徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

2019年10月25日、「イナビル吸入懸濁用160mgセット」登場

2019年10月06日 19時08分00秒 | 小児科診療
 イナビル®は2010年に発売された抗インフルエンザ薬です。
 1回吸入で完結する製剤ゆえ、患者さんに好まれています。
 しかし、うまく吸入できない就学前の小児や高齢者には使いづらい。
 1回吸入ということは、失敗がゆるされないことを意味します。

 このジレンマを解決する製剤が2019年6月に承認されました(発売は10/25予定)。
 その名は「イナビル吸入懸濁用160mgセット」。
 これは、懸濁液を電動吸入器(ネブライザー)で時間をかけて吸入する製剤です。
 喘息の吸入と同じ方法ですね。
 つまり、乳児から可能であり、病院で吸入することになります。
 そして、使用量は年齢にかかわらず同一量。

 発売されて普及すると、インフルエンザ流行期の小児科外来は吸入する乳幼児であふれる光景が目に浮かびます。
 しかし感染対策上、問題が発生します。
 隣り合わせで吸入していると、付き添い家族がインフルエンザをもらってしまう可能性があるからです。
 かといって、個室をいくつも用意できないし・・・。
 普及するには、ハードルがありそう。 
 現場での混乱必至!

□ 【NEWS】イナビル吸入懸濁用160mgセット 製造販売承認 2019.6
2019.6.24:SAGASU-DI
 現在、抗インフルエンザ剤として「イナビル吸入粉末剤20mg」が発売されています。しかし、吸入力が弱い患者であれば、吸入が不良になるとの報告がいくつかあり、吸入製剤特有の問題がありました。例えば、「イナビル吸入粉末剤20mg」は4〜6歳の患者において、製薬メーカーから提供されている吸入確認笛を用いても粉末剤の吸入が不良となり罹病期間が延長するなどの報告がありました。
 これらの背景から、2019年6月18日に「イナビル吸入懸濁用160mgセット」が製造販売承認を取得しました。この新剤型である「イナビル吸入懸濁用160mgセット」は生理食塩液を加えると白色の懸濁液となり、ジェット式ネブライザを用いて単回吸入投与するという薬剤です。「イナビル吸入懸濁用160mgセット」にはネブライザ吸入器が付属しており、事前にコンプレッサーとの適合性を確認する必要がありそうです。どのようなネブライザ吸入器が付属してくるのかは現在のところ不明です。 
 「イナビル吸入粉末剤20mg」は薬剤師が薬局内で吸入させるケースが多かったとは思いますが、「イナビル吸入懸濁用160mgセット」はネブライザーがある病院内で吸入させることが多くなる??のでしょうか。
 ネブライザー式のため、「イナビル吸入粉末剤20mg」が吸入できない5歳未満の小児や高齢者など吸入力が弱い患者が対象となります。また「イナビル吸入粉末剤20mg」は苦味が強かったため、ネブライザーであれば、そのあたりも改善されそうです。
 さらに「イナビル吸入粉末剤20mg」は添加剤として乳糖水和物を含有していたため、乳製品に対し過敏症の既往症がある患者は、慎重投与とされていたが、「イナビル吸入懸濁用160mgセット」は添加されておらず、慎重投与扱いにはならないこともポイントの一つになりそうです。

イナビル吸入懸濁用160mgセット
・1バイアル中 ラニナミビルオクタン酸エステル水和物 166.1mg(ラニナミビルオクタン酸エステルとして 160mg)
・添加剤 チロキサポール
・生理食塩液を加えると白色の懸濁液となる。
・A型又はB型インフルエンザウイルス感染症の治療
・成人及び小児には、ラニナミビルオクタン酸エステルとして160mgを日本薬局方生理食塩液2mLで懸濁し、ネブライザを用いて単回吸入投与する。
・本剤を吸入する際には、ジェット式ネブライザを使用すること。添付のネブライザ吸入器を使用する際に、事前にコンプレッサーとの適合性を確認すること。
・1包装 : 5バイアル(ネブライザ吸入器 5個添付)
・海外での販売はなし
・ネブライザーに懸濁した薬液を投入し、霧状にし、自発呼吸で薬剤を吸入
・5歳未満の小児や、気管支喘息など肺機能が著しく低下している呼吸器疾患を合併する患者などを対象
・既存薬では添加剤として乳糖水和物を含有していたため、乳製品に対し過敏症の既往症がある患者は、慎重投与とされていたが、今回の新製剤には添加されておらず、慎重投与扱いにはならない。
(参考 : 薬事・食品衛生審議 イナビル吸入懸濁用160mgセット)



自発呼吸での単回吸入で治療が完結する抗インフルエンザ薬
2019/10/4:日経メディカル)より抜粋
北村 正樹(東京慈恵会医科大学附属病院薬剤部)
 2019年9月4日、抗インフルエンザウイルス薬ラニナミビルオクタン酸エステル水和物(商品名イナビル吸入懸濁用160mgセット)が薬価収載された。本製剤は6月18日に製造販売が承認され、10月25日に発売が予定されている。適応は「A型又はB型インフルエンザウイルス感染症」、用法用量は「成人及び小児には、160mgを生食2mLで懸濁し、ネブライザを用いて単回吸入」となっている。なお、同一成分の薬剤としては、2010年10月より吸入粉末製剤が臨床使用されている。
 ノイラミニダーゼ阻害薬ラニナミビルは、インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼを選択的に阻害し、新しく形成されたウイルスの感染細胞からの遊離を阻害することにより、ウイルスの増殖を抑制する。ただし、既存の吸入粉末製剤は、5歳未満の小児、肺機能が著しく低下している呼吸器疾患(気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患[COPD]など)を合併する患者、吸入手技の理解が不足している患者などでは使用が困難であった。また、添加剤として乳糖水和物を含有していることから、乳製品に対する過敏症の既往歴のある患者には慎重投与となっていた。
 本製剤は、添加剤に乳糖水和物を含まず、既存の吸入粉末製剤の使用が困難な患者でも自発呼吸での吸入が可能な懸濁用製剤である。医療現場での利便性および感染予防対策を考慮し、単回使用のネブライザ吸入器を梱包したコンビネーション製品となっている。インフルエンザ感染症患者を対象とした国内第3相試験において、本製剤の有効性と安全性が確認された。2019年9月現在、海外では販売されていない。
 薬剤投与による副作用として、嘔吐(0.5%未満)などが認められている。重大な副作用としては、ショック、アナフィラキシー、気管支攣縮、呼吸困難、異常行動、皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死融解症、多形紅斑を生じる可能性がある。
 薬剤使用に際しては、本薬剤は既存の吸入粉末製剤とは異なり、インフルエンザ感染症の予防には適応を有していない。

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