投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2009年 2月 8日(日)01時45分14秒
今日は少し予定を変えて、小学館「日本の歴史」シリーズの最新刊、小松裕著『「いのち」と帝国日本』を読んでみました。
http://skygarden.shogakukan.co.jp/skygarden/owa/sol_detail?isbn=9784096221143
小松氏は、
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熊本大学教授。1954年山形県生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(文学)。専攻は日本近代思想史。田中正造と足尾銅山鉱毒事件の研究に三〇年以上取り組み、田中正造の思想を軸に日本近代思想の可能性を追究している。在日朝鮮人史の研究や、女性史・ジェンダー論にも深い関心を寄せる。著書に『田中正造 21世紀への思想人』(筑摩書房)、『田中正造の近代』(現代企画室)、共編著に『「韓国併合」前の在日朝鮮人』、『「韓国併合」直後の在日朝鮮人・中国人』(いずれも明石書店)など。
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という方だそうで、章立ては、
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はじめに 「いのち」の序列化
第一章 「いのち」と戦争
第二章 「いのち」とデモクラシー
第三章 「いのち」とアジア
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となっていて、独特の配列ですね。
また、一応通史でありながら政治・経済の叙述は非常に希薄で、「いのち」が大切、差別は駄目、天皇制反対、絶対平等という見地から、帝国日本の底辺の民衆を描き、また帝国日本へのアジアの民衆の抵抗を描いています。
ま、明石書店でいっぱい本を出している人だから、どうせあまり面白くないのだろうな、という偏見を抱きつつ読み進めると、やっぱりひたすら生真面目で面白くはないのですが、知らないことがそれなりにあって、けっこう役には立ちますね。
もちろん、同じ事実を見る場合であっても、私と理解が異なる点は多々あります。
例えば、
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軍隊ほど階級差が歴然としている社会はない。日清戦争でもそうであったが、殊勲を立てた従軍者に与えられる金鵄勲章のランクも、将校と兵卒では大きな違いがあった。将校では金鵄勲章さえもらえれば最低でも三〇〇円以上の年金が保障された。殊勲甲の将官では一〇〇〇円になった。ところが、兵卒は、殊勲甲に該当する功労を挙げても、二〇〇円の年金しかもらえなかった。
さらに、戦死者に対する特別賜金も格差が歴然としていた。将官は五〇〇〇円から六〇〇〇円、佐官は二五〇〇円から四〇〇〇円、尉官は一一〇〇円から一八〇〇円であったのに対して、兵卒は、上等兵が五〇〇円、一等卒が四七〇円、二等卒が四四〇円であった。同様に寡婦扶助料にも大きな差があった。兵卒のいのちは、かように軽かったのである。(p100)
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とありますが、最小と最大の差が年金で5倍、戦死者に対する特別賜金で11~13倍程度というのは、本当に「大きな差」なのか。
当時の人々は、将軍と一兵卒の差が10倍ちょっとの点を見て、「兵卒のいのちは、かように軽かった」と思ったのか。
私としては、むしろ、明治の軍隊はずいぶん平等な社会だったのだなあ、という感じがします。
少なくとも日清戦争当時の中国軍人の給与体系、日露戦争当時のロシア軍人の給与体系との比較くらいはないと、著者の見解にはなかなか賛同しがたいですね。
>筆綾丸さん
>福島正夫
名前しか知りませんでした。
「早稲田大学図書館報」に詳細なプロフィールが載っていますが、何故かタイトルに「福島正夫(1906-1939)」とあって、没年が思いっきり間違ってますね。
正確には1989年没で、半世紀ずれてます。
http://www.wul.waseda.ac.jp/PUBS/fumi/54/54-14.html
>この猫
次はボブスレーに挑戦してほしいですね。