’08/08/11の朝刊記事から
《 記者の視点 》
編集委員 近藤 浩
竹島の領有権 交流継続が解決の道
対話を重ね「紛争」回避
文部科学省が中学校社会科の新学習指導要領解説書に竹島(韓国名・独島)を明記したことに、竹島を実効支配している韓国が反発、道内でも”草の根交流”が中断される事態に発展していることを残念に思う。
交流を続けることこそが、領土問題を解決する素地になるはず。
韓国側は冷静に対応し、日本側も復活・継続を働きかけたい。
昨年まで3年間、ソウルに駐在したが、竹島問題は苦い思い出だ。
2005年、島根県の「竹島の日」制定をきっかけに反日世論は沸騰、日本大使館へのデモ、流れる「独島は我が領土」という歌・・・。
危険を感じることはなかったが、こちらが日本人とわかると「独島はどの国の領土だ?」と議論を吹っかけられた。
そうした中、旭川市と姉妹関係にある水原市の市長の言葉が印象的だった。
「政治は政治。私たちの交流になんら影響しない」。
竹島問題が旭川市との交流に影響しないかと聞いた筆者に、そう答えた。
多くの日韓交流が中断されるなかで、心強かった。
ところがこの夏。
旭川市が受け入れるはずだった水原市の高校生10人の派遣は、直前に取り消された。
水原市に聞くと、担当者は「今の雰囲気では仕方ない」と言葉少な。
費用が日本政府の予算だったことも影響したという。
北海道行きを楽しみにしていた子供たちを思うと残念だ。
竹島問題による道内での交流中断は、旭川のほか、札幌の高校のアイスホッケー交流などが道に報告されている。
共同通信のまとめでは全国で104件の交流行事が中止など影響を受けている。
「交流中断は望まないが、それだけ怒っていると知らせる意味はある」と、ある韓国外交関係者は言うが、多くの日本人は当惑するばかりだし、韓国の主張を理解してもらおうとするなら逆効果だ。
02年のサッカーW杯共催や韓流ブームなどで、日韓関係は成熟しつつある。
韓国の若者はマンガやアニメなど日本文化を愛し、北海道への旅行客も昨年度約17万人と2年前の倍以上だ。
ただ、相互理解はまだまだ足りない。
竹島問題は典型だ。
韓国にとって、島根県が竹島を編入した1905年は日本が韓国を保護国に置いた第二次日韓協約締結の年で、植民地支配の始まりだった。
だから日本が領有権を主張すれば、過去の反省は口ばかりとなり、「再侵略の予兆」とさえ映る。
単なる領土問題ではない。
溝を埋めるには、対話を重ねることだ。
韓国はその主張を伝えればいい。
わたしたちは不戦を誓った戦後日本の姿を知らせる。
その上で、領土紛争に発展しないよう双方が慎重に取り扱い、長期的に解決の道を探るしかない。
だからこそ「未来」の日韓を担う青少年交流に力を入れたい。
実は、韓国の中学生の男の子を14日まで11日間、わが家で受け入れている。
民間団体の相互交流で北海道に来た8人のうちの1人だ。
「難しいときだからこそ、互いに交流を活発にし、理解を深めることがいいと思う」と、韓国の派遣団体役員は言った。
子供たちがさわやかな北海道で夏休みを過ごし、たくさんの日本の友人と、思い出をつくって帰ることを願う。