雨の日は雨を聞き、雪の日は雪を見て、夏には夏の暑さを、
冬には身の切れるような寒さを、五感を使って、
全身で、その瞬間を味わい、季節のように生きる
禅語のひとつ「日日是好日」は、
「毎日毎日が素晴らしい」という意味です。
世の中にはすぐにわかるものとそうでないものがあり、
すぐにわからないものは、長い時間をかけて、
少しずつ気づいてわかってくるもので、
歳を重ねたからこそわかるということもあるでしょう。
この作品は、しみじみと良い映画であり、
日本映画史に残る作品になるのではと思います。
何しろキャストが最高でした。
主役の典子を演じる黒木華、茶道教室の先生に樹木希林、
典子と一緒に茶道教室に通ういとこに多部未華子。
演技力のある実力派女優が揃っています。
茶道のお稽古を続けるうちに精神的に成長し、
幸せは、その日その日を大事にする
日々の積み重ねから得られることを知るという物語。
ロングセラーの原作の人気もあるのでしょうが、
サービスデーでもないのに映画館は満席で、
前から3番目の席で観ることになったのですが、
スクリーンに釘付け状態でした。
私も19歳の頃に茶道(表千家)のお稽古を始めました。
ですから典子さんと同じ頃に始めたのですが、
彼女のようには、お稽古が続かず挫折しました。
茶道は、掛け軸を読んだり、花を生け、茶器の作者や焼き方を覚え、
襖や障子戸の開け閉めから畳の上の歩き方、立ち振る舞い、
懐石料理にお菓子と覚える事は多く、お道具、着物など
お金がかかるので、続けていくのは大変なことなのですが、
それだけに奥が深く、魅力があるのもわかります。
学生時代から華道や書道を学んだことも
無駄ではなかったと思いますし、
お茶のお稽古に通い、焼き物にも興味を持ったり、
日本画も観たりと今につながるものも多いように思います。
和服や帯、掛け軸、茶器といったお道具に
虫の音、雨の音、湯が沸く音、水の音、茶筅の音が印象的に流れ、
日本的な美しい映像に、より一層の彩りを加えています。
確か茶道具は処分していないはず、
抹茶を購入してお茶をたててみたくなりました。
過ぎた日々を思い出したり、
今を生きる歓びを感じられた作品です。
監督・脚本:大森立嗣
出演:黒木華/樹木希林/多部未華子
鶴田真由/鶴見辰吾
2018年/日本/100分
シネ・リーブル池袋
2018.10.25