徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

生肉は危険!…をちょっと詳しく。

2024年12月15日 07時18分20秒 | 小児科診療
「生肉は食中毒の可能性があるから危険!」とTVでよく耳にします。
それが生肉全部なのか、動物の種類による一部なのか、
あまり記憶に残りません。

わたし的には、生で食べる習慣のない豚肉はおそらくリスクが高いのではないか、
レア(半生)で食べることもある、馬(馬刺し)と牛(レアのステーキ)
はリスクが低いのかな?となんとなく思っています。
鶏肉はどうなんだろう?
鳥刺しという言葉はあるけど、あまり一般的ではありませんね(食べたことがありません)。

この辺の事情を解説した記事が目に留まりましたので紹介します。

<ポイント>
・肉の生食が危険なのは、鮮度だけの問題ではなく、ウイルスや細菌、寄生虫に汚染されていることが多く、健康に重大な影響を与えるリスクが高いから。例えば、肉類はE型肝炎ウイルス、腸管出血性大腸菌、除去することが難しい寄生虫やカンピロバクターに汚染されている。
豚肉は、寄生虫やE型肝炎ウイルスに汚染されていることが広く知られているので、生食できないのは常識。生での提供が想定されていないため、法律でも禁止されてもいない。
馬肉はO157などの腸管出血性大腸菌による汚染がほとんどないため、獣肉としては例外的に生レバーの販売が許可されている。調理器具の加熱消毒や肉表面のトリミング、寄生虫であるサルコシスティス・フェアリーを死滅させるための-20℃以下で48時間以上の凍結などの厳しい基準をクリアしたものだけが生食用として販売可能。
牛肉には腸管出血性大腸菌などの病原性大腸菌が常在菌として存在するため、生レバーを食べることはできない。一方で寄生虫のリスクは低いため、衛生的な処理をした生食用牛肉は冷凍せずに食べることが可能。ただし、衛生的な処理をした生食用の牛肉であっても、食中毒の危険性があるので、小さな子どもや高齢者には食べさせない。
鶏肉はカンピロバクターという細菌に汚染されていることが多いもの。近年、鶏の生食による食中毒が増加したことにより、厚生労働省は注意を呼びかけている。鶏の内臓肉は、どの産地のものであろうとも生で食べないように。
猪肉鹿肉熊肉などのジビエ等は、さまざまな寄生虫やE型肝炎ウイルス、腸管出血性大腸菌などに汚染されている確率が高いので、どの部位でも絶対に生食しないように。
・基本的に肉は生で食べるものではない。火の通った肉は、刺し身のような透明感のある状態にはならない。肉による食中毒を防ぐためには、一部の「生食用」以外の肉はしっかり加熱することが何より重要。

うん、やはり豚肉は危険なのですね。
鶏肉はグレーゾーン…
まあ、どんな肉でも生で食べるのはゼロリスクではないので、食べないのが無難。


▢ なぜ生肉の食中毒が後を絶たないのか…管理栄養士が教える「絶対生はダメな肉vs.低リスクな肉と店」の特徴ゼロリスクはないが低リスクなものならある
成田 崇信:管理栄養士、健康科学修士
PRESIDENT Online:2024.12.13)より一部抜粋(下線は私が引きました);

生肉による食中毒が相次いでいる。どうしたら安全に食べられるのだろうか。管理栄養士の成田崇信さんは「基本的に肉は生で食べるものではないが、比較的安全だといえるものもいくつかはある」という――。
・・・
▶ 肉の生食による食中毒事件
2011年、ある焼肉チェーン店において、牛の生肉の「ユッケ」などを食べた人やその家族に腸管出血性大腸菌による食中毒が発生したのを覚えているでしょうか。富山、福井、石川、神奈川の4県6店舗で合計181人が食中毒を発症するという大規模な事件で、残念なことに5人もの方が亡くなりました。・・・
この事件をきっかけに「食品衛生法」が改正され、牛レバーや生食に適さない牛肉の生のままでの提供が禁止されました。しかし、いまだに一部の飲食店では、生または加熱不十分な牛レバーが提供されていたり、たびたび牛の生肉による食中毒が報告されています。
今年8月には千葉県のハンバーグ店で、加熱不十分な「飲めるハンバーグ」を食べた人のうち34人が腸管出血性大腸菌が原因の食中毒になりました。最近では、提供自体には罰則のない鶏肉の刺身やレバーによる食中毒のニュースもよく見かけます。これまで何度も危険性が指摘されているにもかかわらず、どうして生肉による食中毒はなくならないのでしょうか。

▶ 鮮度のいい肉でも生食は危険
昔、日本には牛や鶏などの獣肉を生食する習慣はありませんでした。ところが、低温流通や冷凍技術の向上によって鮮度のよい肉が手に入りやすくなったことで、魚の刺身と同じように肉を生で提供する「ユッケ」や「レバ刺し」などの料理が出されるようになったのだろうと思います。
しかし、肉の生食は基本的にはおすすめできません。肉の生食が危険なのは、鮮度だけの問題ではなく、ウイルスや細菌、寄生虫に汚染されていることが多く、健康に重大な影響を与えるリスクが高いからです。例えば、肉類はE型肝炎ウイルス、腸管出血性大腸菌、除去することが難しい寄生虫やカンピロバクターに汚染されていることがわかっています。
特に豚肉は、寄生虫やE型肝炎ウイルスに汚染されていることが広く知られているので、生食できないのは常識です。生での提供が想定されていないため、法律でも禁止されてもいません。そのため牛の生レバーが禁止されると、代替品として豚の生レバーが提供されて問題になったこともありました。
これは肉の生食が急速に広まったこと、新鮮な肉であれば生で食べても大丈夫という根拠のない思い込みが招いた事例といえるでしょう。特にE型肝炎や腸管出血性大腸菌については、感染した人の糞便や嘔吐物を介し、他の人へも感染を広げることもあり、自己責任だけでは済まないという側面もあります。

▶ 比較的安全に食べられる生肉とは
では、生肉はどれも危険なのでしょうか。じつは、ある程度は安全に食べられるだろう生肉もあります。ただし、100%安全ということではありません。提供する側がルールを守っていれば、一般の消費者が食べてもまあ大丈夫だろうというレベルです。

生食用食肉の衛生基準を満たした馬肉および馬レバー
馬肉はO157などの腸管出血性大腸菌による汚染がほとんどないため、獣肉としては例外的に生レバーの販売が許可されています。
調理器具の加熱消毒や肉表面のトリミング、寄生虫であるサルコシスティス・フェアリーを死滅させるための-20℃以下で48時間以上の凍結などの厳しい基準をクリアしたものだけが生食用として販売可能です。ただし、冷凍処理を怠った肉が提供され、寄生虫による食中毒が発症した事例があります。きちんと冷凍処理がされていることを確認しましょう。

生食用食肉(牛肉)の規格基準を満たした牛肉
牛肉には腸管出血性大腸菌などの病原性大腸菌が常在菌として存在するため、生レバーを食べることはできません。一方で寄生虫のリスクは低いため、衛生的な処理をした生食用牛肉は冷凍せずに食べることが可能です。
ただし、衛生的な処理をした生食用の牛肉であっても、食中毒の危険性があるので、小さな子どもや高齢者には食べさせないようにしましょう。また、飲食店で提供する場合には店舗内のわかりやすい場所に食中毒のリスクがあることを表示する義務があります。国が安全だとお墨付きを与えているわけではないという理解が大切だといえます。

▶ 安全性グレーゾーンの「鳥刺し」
では、九州地方で伝統的に食べられている「鳥刺し」はどうでしょうか。じつは鶏肉はカンピロバクターという細菌に汚染されていることが多いもの。近年、鶏の生食による食中毒が増加したことにより、厚生労働省は注意を呼びかけています。安全とはいえないまでも比較的低リスクで食べられる鶏肉は、以下の基準を満たしたものだけだと私は考えます。
鹿児島県独自の衛生基準を遵守した鶏肉
鹿児島県では、屠畜から調理加工まで独自の厳しい基準を満たしたものだけを「生食用」として提供・販売することができるという取り組みを行っています。この独自の基準が、実際に食中毒予防に有効であるかどうかを評価するためには、鹿児島県内で発生した食中毒事例を確認する必要があります。厚生労働省の食中毒統計を調べたところ、過去10年間、生の鶏肉を食べたことによる食中毒の事例は一件も報告されていませんでした。鹿児島県の基準を満たした鶏肉については、安全とはいえないまでも、根拠なく危険と非難されるものでもないと筆者は考えています。しかし、同じく鶏の生食文化のある隣の宮崎県の食中毒統計を調べたところ、鶏の生食による食中毒事故は、2017年以降に5件の報告があり、安全とはいえない状況です。
独自基準を設定している鹿児島県でも、砂肝やレバーなどの生食は許可されていません。鶏の内臓肉は、どの産地のものであろうとも生で食べないようにしてください。
また、この他の猪肉や鹿肉、熊肉などのジビエ等は、さまざまな寄生虫やE型肝炎ウイルス、腸管出血性大腸菌などに汚染されている確率が高いので、どの部位でも絶対に生食しないようにしましょう。

▶ 生のような見た目や食感に要注意
最近では、調理の工夫によって、なるべく生のような食感や風味を再現しようとする取り組みもありますが、ここにも思わぬ落とし穴があります。
例えば、生に近い食感を残すため、十分な加熱がなされていないものを「低温調理肉」として提供している事例もあるので注意が必要です。鶏肉であれば、低温調理でも十分な加熱が行われた肉の断面はピンクがかった肉色は残ったとしても、透き通るような色合いやゼリーのような弾力ある食感は残りません。また、鰹のたたきのように加熱部分と生部分の明確な境目があるものは加熱が不十分である可能性が高いでしょう。他の種類でも同じですが、しっかり火の通った肉は、刺し身のような透明感のある状態にはならないのです。ニュースで話題になっている鰹のタタキのような断面の「レアチャーシュー」は明らかに危険です。
・・・
最近、食肉加工業者が低温調理品として販売していた肉やレバーが、十分な加熱条件を満たしていなかったという報道がありました。これも生に近い食感を訴求するため行われていたものと考えられます。生のような見た目、食感でないかどうか十分な注意が必要です。

▶ 生食用以外はしっかりと加熱を
肉による食中毒を防ぐためには、一部の「生食用」以外の肉はしっかり加熱することが何より重要です。牛のかたまり肉でも、外側はしっかり焼くようにしましょう。また、細菌が入り込みやすい挽き肉は、よく焼く必要があります。
ただし、肉は70℃以上の熱が加わると、結合組織が収縮し、細胞内に含まれていた水分が旨味とともに流れ出し、そのまま熱を加え続けると食感もパサついてしまいがちです。低温でじっくり焼いたほうがジューシーに仕上がるでしょう。低温調理器具を使うという方法もありますが、先に述べたように中まで火が通っていないと危険なので気をつけてください。飲食店で提供された料理の肉が生焼けだったり、透明感のあるピンク色が残っている場合には、焼き直しをお願いするのがいいでしょう。
最後に、基本的に肉は生で食べるものではありません。生で食べる場合は、より品質の保持に気を配る必要があり、外側を大きくカットするなどの余分な手間やコストがかかるため、通常よりも高い値段で提供されて当然です。安価で販売されていたり、店内に認証などの表示がなかったりする場合は危険だと考えてください。また、いずれにしても生肉を食べる以上、食中毒のリスクはあるということを知っておきましょう。


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リンゴ病流行中〜妊婦さんは要注意!

2024年12月15日 06時54分59秒 | 小児科診療
リンゴ病(医学的には伝染性紅斑という病名)はウイルス感染症です。
ほっぺたがリンゴのように赤くなり火照るのが特徴で、
手足にも淡いまだら状の発赤が出現します。
高熱が出ることは少なく、
皮疹はかゆみも痛みも乏しく、
皮疹が出現する頃には他人にうつす感染力もほぼ無くなっているため、
隔離義務もありません。

な〜んだ、たいしたことないじゃん…
と思いきや、妊婦さんが罹ると大変です。
お腹の赤ちゃんに影響が出るのです。

そして大人が感染しても、
子どもほどはっきりほっぺたの赤みが出ることは少なく、
熱が出て節々が痛いという、インフルエンザのような症状が出ます。

というわけで“あなどれない感染症”なのです。

私は子どもの伝染性紅斑を診療した際は、
付き添いのお母さんに妊娠の有無を確認し、
患児が日常的に接している妊婦さんがいるかどうかを確認し、
もしいたら産科主治医に報告するよう指示しています。

詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。

日本では現在、伝染性紅斑が流行中です。
それを扱った記事を紹介します。
妊婦さんのリスクを具体的な数字を提示して説明してありました;
妊婦が初めて感染した場合、6%で流死産や子宮内胎児死亡を、4%で胎児貧血や胎児水腫を引き起こす可能性がある

▢ 伝染性紅斑が感染拡大、日本産婦人科感染症学会などが注意喚起
2024/12/13:日経メディカル)より一部抜粋(下線は私が引きました);

 2019年を最後に流行が確認されていなかった伝染性紅斑が、今年は再び猛威を振るっている。2024年第48週(11月25日~12月1日)の定点当たり報告数は0.89と、直近で流行した2019年のピーク(第2週[1月7~13日]、定点当たり1.00)にも届く勢いだ。伝染性紅斑は妊婦が感染すると流産のリスクや胎児への影響が懸念されることから、日本産婦人科感染症学会が12月7日に、日本産科婦人科学会が12月10日に一般に向けて注意を呼びかける文書をウェブサイトで公開した。
・・・
 都道府県別に見た第48週の定点当たり報告数で多いのは、埼玉県(3.49)、東京都(3.02)、神奈川県(2.17)、千葉県(2.10)、青森県(1.68)の順。日本産科婦人科学会は文書の中で、現在、関東を中心に流行が見られており「2025年は全国的な流行が危惧される」と注意喚起している。
 伝染性紅斑は、ヒトパルボウイルスB19を病原体とする、小児中心の流行性発疹性疾患だ。頬に蝶翼状の紅斑が出現してリンゴのように赤くなることから「リンゴ病」とも呼ばれる。頬以外にも手足や胸腹背部に発疹が表れることもある。1週間前後でこれらの発疹は消失するが、症状が長期化したり、一度消えた発疹が短期間のうちに再発したりするケースが見られる。成人の場合は頬の発疹症状は少ない一方で、関節痛をはじめとする全身痛を訴えるのが特徴だ。
 主な感染経路は飛沫感染や接触感染で、頬の発疹が出現する7〜10日ほど前に微熱や感冒様症状などの前駆症状が見られ、この時期にウイルスの排泄量が最も多くなる。一方で、成人が伝染性紅斑にかかったときは症状による判断が難しいため、伝染性紅斑患者との接触の有無や職業などの問診に加え、血中のIgG(保険未収載)、IgMの測定により感染を判定する。日本産婦人科感染症学会の文書では、IgMが陽性の妊婦の場合、最近初めて感染した可能性があるため、抗体検査や超音波検査を受けることを勧めている。
 また同学会は文書で、日本人妊婦におけるヒトパルボウイルスB19の抗体保有率は20〜50%であり、妊婦が初めて感染した場合、6%で流死産や子宮内胎児死亡を、4%で胎児貧血や胎児水腫を引き起こす可能性があると説明。妊娠後期よりも妊娠初期の感染が、これらのリスクを高めることから、こまめな手洗いやうがい、マスクの使用などで感染を防ぐよう呼びかけている。
 厚生労働省も12月6日に医療機関や自治体に向けて、伝染性紅斑の増加に注意喚起に関する事務連絡を公開している。


【参考】
妊婦さんはパルボウイルスB19によるリンゴ病(伝染性紅斑)に注意しましょう(日本産婦人科感染症学会)
パルボウイルスB19によるリンゴ病(伝染性紅斑)はお腹の赤ちゃんに影響することがあります(日本産科婦人科学会)
伝染性紅斑の増加に伴う注意喚起について(厚労省)


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マイコプラズマに罹ったら何日休む?

2024年11月20日 07時39分31秒 | 小児科診療
マイコプラズマの流行が話題になっています。
迅速検査で陽性になった患者さんから、
「いつから学校へ行けますか?」
という質問をよく受けます。

その答えは…
「症状が治まって元気になったら」
という、誠にアバウトなものになってしまいます。

その辺の事情を解説した記事を紹介します。
あ、この記事、以前にも紹介したことがありますね。
今回は「いつまで休むか?」に焦点を当ててみます;

<ポイント>
マイコプラズマの隔離期間(出席停止期間)は…
✓ 学校保健安全法:感染のおそれがないと認めるまで
✓ こども家庭庁:発熱や激しい咳が治まっていること
✓ 日本小児科学会:発熱や激しい咳が治まり全身状態がよいこと

…わかったようなわからないようなファジーな記載ですね。
マイコプラズマの感染可能期間(他人にうつる期間)は4〜6週間です。
長いですね〜。
もし「感染の恐れがない」を基準にすると、1ヶ月半学校を休まなくてはならなくなります。
これは大変…学校保健安全法の基準は厳しすぎるかもしれません。

子ども家庭庁や日本小児科学会のアバウトな基準の方が現実的です。
簡単にいうと「熱とひどい咳が治まり元気なら登園登校可」ということ。
まあ、一般の風邪と同じ感じに落ちつきます。


▢ 急増中のマイコプラズマ 「感染したら何日間休む?」
2024.10.24:Yahoo! ニュース)より一部抜粋(下線は私が引きました);

・・・もしもマイコプラズマに感染した場合、どのくらい学校や仕事を休むことになるのでしょうか?・・・

▶ マイコプラズマの症状

 マイコプラズマは、上気道炎や気管支炎などの軽症にとどまることも多いです。発熱、のどの痛み、強めの咳などが出現します。痰の少ない乾いた咳になることが多いです。

<マイコプラズマ感染症の特徴>

✓ 肺炎を起こすことがある
✓ 幼児期から学童期の子どもに多い
✓ 咳が3〜4週間長引くことがある
✓ 感染しても血液検査で白血球芽上昇しにくい
✓ 抗菌薬が効きにくい耐性マイコプラズマが増えている

肺炎を起こすと、咳が重症化・長期化し、全快までに長期間を要することがあります(図3)。


図3.マイコプラズマ肺炎の経過(筆者作成、イラストは看護roo!より)

・・・

▶ いつまで休むか?

 マイコプラズマ肺炎の感染症法上の分類は、インフルエンザや新型コロナと同じ5類感染症です。学校保健安全法においては、新型コロナとインフルエンザは第2種学校伝染病、マイコプラズマ肺炎は第3種学校伝染病に指定されています。

 学校保健安全法では、インフルエンザは「発症後5日を経過し、かつ解熱後2日が経過するまで」、新型コロナは「発症後5日を経過し、かつ症状が軽快した後1日を経過するまで」という出席停止期間がもうけられていますが、マイコプラズマ肺炎は「感染のおそれがないと認めるまで」とされており、少しふわっとしています。

 こども家庭庁では「発熱や激しい咳が治まっていること」(3)、日本小児科学会では「発熱や激しい咳が治まり全身状態がよいこと」(4)が登校の目安とされています。

 働いている大人の場合、学校保健安全法は適用されませんので、常識的な判断で出勤することになります。

・・・

<参考>

(1) 感染症発生動向調査週報.2024年第40週(第40号)(URL:https://www.niid.go.jp/niid/images/idsc/idwr/IDWR2024/idwr2024-40.pdf)

(2) 特効薬が効かない「耐性マイコプラズマ」が増えているって本当? 感染予防策は(URL:ttps://news.yahoo.co.jp/expert/articles/9024c84478cb83e8e2b138a91cad44437c72e593)

(3) こども家庭庁.保育所における感染症対策ガイドライン (URL:https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e4b817c9-5282-4ccc-b0d5-ce15d7b5018c/cd6e454e/20231010_policies_hoiku_25.pdf)

(4) 日本小児科学会.学校、幼稚園、認定こども園、保育所において予防すべき感染症の解説(URL:https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20240513_yobo_kansensho.pdf)

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2024年秋の花粉症、ピークはこれから?

2024年11月20日 05時49分30秒 | 小児科診療
11月に入ってから、
「花粉症症状が悪化した」
と受診する患者さんが多くなりました。
「はて、ブタクサの季節は終わったはずだけど…」
と不思議に思っていたところに、以下の記事が目に留まりました。

夏が長引いて暖かい日が続いたため、
秋の花粉飛散が遅れたらしい。

「ピーク(本格飛散)はこれから」
という文言がありますが、
そこは週刊誌という特徴を差し引いて読む必要があるかもしれません。

<ポイント>
  • 秋の花粉症は、ブタクサ、ヨモギ、カナムグラなどの草の花粉が原因で、咳やくしゃみ、鼻詰まりなどの症状が出る。スギやヒノキの花粉症とは異なり、ブタクサの花粉は小さいため気道に侵入しやすく、咳の症状が特徴的である。
  • 例年9~10月がピークだが、今年は猛暑の影響で夏に草木が生い茂り、花粉量が増加している。また、残暑の影響で遅れてピークを迎えている。市販のかぜ薬では改善せず、専門医による抗ヒスタミン薬の処方が必要。
  • さらに、寒暖差の激しい時期には寒暖差アレルギーの発症も懸念されるため、咳や喉の痛みがある場合は専門医に相談することが重要。マイコプラズマ肺炎、秋の花粉症、寒暖差アレルギーと、秋は呼吸器系の症状が複雑に絡む季節である。

▢ 身近な草が原因で咳や気管支症状の恐れが これから本格化する「秋の花粉症」にご用心
2024年11月19日 週刊実話Web)より一部抜粋(下線は私が引きました);
・・・花粉が飛ぶのは春だけではない。秋も要注意だ。
「春の花粉症の原因はスギやヒノキの樹木ですが、秋の花粉症はブタクサ、ヨモギ、カナムグラが代表格で、公園や空き地などに生息する草なんです。ヨモギとカナムグラの花粉の大きさはスギとヒノキとほぼ変わらない。問題は花粉が小さいブタクサ。この花粉を空気と一緒に吸い込むと、喉を通過して気道に侵入しやすい。それが原因でアレルギー反応を起こし、咳の症状に繋がる。草の花粉症は咳が出やすいのが特徴です。喘息は花粉症でも増悪(悪化)を起こしますよ」(医療ジャーナリスト)
 例年、秋の花粉症は全国的に9〜10月がピークとされるが、昨年同様、今年も猛暑の影響で夏に草木が生い茂った。
 そのため秋の花粉の量は多くなる傾向にあったところに残暑が続いた。最高気温がやっと25度を下回るようになってから花粉が飛び始めたため、秋の花粉症は遅れてピークを迎えているのだ。

▶ 市販薬での治療は困難
 「春の花粉症はくしゃみ、鼻水、鼻詰まり、目のかゆみなどです。秋の草の花粉症は咳も出るため、かぜと間違われやすいので、市販のかぜ薬を飲む人が多いんです。しかし、市販のかぜ薬では治りません。喉に痛みが出たら専門医に診てもらうことです。秋の花粉症も春のそれと同じく、治療の柱は抗原となる花粉を回避しながら、抗ヒスタミン薬などの服用です。また、症状が出ているのに秋花粉のアレルギー反応がなかったら、寒暖差アレルギーを疑うべきです」(『藤巻耳鼻咽喉科医院』の藤巻豊院長)
 日々の気温が乱高下すると、自律神経が乱れ、寒暖差アレルギーを発症しやすくなるという。
 マイコプラズマ肺炎、秋の花粉症、寒暖差アレルギー…とは実にやっかいだ。

「週刊実話」11月28日号より

・・・ちなみに「寒暖差アレルギー」という医学用語はありません。
慢性のアレルギー性鼻炎患者さんは鼻粘膜が敏感になっており、
それが冷たい空気に反応して鼻症状が出やすいため、
“寒暖差アレルギー”というわかりやすい言葉で表現しているモノと思われます。

そして慢性のアレルギー性鼻炎患者さんの原因の多くはダニアレルギーです。

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ナッツを食べたらアナフィラキシー!

2024年11月19日 07時10分06秒 | 小児科診療
なにかと話題のナッツアレルギー。
とくに現在進行形でクルミアレルギーが増加の一途を辿り、
ピーナッツアレルギーを追い抜いたことが、
アレルギー専門医の中で問題視されています。

ただ、ナッツアレルギーとひとくくりにすると、
“漠然とした怖さ”しかイメージされません。

ある程度整理して理解しておく必要があると思います。

たとえば、ピーナッツはナッツという名前がついていますが、
木の実ではなく豆に分類されるので、ナッツではありません。

また近年、ナッツのアレルゲン成分(コンポーネント)が詳しく分析されるようになり、
一つの食材に複数のアレルゲン・コンポーネントが含まれていることが知られるようになりました。
アレルゲン・コンポーネントにはアレルギー症状を起こしやすいモノ、起こしにくいモノなど、
様々なモノが存在します。

アレルゲン・コンポーネントのうちいくつかは、
保険診療で検査できるようになりました。
なので以前よりナッツアレルギーの検査が進歩したことになります。

それを反映した記事を紹介します。

▢ 木の実でアナフィラキシー、原因食物を確定する検査は?
2023/06/19:ケアネット)より一部抜粋(下線は私が引きました);

【症例】2歳の男児。鶏卵アレルギーの既往があるが、現在は加熱卵4分の1個程度を摂取している。生まれて初めてクルミの入ったクッキーを食べ、15分後に口唇腫脹、顔から体幹に広がる紅斑、25分後に喘鳴と呼吸困難を生じたため救急外来を受診。アナフィラキシーとしてアドレナリン0.1mg筋肉注射、生食の点滴、抗ヒスタミン薬にて症状は消失し、念のために1泊入院した。

Q1.原因食物を確定するために有用な特異的IgE検査はどれか?
1.ω5-グリアジン
2.Ara h 2
3.Jug r 1
4.Ana o 3

A.正解は 3
小児における木の実類アレルギーは急増しており、幼児期のアナフィラキシー受診患者において、原因食物のトップを占めるまでに至っている。
本例は、クルミ初回摂取によるアナフィラキシーが強く疑われる。鶏卵、牛乳、小麦アレルギーがないことは問診で確認することを前提として、クルミ特異的IgE抗体が陽性であれば診断はほぼ確定的といえる。さらに、より特異度の高いコンポーネント検査として、Jug r 1特異的IgE抗体検査も併用しておきたい。
クルミ以外にも、ピーナッツのAra h 2、カシューナッツのAna o 3は、いずれも高い陽性的中率が得られるため、検査が陽性であればほぼ診断が確定したものと考えてよい。なお、ω5-グリアジンは小麦のアレルゲンコンポーネントである。

Q2.本患児に対する今後の指導について正しいのはどれか?
1.よりリスクの高いピーナッツも、念のため除去する
2.クルミに加えて、ペカンナッツも除去する
3.すべての木の実類を除去する
4.治療のため、このクッキーをごく少量から食べ続ける

A.正解は 2
ある木の実にアレルギーを持つ患者が、他の木の実にも反応する確率(交差反応性)は、約20〜40%と報告されている。したがって、特定の木の実にアレルギーがある患者に、一律にすべての木の実やピーナッツを除去させることは、診断上は正しくない。ただし、同じクルミ科に属するクルミとペカンナッツ、ウルシ科に属するカシューナッツとピスタチオは、ほぼ100%交差反応するため、この組み合わせだけは同時に除去する指導が必要である。
実臨床の中では、他の木の実類アレルギーの有無に関する鑑別診断、アドレナリン自己注射薬の処方も考慮した生活指導、保育所や学校給食における対応など、単に除去にとどまらないさまざまな指導が必要となる。また、医学的な診断を理解したうえで、子供が小さいうちはすべての木の実を食べないように教育する選択肢も考えられる。さらに一部の専門施設からは、リスク評価の経口負荷試験から経口免疫療法の有効性も報告されている。

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