学問空間

「『増鏡』を読む会」、第9回は2月22日(土)、テーマは「上西門院とその周辺」です。

中林真幸『近代資本主義の組織』

2018-11-13 | 松沢裕作『生きづらい明治社会』
投稿者:鈴木小太郎 投稿日:2018年11月13日(火)09時27分3秒

10月13日に松沢裕作氏の『生きづらい明治社会』について最初の投稿をして以降、近代製糸業の勉強を少しずつ進めて来たのですが、中林真幸氏の『近代資本主義の組織─製糸業の発展における取引の統治と生産の構造』(東大出版会、2003)をもっと早く読んでおくべきだったな、と少し後悔しています。

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資本主義的な経済発展はなぜ可能であったのか? 諏訪郡の製糸業において形成され,誘因制御に基づく品質管理・賃金制度を有した効率的な組織と,優良製糸家の適切な監視と選抜的な救済を行った金融制度を明らかにすることで,動的な経済発展を成し遂げた近代資本主義の実像に迫る.

主要目次
序章
第1部 産業組織の再編
第1章 国際市場の構造変化
第2章 蚕糸業の再編
第3章 輸送基盤の整備と原料市場の統合
第2部 工場制工業の発展
第4章 近代製糸業の勃興
第5章 賃金体系による誘因制御
第6章 労働市場における取引の統治
第3部 循環的な成長と金融制度
第7章 「荷為替立替金」供給制度の形成
第8章 「原資金」供給制度の形成
第9章 景気循環と金融機構
終章


『あゝ野麦峠』みたいに個別エピソードをいくら集めても諏訪の製糸業の実像は分からない、国際環境を含め、その全体像を知りたいとかねてから思っていたのですが、近代経済史の素養に乏しいので、あちこち遠回りしてしまいました。
東條由紀彦氏の『製糸同盟の女工登録制度』(東大出版会、1990)など、晦渋な文体でありながら一種異様な迫力があって、その女工登録制度についての説明にある程度納得したのですが、中林氏のさっぱりした解説の方が分かりやすいですね。
個人で地味に調べている場合には無駄足はつきもので、途中での収穫もけっこうありましたから、ま、いっか、というのが現在の心境です。

>筆綾丸さん
この件で深井氏のこれまでの業績が全否定される訳ではないのはもちろんですが、動機や他に「余罪」がないのかを含め、とにかくいったんすっきり整理してもらわないとどうしようもないですね。

※筆綾丸さんの下記投稿へのレスです。
「院長の家計簿(赤字)」2018/11/12(月) 09:59:21

小太郎さん
http://www.chuko.co.jp/shinsho/2017/03/102423.html
『プロテスタンティズム 宗教改革から現代政治まで』(2017)は、面白いなあと思いましたが、疑惑発覚後の大胆不敵な著作ということになりますか。精神を病んでいて、ときどき、神の声が聞こえるのかなあ。『エルンスト・トレルチの家計簿』は『武士の家計簿』のパクリのような感じですね。

コメント
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