徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

1回飲むだけのインフル新薬「ゾフルーザ®」が登場予定(2018年5月?)

2018年02月04日 08時43分56秒 | 小児科診療
 日本全国、インフルエンザ大流行中のさなかに、少し明るい話題です。
 1回のみ内服する抗インフルエンザ薬「ゾフルーザ®」の登場。
 1回で終了、という点では吸入剤のイナビル®が現時点でもありますが、内服は朝晩5日間服用するタミフル®しかありませんでした。
 さらに、タミフル®/リレンザ®/イナビル®/ラピアクタ®はすべて作用機序が同じですが、ゾフルーザ®は作用機序が異なることが注目すべき新しい点です。
 未定ではあるものの、今まで考えられなかった“併用”も考慮されるかもしれませんね。

■ 1回飲むだけのインフル新薬、5月に発売へ
2018年02月02日: 朝日新聞
 1回飲むだけの新たなインフルエンザ治療薬「ゾフルーザ」が5月にも発売される見通しになった。ウイルスの増殖を抑えるこれまでになかったタイプ。塩野義製薬が開発した。従来の薬に耐性を持ち、効きにくくなった人にも効果が期待される。
 厚生労働省の部会が2日、製造販売を了承した。順調にいけば3月に承認され、5月にも薬価が決まり発売される。
 A型、B型のインフルエンザウイルス感染症が対象。年齢や体重によって異なる量の錠剤を1回飲む。成人の場合、1日2回、5日間飲み続けるタミフルなどと比べて使いやすいのが特徴だ。塩野義製薬によると、既存薬よりも他人にウイルスを感染させるリスクを減らせると期待される。
 国内でよく使われるタミフルなどの4種のインフル薬は、細胞内で増殖したウイルスが細胞外に広がるのを抑える。このタイプの薬が効かない耐性ウイルスが流行した時に、ゾフルーザは効果を発揮しそうだ。
 10年前には、欧州でタミフルに耐性のあるウイルスが登場し世界中に広まった。4年前には、札幌市内の患者から、タミフルなどが効きにくいウイルスが検出された。国や自治体は、従来薬に耐性をもつウイルスの調査を続けている。
 ゾフルーザは、有望な薬を早く実用化するために優先的に審査する、先駆け審査指定制度の対象になっている。



 2017年の記事には、薬剤名はまだ出ていませんが、作用機序の説明が載っていました;


■ 来シーズンには新機序の抗インフル薬登場
2017/12/17:日経メディカル



 キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬として塩野義製薬が今年10月に販売承認を申請したS-033188は経口の単回投与で、インフルエンザウイルスのmRNAの合成開始を阻害しウイルス増殖に必要な蛋白産生を抑制する。第3相臨床試験(CAPSTONE-1)の結果として2017年9月14日に公表された成績(第6回欧州インフルエンザ科学ワーキンググループ会議)によると、
(1)インフルエンザ罹病期間はプラセボの80.2時間に対し、S-033188では53.7時間に有意に短縮(P<0.0001、オセルタミビルとほぼ同程度)
(2)インフルエンザウイルス力価やウイルス排出期間はプラセボ群やオセルタミビル群よりも有意に減少、短縮
(3)平熱に復するまでの時間はプラセボ群の42.0時間に対して24.5時間と有意に短縮
(4)薬剤関連が疑われる有害事象の発生頻度はオセルタミビルよりも有意に低かった。
 本剤は、厚生労働省が先駆け審査制度対象品目に指定しているため、日本では来シーズン前に実用化すると予想される。来シーズン以降、インフルエンザ治療に大きな変革が起きる可能性が高い。



■ 「ポスト・タミフル」のインフルエンザ新薬 塩野義製薬が開発
2017.11.15:産経新聞
 パンデミック(世界的大流行)や、場合によって人の命を脅かすこともあるリスクのあるインフルエンザを1回の服用で治療できる、画期的な薬の承認申請が先月末、行われた。クスリの街、大阪・道修町に本社を置く塩野義製薬が研究開発を続けてきた新薬だ。順調に審査が進めば、来春にも厚生労働省に承認され、来シーズンの流行には販売が間に合う見通しで、その後、世界展開も視野に入れる。日本で生み出された新薬が、世界を代表するインフルエンザ治療薬になる可能性もある。(安田奈緒美)

◇ 治療を変える
 「現在、ハイリスク患者さんへの治験(臨床試験)も実施中で、今、治療薬を使っていない患者さんにも使用が拡大していく可能性がある」
 10月末に行われた塩野義製薬の平成29年9月連結中間決算発表で、手代木功社長は、新薬が発売されれば、その利便性や効果、安全性からインフルエンザ治療自体が変わる可能性を、手応えを持って指摘した。
 インフルエンザの治療薬といえば経口で1日2回5日間投与する「タミフル」が有名。ほかにも国内では、吸入型の「イナビル」や「リレンザ」、点滴の「ラピアクタ」の販売が承認されている。
 これらに共通する薬のメカニズムは、体内の細胞で増殖したインフルエンザウイルスが細胞外に放出されるのを阻害して、感染の拡大を防ぐというもの。ウイルスの増殖自体は抑えられないため、感染防止のために5日ほど外出は控える必要がある。



 これに対し、塩野義の新薬は全く異なる仕組みを持つ。細胞内でのウイルス増殖そのものを抑えてしまおうという仕組みで、これが1回の服用で治療できるという特徴の要因。ウイルス量が早く減るので、他人へ感染する可能性も低くなることが期待されている。

◇ パンデミックの懸念
 もともと、塩野義製薬は平成22年から、「ラピアクタ」を販売している。米製薬会社が開発した、このラピアクタの日本国内での販売承認を取得する過程で、「より効果の強い抗インフルエンザ薬が必要」と感じたのが、新薬開発のきっかけだったと振り返るのは医薬研究本部の山野佳則氏。医療現場では、インフルエンザのパンデミックや、タミフル耐性菌の蔓延(まんえん)への懸念が広まっていることを実感したからだ。
 そこでイメージしたのは、「短期間で患者の体内からウイルスを消失させること」。新しいメカニズムの薬の実現のために数十万もの化合物を調べ、開発の開始から承認申請まで10年以上を必要とした。

◇ 新しい基幹商品
 「グローバルで1ビリオンになれば」。手代木社長は、現在承認申請中の新インフルエンザ薬の将来的な売り上げ規模について世界で10億ドル(約1140億円)との見通しを示した。
 実は塩野義は昨年から今年にかけて、これまで成長を支えてきた高脂血症治療薬「クレストール」の特許切れを国内外で迎えている。その中で、新しいインフルエンザ薬は、売り上げ面で、クレストールの特許切れによる減少分を補うのには「十分すぎる」(手代木社長)と期待され、同社の新しい基幹商品にしていくもくろみだ。
 一方、世界での展開については、日本と台湾を除く全世界での開発で提携するスイスのロシュと、報酬額や支払時期など契約内容について、このほど見直しが行われた。臨床試験の良好な結果により、製品化の実現も見えてきたことを受けての前向きな契約変更だ。
 ロシュは「タミフル」を製造販売する世界的製薬企業。この契約変更はロシュ側の「やる気」を感じさせるものとして、塩野義がこれから進めるインフルエンザ新治療薬の世界展開への大きな弾みになる。
 インフルエンザは、人の命を明日、奪ってしまうかもしれないリスクのある感染症だ。日本発の新薬が、その脅威に敢然と立ち向かう日が近づいている。
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