化財になっています。
版木17,244枚を保管し、一般にも公開しています。
希望により必要部分の類従本を有料で摺立てするとか。
渋谷駅から歩くと20分弱のこの辺りは、
戦争で焦土化、世界に誇れるこの版木を
戦火から守ったというお話には感動しました。
母親から塙先生をお手本にしなさいと励まされ、
育ったという三重苦のヘレン・ケラーが、
先生の像に触れることができたことは、
日本訪問における最も有意義なことと語っています。
東京都渋谷区東2-9-1
2022.3.3
渋谷区指定有形文化財には、このほか「五行易指南」
「古今刀剣正真便覧」「崋山画譜」など、1094枚の版木があり、
『群書類従』版木とあわせると、18,492枚を所有しており、
世界屈指の版木数を誇っています。