先日、東京からの帰りに遭遇したのです。
一番先頭の車両に乗りました。最近はここが指定席です。
途中の駅で運転手が交代になりました。
交代の運転手は、帽子からはみ出した髪には白髪が混じり、定年を間近にしたベテランのように見えました。
入り口ドアーの閉め方・閉めた後の確認の仕方、鞄の定位置への置き方、運転レバーの装着・確認の仕方、各計器類の確認、運行表の確認、乗降ドアーの開閉ランプの確認、発車の合図、レバーの握り方、前方を見つめる眼差し、座る姿勢、すべてがカッコイイのです。動きに無駄がなく、ベテランの落ち着きを感じました。
私はそんな様子を顔はまっすぐ前に向け、目だけを運転席に向け観察していました。
彼は私の視線を当然意識していたでしよう。
中年の変な「おっさん」が空席だらけの車両で、運転席の後ろに立って、ガラスに顔を近づけて、前方を眺めているのですからね。
駅を発車してて、5分ぐらい経ったでしょうか、前方に歩行者専用の跨線橋が見えてきました。
距離が縮まり、橋の真ん中辺りに、 おばあちゃんが、 孫を抱えて立っているのが確認できました。
ふたりは、こちらに向かって手を振っていました。
よくある風景です。
その時、運転席に視線を向けると、驚いた事にその運転手は、左の手のひらを肩のところまで上げて、手を振ったのです。
口元が一瞬緩んだように見えました。きっと。橋の上にいた子にも見えたと思います。
こんなことに出会うのが楽しいのです。