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語尾はコスプレだとか>紋切型社会

2024年08月13日 | ブックレビュー

 武田砂鉄の「紋切型社会」という本を読んでて色々ハッとさせられました。この本は「言葉で固まる現代を解きほぐす」という副題もついていて、様々な場面での言葉の使われ方についてをあれこれ掘り下げているものです。

 その中で特に「語尾はコスプレである」というのが面白くて、要するに「○○だぜ」というのと「○○のよ」という風に語尾を変えるだけで人格自体が変わって見えるというもの。

 それ自体は別にハッとはしないのですが、英語の翻訳の場合に「英語に語尾なんてないんだから」という戸田奈津子の話が面白いです。また、ジェーン・スーのエッセイ「私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな」を例にとって「このタイトルなど、語尾だけで立場を明確に主張している。」というのも大いに頷けます。

 ジェーン・スーがコラムの締めを男性言葉にすることが多いのも例示し、女性が女性性を排するために一人称で「俺」を使うより「だな」などと「語尾をいじるほうが劇的に刺さる」とも指摘しています。

 たしかに、彼女のトークショーの取材映像ではファンにジェーン・スーの魅力を尋ねたところ「とにかく言葉のチョイスが絶妙で。」と言ってたのを見ました。この辺は本当に言葉の魔術師だとも思いますが、それに魅力を感じる人はそれを楽しめる感性を持っているということでもあって、彼女の本が売れるというのはそういう人が多いという事ですから出版業界にとっても喜ぶべきことでしょう。

 その他にも、お茶の水博士や阿笠博士の「〇〇じゃ」の博士ことば、「〇〇でちゅ」という赤ちゃんプレイなどについても取り上げられており、なかなかに考えさせられる本です。

 「語尾のコスプレ」ということだと、柔道漫画でアニメにもなった「YAWARA!」で柔の祖父、猪熊滋悟郎が言った「柔の道は一日にしてならずぢゃ」も印象的だし、川崎のぼるの「いなかっぺ大将」では「わしは…わしは…菊ちゃんも花ちゃんも好きだす!」「菊ちゃん、あんなアホほっといてわてと遊びまひょ~」「大左衛門、しっかりするぞなもし!」なんてのもありました。(まあこれは方言なので語尾だけではありませんが。)

 そうやって語尾をいじるだけで書いた人の人格まで想像させるというのは、考えただけで楽しくなります。私もこのブログでは日々日本語表現について考えてますので、とにかく明日からもビシバシ行かせてもらうでぇ~! ←と、ここはカネヤン風

 で、実はこの本は図書館から借りてきたのですが、かなり気に入ったので買う事にしました。今は文庫になってるのでお手軽です。気になる人は是非どうぞ。


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