拙宅のある船橋から鬼ヅモ大会の開かれる横浜までママチャリで向かう旅。
いつもなら第一京浜を通るところ、この日は気分を変えて第二京浜を通って行きました。
第二京浜付近にある古刹・池上本門寺を詣でようと考えていましたが、時刻は閉門の差し迫る午後4時前。
この日の参拝はパスしてもいいかな~とも思いました。
しかし第二京浜の度重なるアップダウンに心身ともにやられていた私は「二度と第二京浜は使わない」と固く決心していました。
そうであるならば、この機会に、第二京浜に近い(第一京浜からは遠い)本門寺に行っておかなきゃ、とも考えたのでした。
第二京浜から脇道に入ると、それまでと比べ物にならないほど傾斜の急な坂が行く手を阻みます。
修行の地だけあって、寺院は山や台地の上におわすものですから、ママチャリを押しながら歩いて上ります。
そうして着いた池上本門寺・・・の裏手のようです。
駐輪場・駐車場の目の前に本堂と思われる大きな御堂がそびえておりました。
時刻は午後4時前、参拝時刻に余裕がありません。
しかし体力・精神はさらに余裕がなく、私は駐輪場近くにあった「お休処」なる屋内に駆け込みます。
するとそこは喫茶店でした。
思考能力が落ちていた私は、ためらわず冷たい飲み物と甘いものを注文します。
冷甘酒(400円)と豆乳アイス(500円)をいただきます。
店内の涼しさと相まって、心身の疲労が消え失せていくようです。
池上本門寺は、山号を長栄山、院号を大国院とし、日蓮聖人入滅の霊場として日蓮宗の大本山のひとつとされています。
日蓮は、弘安5年(1282年)9月8日身延山(山梨県)を出て、病気療養の湯治のため常陸に向かいました。
その途上、9月18日に武蔵国池上郷(現在の東京都大田区池上)の池上宗仲の館に留まり、一堂を建立したのが本門寺の始まりとされます。
10月13日、日蓮が池上郷で亡くなると、池上宗仲は法華経の字数(69,384字)に合わせて69,384坪の土地を寄進し、本門寺の基礎が成りました。
以来、本門寺は関東の武士より庇護を受け、江戸時代に入ってからも加藤清正や紀伊徳川家などの祈願寺となりました。
第二次世界大戦の空襲によって寺内の伽藍のほとんどが焼失してしまいますが、戦後に復興して現在に至ります。
午後4時20分、池上本門寺の散策開始。
最初はお休処に隣接する経蔵【大田区指定文化財】です。
何度か焼失の末、天明4年(1784年)に再建されて現在に至ります。
江戸中期の大型の経蔵ですが、現在はお経は保管されていないそうです。
お次は大堂です。
戦災で焼失しましたが、昭和39年に鉄筋コンクリート造で復興しました。
「無事、横浜に到着しますように」
「鬼ヅモ大会、優勝したいなぁ」
大堂で本日最後の祈願をします。
大堂からやや外れたところにそびえ立つ五重塔【国指定重要文化財】。
文禄2年(1593年)徳川秀忠が悪性の疱瘡にかかった際、病気の平癒を祈願しました。
病は治り、秀忠は長じて2代将軍に就任し、平癒の御礼と武運長久を祈願して慶長12年(1607年)に建立されたものです。
関東地方で現存する五重塔で最も古く、また桃山期の様式による現存唯一の五重塔とされています。
ふたたび大堂のところまで戻り、
仁王門(三門)から参道を下って行きます。
以前奉納されていた仁王像は、当時20歳代のアントニオ猪木氏をモデルにしているのだとか。
ここで参道から少し外れて、
日蓮上人説法像です。
アルミニウム製の像で、昭和58年(1983年)の日蓮の700回忌に建立されました。
参道を歩き、96段の石段を下りていきます。
96段の段数は、「法華経」宝塔品の
難しそうな名前は、その偈文の最初の4字からとっています。
加藤清正が本門寺の祖師堂(江戸時代中期に焼失)を建立した際に整備された石段で、その当時のものが現存しています。
石段を下りたところに、お社が鎮座しています。
長栄堂といい、守護神・長栄大威徳天をお祀りしています。
この日はツツジがきれいに咲いておりました。
本門寺の入口・総門【大田区指定文化財】に到達です。
江戸時代の元禄年間に建てられた簡素な門です。
扁額は江戸時代初期の芸術家・本阿弥光悦の筆によるものだそうです。
これにて本門寺の散策は終了・・・ではなく、3分の2くらいでしょうか。
下った参道をまた上って、大堂のところに戻ります。
時刻は午後5時を回りました。
大堂とは道路をはさんで向かい側に本殿。
その奥に日蓮聖人御廟所があります。
時刻の関係で閉門となっていました。
そして境内のはずれ、坂を下りたところの墓地。
このあたりは、入滅した日蓮聖人を荼毘に付したとされています。
そしてここに建つのが多宝塔【国指定重要文化財】です。
聖人の550回忌を期して、天保元年(1830年)に建立されました。
ここには、日蓮聖人が持っていた水晶念珠が奉安されているそうです。
斜陽に染まりゆく本門寺。
人気の全くない墓地と多宝塔に少しばかりビビりながらも、本門寺を後にしました。
◆参考文献
日蓮宗大本山 池上本門寺 http://honmonji.jp/