歩く・見る・食べる・そして少し考える・・・

近所を歩く、遠くの町を歩く、見たこと食べたこと、感じたことを思いつくままに・・・。おじさんのひとりごと

成瀬巳喜男の『めし』で原節子を観る・・・その9 アベックと断髪

2013年09月24日 | 原節子
先週からの続きです。

前回が19日ですから5日ぶりで、“めし”の話しは“その9”となります。あと1回で切りの良い10回となりますから、たぶん、これは、10回まで続くと思います。

姪の里子を家に送って行く三千代。東京に住んで居る里子ですが、こんな寂しい処なんです。三千代の実家の方がずっと都会です。

前の晩、映画を観て遅くなって三千代の実家に泊まったことが、別の意味で頷けるような町外れの風景。


里子の実家では、庭先で鶏を飼っているのです。終戦から未だ6年、当時の食糧事情が映り込んでいるのです。


和服姿の原節子、イイです。


里子の実家でも、後妻から、
「初之輔さんから、お便りありまして」
「いいえ、あたしも出さないんですけど・・・」
「あら、そうぉ・・・でも、夫婦って、それでいいのかも知れませんねぇ」

夫婦はそれでいいれど、周りはそれでは迷惑?

「矢向の信三さんは、ホント、ものの分かったサッパリした方だから、お母様も幸せだし、あなただって気兼ねなく厄介になれるでしょうけど・・・、あの信三さんでなかったら、とても、ノウノウとしていられないでしょ」
「そう、ねぇ・・・」
「でも、もう、大阪にお帰りになった方がイイと思うわ」
「えっ」

昨晩の信三からの“布団敷け発言”そして、出掛けに里子の“一夫との結婚してもいい発言”そして、そして、後妻からの“いつまでもノウノウと厄介になって居ないで大阪に帰れ発言”もう、これは、家出もそろそろ潮時。

箒を持って掃除し出す三千代。家庭の主婦を放棄して実家に帰ったのですが、そろそろ戻りたいのです。


帰り道、鉄橋を通過する電車を見つめ、大阪に・・・、初之輔に・・・、想いを募らせる三千代。この立ち姿、なかなかイイです。


多摩川土手に向かう三千代、ここはアベックが集う場所、新之輔と恋愛中に訪れた思い出の地? 男女が仲睦まじい姿で集う場所と知りつつ向かった三千代。


すれ違う“アベック”に、


手を取り合うアベックに、肩寄せ合うアベックに、仲良く二人でボートを漕ぐ“アベック”に、周りはアベック、アベック、アベックだらけ、自分も、新之輔と、あのように・・・・・・。


そんな、甘い、甘い、時期を思い出しつつ駅に向かうと、


先日、職安の前で、夫を亡くし、幼子を抱え、失業保険の切れる不安を語っていた幼馴染みが、パーマの髪を切り落とし、駅頭で新聞を売る姿を目撃し、


幼子を養い一人生きていく強い決意の女と、そして、夫の稼ぎに不満、退屈な日常に不満、夫の自分への愛いに不満、この境遇の違いって・・・。


自分には、あのように強く生きていくのは・・・、兎に角、圧倒され、驚く三千代。


ここで、その衝撃に、“もう一度、東京で一人で生きていく決意を固めるのでした”とはならないのです。単なる女と、母になった女の違いでしようか。

今日は、ここまで。


それでは、また。


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