’08/04/29の朝刊記事から
北朝鮮 食糧難が深刻化
水害、中国の輸出制限追い打ち
【ソウル28日井田哲一】北朝鮮が深刻な食糧難に陥りつつある。
昨年夏の豪雨と洪水被害の影響が甚大な上、中国からの食糧輸入が制限されているためで、餓死者が出る懸念も出ている。
世界食糧計画(WFP)は、国際的な緊急援助の必要性を訴えている。
国連食糧農業機関(FAO)の分析によると、2007年の北朝鮮の穀物生産量は前年比25%減の約300万トン。
FAOの予測では、08年の食糧不足は166万トンと昨年の2倍に達し、01年以降で最悪の水準となる見通しだ。
WFPによると、首都平壌ではコメやトウモロコシの価格が前年の2倍になっているという。
食糧不足は、昨年の水害被害が最も大きな要因だが、最大の貿易相手国である中国が、世界的な穀物価格の高騰を受けて輸出制限措置を取っていることも影響しているようだ。
聯合ニュースによると、北朝鮮の貿易会社が中国人貿易商に対し「いくらでも払うので食糧を確保してほしい」と要請しても、確保は困難な状況で、密輸が増えているという。
今年2月末には、韓国に李明博政権が発足し、これまでの対北朝鮮融和政策を転換。
南北関係に緊張が高まる中、韓国の食糧支援は中断されたままだ。
李政権に反発する北朝鮮は食糧支援の再開を要請する考えはないとみられ、食糧不足に拍車をかけている。
北朝鮮への人道支援を行う韓国の人権団体「良い友人」は4月上旬の報告で、平壌でも食糧配給が中断していると伝えた。
同団体は1990年代、大水害などで食糧危機が深刻化し、餓死者約350万人を出しながらも国民に忍耐を強いて政権崩壊を防いだ「苦難の行軍」を想起させるとする。
北朝鮮専門家からは「北朝鮮でも市場経済が広まっているので直ちに餓死者が出る可能性は低い」との見方も出ているが、WFPは「日を追って北朝鮮の食糧事情は悪化している」と警告する。
’08/03/28の朝刊記事から
北朝鮮が韓国当局者追放
「脱融和政策」けん制
総選挙への影響狙いか
【ソウル27日井田哲一】北朝鮮が27日、開城(ケソン)工業団地の南北交流協力事務所に常駐する韓国政府当局者を追放した問題について、韓国内では、4月9日の韓国総選挙を意識し、対北朝鮮融和政策からの転換を図った李明博(イミョンバク)政権に対する北朝鮮側のけん制との見方が広がっている。
北朝鮮は「核問題の解決なしに開城工業団地の拡大は難しい」との金夏中(キムハジュン)統一相の19日の発言を問題視し、27日未明に韓国政府当局者11人全員を追放した。
北朝鮮が李政権の対北朝鮮政策に対し、具体的な行動を示したのは初めてだ。
李大統領は同日、外交安保政策調整会議を緊急招集し対応を協議。
青瓦台(大統領府)の報道官は記者会見で「南北経済協力の発展に障害となる遺憾な出来事。(実利重視の)実用的な立場で対処する」と述べた。
2月末に発足した李政権は、盧武鉉(ノムヒョン)前政権の対北朝鮮融和政策を転換、核問題や拉致被害者の人権問題などの解決を最優先させる政策を取っている。
北朝鮮側が譲歩、協力すれば、韓国側も経済支援を行うとする「相互主義」だが、これに満足しない北朝鮮のメディアは李大統領の名前には直接言及せず、「保守執権勢力」などとして批判を強めていた。
今回の追放劇について聯合ニュースは「李政権下で南北関係が不安定になるとのメッセージを伝え、総選挙に影響を与えようとしている」と指摘。
「総選挙で融和政策への支持勢力に協力しようという意図がある」との北朝鮮専門家の見方を紹介した。
また夕刊紙、文化日報は「総選挙に相当な影響を与える」と分析。
融和政策への賛否をめぐって与党のハンナラ党と野党の統合民主党の間で論争が起き、総選挙の重要テーマのひとつに浮上する可能性を指摘した。
一方、民主党の報道官は27日、「李政権の間違った実用主義が南北協力事業を誤った方向に行かせた」と批判し、選挙戦で攻勢をかける考えを示した。
’08/01/23の朝刊記事から
北朝鮮 異例の沈黙
韓国新政権の政策注視
実務協議も延期通告
【ソウル22日井田哲一】昨年11月19日の韓国大統領選から1カ月が過ぎたが、北朝鮮は、李明博(イミョンバク)次期大統領について、異例とも言える長期の沈黙を続けている。南北の経済協力事業を話し合う実務協議も北朝鮮側の要請で延期されており、北朝鮮は、統一省の解体などを掲げる李新政権の対北朝鮮政策について見極める姿勢を強めている。
北朝鮮は今月5日の労働新聞で「南朝鮮で誰が執権(政権獲得)しようと、われわれには関係ない」と、間接的に大統領選に触れたが、李次期大統領についての報道は一切行っていない。1997年や2002年の大統領選では、2-3日後には報道で当選者について言及していた。
また、22日に北朝鮮の開城で開催予定だった南北鉄道協力分科委員会の初会合について、北朝鮮は21日、「年初で準備があるので少し延ばそう」と韓国統一省に対して突然延期を通告した。同会合は、南北間の経済協力を話し合う今年最初の実務協議だった。
有力紙の東亜日報は、2月25日の新政権発足まで予定されていたさまざまな南北協議についても「北朝鮮は盧武鉉(ノムヒョン)現政権での会談は無意味だと判断し、延期される可能性が高まった」と報じた。
李次期大統領は、北朝鮮への融和政策を担ってきた統一省を外交通商省に吸収統合するなど、対北朝鮮政策の見直しを進めている。このため、北朝鮮は「憂慮しつつ静観する姿勢」(ハンギョレ新聞)を示しているとの見方も出ている。
沈黙を続ける北朝鮮について、韓国政府の当局者は「北朝鮮は李新政権の対北朝鮮政策と6カ国協議の行方を注意深く見守っているためでは」と分析している。
’07/11/06の朝刊記事から
北朝鮮 核無能力化に着手
米発表 「6カ国」新段階
【ワシントン5日共同】米国務省のケーシー副報道官は5日、北朝鮮・寧辺の核施設で同日、6カ国協議で年内完了が合意された「無能力化」の作業が始まったことを明らかにした。
1994年の米朝枠組み合意で実施されたことがある核施設の停止・封印という「凍結」を超え、北朝鮮の核問題をめぐる状況は新段階に入った。
ケーシー氏は、作業の詳細は不明とした。
6カ国協議の米首席代表、ヒル国務次官補は「無能力化から廃棄へと途切れなく続けていきたい」と述べており、年明けからプルトニウム廃棄や核施設解体に向けた作業に入りたい構えだ。
無能力化作業チームは1日に訪朝。
平壌で北朝鮮側と詰めの協議を行って5日までに寧辺入りし、作業に着手した。
ヒル氏によると、無能力化と並び年内に実施される「すべての核計画申告」の第1次草案が、団長のソン・キム米国務省朝鮮部長に手渡される可能性がある。
キム部長は6日にも北朝鮮を離れる予定。
無能力化の手順は、放射化学研究所(再処理施設)への使用済み核燃料搬入をできなくしたり、黒鉛減速炉から燃料棒を取り出し、すぐに再稼働できないように使用可能な燃料をなくすなど「少なくとも十ある」(ヒル氏)という。
作業チームは米国が主導しており、今回は米国のみから人員が派遣されているが、ヒル氏は日本を含め6カ国協議参加国にも参加を呼び掛けている。
核施設の無能力化
北朝鮮寧辺の核施設の稼働停止・封印などの「初期段階措置」に続く第2段階として、核施設を使えない状態にする措置。
「すべての核計画申告」と並ぶ柱として、2月の6カ国協議合意に盛り込まれた。
ヒル米国務次官補は、「1年間は稼働できaなくすることが目的」としている。
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'07/10/04の朝刊記事から
北朝鮮核無力化 2週間以内に着手
6カ国合意文書 米主導 年内完了
【北京3日佐々木学】北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議の議長を務める中国の武大偉外務次官は3日、同協議が9月30日に暫定合意した北朝鮮の非核化に向けた「次の段階」措置に関する合意文書を発表した。
文書は、北朝鮮の寧辺にある三つの各施設を12月31日までに無力化することを明記。
米国の主導で2週間以内に無能力化のための作業に着手するとした。
また北朝鮮は、すべての核計画を年内に完全申告することも承諾した。
合意文書の題は「共同声明実施の第二段階行動」。
同協議の二日間の休会中、各国政府の承認を得て、武次官が3日、北京の中国外務省で記者団を前に読み上げた。
文書によると、無能力化の対象は、寧辺の5千キロワット実験用黒鉛減速炉、放射科学研究所(使用済み燃料棒再処理施設)、燃料棒製造施設の3カ所。
米国は無能力化実施のための資金を提供する。
また北朝鮮は、12月31日までにすべての核計画の完全申告をするほか、核物質や核開発のための技術や専門知識を他国へ移転しないことを約束した。
しかし、核兵器やウラン濃縮計画、抽出済みのプルトニウムについて直接は言及していない。
北朝鮮が強く要求していた、米国によるテロ支援国家指定と「敵国貿易法」適用の解除については、北朝鮮の行動と、2月に合意した共同声明の履行状況に応じて、米国が将来「約束を履行する」との表現で解除の方針を示したが、時期は明示しなかった。